第三章①【日本神域】~北斎神様に会う(前編)~
032_第三章①【日本神域】~北斎神様に会う(前編)~
【翌日】
ひひひひ。
グレンの部屋には俺ぁの布団が一組置いてある。
隣の部屋だから戻ればいいってぇ?馬鹿言え!酔いつぶれるんでぃ……狭ぇ部屋にベッドと布団。グレンの野郎たまにベッドから落ちて俺ぁの上に降ってきやがる。
「おい!北斎起きろ!もう昼過ぎじゃないか。いつまで寝てるんだ?」
「へ?お天道様がそんなに?頭がいてぇ。二日酔いだ。」
「これを飲め。エルフ特製の二日酔いの薬だ。準備したら行くぞ!」
「へ?何処へ?」
「へ?じゃねぇ!!お前が日本の神に会いたいって言うから、冒険者ギルドのお偉いさんに話を通しに行くぞ。」
「会えるのか?」
「おそらくな。アイツなら話を通してくれるだろ。」
「神様に会うのにオーバーオールってわけにはいかねぇか。源内さんから買った一張羅の着物で行くか。」
♢♢♢♢♢♢♢
【冒険者ギルド・ファイの部屋】
「グレンか、久しぶりだな。隣は北斎さんか?私の部屋にもほら、飾ってあるよ。」
ファイが指を指した棚の上に概眼のフィギュアが飾ってあった。
「私ね、彼の芝居が大好きなんだよ。」
ファイさんねぇ。不思議なお人だ。見た目は24、5歳に見えるが妙に落ち着いている。
色白で細身の体つき。切れ長の目、真っ赤な唇。水色の髪を肩口で揃えている。
歌舞伎の女形のような佇まいだねぇ。
(描きてぇ。)
「北斎、お前、今ギルド長のこと描きたいって思っただろ?(笑)話を通すのが先だ。我慢しろ。」
「へぃ。」
「私に話?いつも勝手に物事進めて後始末をギルドに任せっきりにするグレンが?私に話?を?(笑)」
「ぐぬっ。いやな、北斎が日本の神様に会ってみたいって駄々こねるからさ……。」
(駄々こねてねぇ!まぁ会えるならそういう事にしといてやるぜぃ。)
「……天界ですか。少しお待ち下さいね。念話を使いますのでお静かに。」
「……。」
「…………。」
「………………。」
(動きてぇ!しゃべりてぇ!描きてぇ!!)
「…………。では天界へご案内致しますので着いてきて下さいね。」
♢♢♢♢♢♢
【中央塔】
中央塔一階の変な扉の前に立つ。
ウィーン。
触ってねぇのに扉が開いただとぉ!?
小せぇ部屋の中に入る。
ウィーーーーン。
床が!床が!動いて!る!
お?止まった。
ウィーン。
開いた。
「私の執務室へようこそ。久しぶりグレン。初めまして北斎。」
大国主命がそこにいた。
「すげぇ!すげぇ!なんだこの南蛮渡来の部屋は!!大きなぎやまんの窓!!ソファとテーブル!?(ソファとテーブルは覚えたぜぃ!)でっけぇ机の上には書物が山積みになって……。」
「おい!北斎!神様を目の前にして部屋の感想言ってるんじゃねぇ!」
それもそうだ。挨拶!挨拶しねぇと!
大国主命に目をやる。
黒いスーツに眼鏡。
長い髪は後ろで綺麗にまとめられている。
狩衣とか着てるんじゃねぇのか?
そんな俺ぁの表情に気付いたのか、大国主命は優しく笑った。
「この姿のほうが楽なんですよ。」
「俺ぁもオーバーオール着てくれば良かった(涙)」
「まぁまぁ、こちらにお掛け下さい。私を描くのは……伊邪那美命がいらしてからにしましょうか?もう少しでこちらに来ると思いますので。」
「へぃ。」
俺とグレンは並んでソファに腰かけた。
「こちらをどうぞ。」
「良い香りのするお茶ですねぇ。俺ぁ、あ、私は葛飾北斎!絵師でさ……です。おい!グレンなにを借りてきた猫みたいになってやがるんでぃ!少しは話せよ。」
「……北斎、お前、緊張しないのな……神様に会ってるだぜ。」
「……グレン何か話せ。」
「北斎お前が話せよ。」
「あのー大国主命さまってあの因幡の白兎の大黒さまでさぁ?」
「あ、そう呼ばれる事もあるみたいですね。」
「ちょっと描いていみていいですかね?」
さらさら。さらさら。
「出来ましたよ。構図はそのままに、スーツ姿の大国主命さまを描いてみましたぜ。」
「素晴らしい絵です。私がもらっても?」
【黒スーツに白兎の図】
「へぃどうぞお持ち下さい。」
「こちらも食べてください。美味しいですよ。」
「おおおお!?これはなんだ?焼き菓子かぃ?」
「ふふっ。それは最近街で流行りの【北斎のフジヤマクッキー】ですよ。ふふふ。」
「おお?赤富士かぃ?上手く描けてるじゃねぇか!」
俺たちは、赤富士クッキーと異世界沖波裏クッキーを食べながら、伊邪那美命を待っているのだった。
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【大国主命】
出雲神話の中心となる神で、国づくりや縁結びの神として知られている。北斎も生前【大黒様と白兎】として描いています。
日本神域とアトランティスを結ぶ仕事をしている。
伊邪那美命の孫。




