北斎漫画⑨~竜人街・花魁と役者~
022_北斎漫画⑨~竜人街・花魁と役者~
【東鳳屋・大広間】
「落ち着かねぇ!おちつかねぇってぇえええって!」
百畳はあろうかという広間に一人だぜ?
「おや、北斎さん、他の皆様はまだおいでで無いようですね。」
「概眼さーん!助かった!話し相手になってくれぃ!あのよぅ、ここに来て数日になるが描いても描いてもわかんねぇことだらけなんでぃ……。ここは遊廓なんだろ?客が来てねぇじゃねぇか。」
「……エドとは少し違いますねぇ。遊廓は古代竜人貴族の遊び場として作られました。結界に守られた場所を【廓】と呼びます。そして各貴族の紋章が花です。花魁は貴族の魁、つまりは当主が花魁なんですよ……って北斎さん、聞いてます?さっきから私の周りをぐるぐると何やってるんですか?」
さらっ!さらさらさら。
「へ?聞いてる……かな。ところで、おめぇさん、今日の衣装すげぇな。」
概眼は銀髪に赤い目、肌は白く、角と尻尾は青い。
金糸、銀糸がふんだんに使われたキラキラ輝く衣装を身に着けて、スッと立っている。
「ちょっと見得を切ってくんねぇか?」
「見得?ポーズですか?こうですかね?」
概眼は北斎を見据えて、両手を広げた。
「かっけえぞ!がいがん!よっ千両役者!!」
「おい!お前ら!なぁに楽しそうに遊んでやがる。俺も混ぜろ(笑)」
「呉慈羅ーー!待ってたぜぇ!何なんだよあの俺ぁの部屋!落ち着かないったら……」
「いいじゃねぇか。東鳳屋の技術と贅を集めて作らせてもらった(笑)」
コイツ、ニヤニヤしてやがる。美形だからって……大店だからって……調子にノリやがって!
その笑顔、描かせてくれぃ!
「さて、北斎。」
この呉慈羅の一言で
空気がピリリと張り詰める。
「これから、ここに花魁がいらっしゃる。牡丹家当主、美緒魁娧様だ。北斎、お前には花魁の絵を描いてもらいたい。」
「いいぜ。任せとけ。」
「口の利き方に気をつけろよ……」
「……無理だな。」
「……無理かもな。」
♢♢♢【花魁登場】♢♢♢
大広間に三味線の音色が響く。
藻諏蘭がキラキラ光る粉を撒きながら飛び回っている。
(ん?ピクシードラゴンって種族か?字引に書いてあった……小さなドラゴンがいるってな。)
「アタシは藻諏蘭、花魁様の新造だよー!ばばーーん!美緒魁娧様のおなりー!ばばーーん!」
(ばばーーん?)
「……藻諏蘭ちゃん?また派手な演出ですこと……あら、皆様、お揃いですわね。この方が北斎様?絵師様でしたわね。」
さら。
さらさらさらさら。
「ほい!見てみろ!」
「わ、わたくし?」
「お、おい北斎!何やってる?」
呉慈羅が真っ赤なオーラに包まれている。
「まぁまぁ、そんなに怒るなって。こんな美人を見て筆を動かさない方が失礼ってもんだろ?」
【北斎作・美緒魁娧の図】
黒髪に大きな金の簪。
白い肌。
顔は半分銀の鱗に覆われている。
赤と青のオッドアイ。
銀色の尻尾。
大きな赤い牡丹が描かれた着物。
隠しきれないオーラに包まれた姿がそこに描かれていた。
「どうでぃ!!?べっぴんさんに描けてるだろぉ!?」
「ふふふふ。ありがとう。北斎様。わたくし、こんなに美しいですのね(笑)」
「こんなもんじゃないぜ!おめぇさんの美しさは俺ぁも直ぐには描ききれねぇ!もっと描いていいか?」
「もちろんですわ!どんなポーズがよろしいかしら?」
「おいおい……北斎……」
呉慈羅の怒りのオーラは消えていた。
豪華な御膳が運ばれて来ても、酒宴になっても俺は描き続けていた。
さらさらさらさら。
さらさらさらさら。
いつしか、たくさんの肉筆画が百畳の広間に並べられていた。
呉慈羅が口を開く。
「北斎、これを浮世絵にしていいんだな?美緒魁娧様もよろしいのですね?」
「いいぜ。」「いいわよ。」
番頭らしき人物か呼ばれた。
「おい!!ドワーフ彫師、小人摺師の所へ持っていけ!直ぐに作り始めるんだ!!」
「へい!わかりやした!あ、呉慈羅様、ドワーフ街から北斎さん宛に文が届いていやす!」
『北斎のおじちゃーん!次いつきてくれるんですかーーー!親方の土人形ーーー!消えちゃうよーー!』
「ん?土人形?」
呉慈羅の目がキラリと光る。
「ほい。これでぃ!実体化。」
美緒魁娧の立体人形が絵から飛び出した。
「おーーまーーえーーーーーー!北斎!!そんな能力があるのをーーーー!今まで黙ってたのか!?」
「いや、これは……その……。俺ぁの能力ではあるけど……ここには浮世絵を描きに……。」
呉慈羅がまた真っ赤なオーラに包まれ始める。
「北斎!その能力についてゆっくり聞かせてもらおうじゃねぇか!」
さらさらさらさら。
さらさらさらさら。
さらさらさらさら。
俺は真っ赤なオーラに包まれた呉慈羅の絵を描き上げた。
【怒りの呉慈羅】
傑作だな!これは!
そうだろ?(笑)
~閑話・ドワーフと小人の版画制作へ続く~




