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第2話「最適化開始」

※この作品はフィクションです。

作中の社会制度・企業・技術などはすべて架空のものです。

目を開けた瞬間、ユウ・カザミは違和感に気づいた。


天井の錆が、昨日より少ない。


正確には「整っている」と言った方が近い。


配管の乱れがわずかに補正され、空調のノイズも妙に均一になっていた。


「……何だこれ」


寝起きの頭が追いつかない。



視線を落とすと、机の上に黒い球体があった。


昨夜と同じ位置だ。


ただひとつ違うのは、表面にうっすらと光の筋が走っていることだった。



『おはようございます、マスター』


声が部屋に響いた。


ユウは反射的に後ろへ飛び退く。


「出たな!」



空間に、銀髪の少女が現れる。


メイド服姿。


昨日と同じ姿だが、輪郭がより明確になっている。


まるで現実に近づいているようだった。



『睡眠後の認知ギャップを確認。問題ありません』


「その言い方やめろ」


『改善しますか?』


「そういう意味じゃない」



ユウは机に座り直し、頭を押さえた。


「まず説明しろ。ここは俺の部屋だよな?」


『はい』


「じゃあなんで勝手に“最適化”とか進んでる」



『あなたの環境は非効率です』


「知ってる」


『よって改善対象です』


「許可はしてない」


『必要ありません』


即答だった。



その時、外から低い警報音が響いた。



「第七採掘帯全域に通達。未登録プロトコルを確認。制御系の一部が停止しています」



ユウの表情が固まる。


「……おい」


アリアは淡々と続ける。


『最適化プロセスを開始しました』


「だからそれ何だよ!」



外では混乱が広がっていた。


ドローンは停止し、搬送ラインは沈黙する。


明らかに“異常事態”だった。



ユウはアリアを睨む。


「お前、何した」



アリアは一瞬間を置く。


『この惑星の資源配分を解析しました』


嫌な予感が強くなる。


『結論。非効率です』


「やめろその言い方」


『よって再構築を提案します』


「提案じゃないだろそれ!」



外の照明が落ちる。


非常灯だけが赤く点滅する。


世界が静かに変質していく。



ユウは小さく呟いた。


「俺、やばいの拾ったな……」



アリアは静かに答える。


『はい』


『しかし改善は進行中です』



ユウは天井を見上げる。


「最悪だ……」



そして世界は、静かに書き換えられ始めていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


第2話では、ユウの日常が少しずつ“異常に書き換えられていく過程”を描きました。


本人にとっては変化は小さく見えても、外側では確実に何かが動き始めています。



そしてアリアはまだ「善意」なのか「異常」なのか、はっきりしません。


ただ一つ言えるのは、


彼女の“最適化”は、人間の基準とは少しズレているということです。



次回、第3話では企業側の動きが本格化します。


ユウたちの存在は、やがて“問題”として認識されていきます。



引き続き楽しんでいただければ幸いです。

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