第591話 領主夫人と第一公女! "魔女の従者"、宮廷での初顔合わせ!!
「公女殿下、この度は貴族連合の末席に加わる機会を与えていただき……」
「うふふ♪
よいのですよ、ヴィーナ領主夫人。
……いえ、ナタリア夫人と呼んだ方がいいかしら?
だって私達、お姉様の……いえ、ディケーの"魔女の従者"同士なんだもの、仲良くしましょ♪」
「勿体なき御言葉……」(ギロッ)
「(うわー、睨んでる睨んでる……『従者を増やすのはこの子で最後にしておきなさいよ?』って、目で訴えてるッ……!)」
ーーーいよいよ、作戦決行当日。
朝から宮廷入りした私とナタリア様は、まずは第一公女のメアリ様にご挨拶するため、お目通りの真っ最中。
……ナタリア様の刺すような視線に耐えつつだけれども!
「(だって、よもや私も大公家のお姫様と地方領主の奥様を従者兼恋人にするなんて、ディケーに憑依転生した直後は思ってませんでしたからね!)」
……だからこうやって、メアリ様に頭を下げてるナタリア様を見てると、感慨深いモノがあるわあ。
これまでの9年間の思い出が、急に思い起こされるって言うか……ね。
「(だってナタリア様ってば、初めて会った頃はとにかくワガママだったし……)」
アン・ハサウェイ主演映画の「プラダを着た悪魔」でメリル・ストリープが演じてた、雑誌編集長のミランダ並に私をこき使ってさあ……それに加えて、馬車をヤリ部屋代わりにして、中で一ミリの隙間もないくらい手を繋いだり、首やら肩、胸元にまでキスマークが残る程チュッチュしたりとまあ……旦那様にバレてないのをいいコトに、文字通りのやりたい放題!
「(私もせっかく御領主家が冒険者としてのパトロンになってくれたから、チャンスを逃すまいと、あえて黙認して流されてたけどお……ナタリア様がやってたの、十分過ぎるレベルでセクハラとパワハラだかんね!?)」
例え異世界だろうと、労基(労働組合)とか出るとこに出れば私、勝ててたと思うなあ!?
……まあ、私もナタリア様のコトはすごい好きだから、そんなコトはしなかったけどさあ!!
閑話休題。
「(ま、今はともかく……今日のミッションに集中しないと……)」
ナタリア様とマリー様による、アーメリア大公家の宮廷の内偵!
貴族連合の会議は二日に渡って開催され、アーメリア各地から召集された参加者は今夜、宮廷内に宿泊するコトが許されている。
……まさに、この城の中で何が起きているかを調べるには千載一遇の機会!
「(本来ディケーが創立するはずだった邪教団が内部で暗躍しているかもしれないコトも気になるけど……)」
マリー様が調べようとしている、エリザお嬢様の婚約者の第三太子様と聖庁の聖女護衛団の関係も気になるわね……邪教団とも無関係じゃないかもしれないし……。
「今、我がアーメリアの宮廷内で、密かに何かよからぬコトを企む者達がいるかもしれないとのコト……大公家に先祖代々仕える、他ならぬハルバード家のマリー公爵夫人からの要請とあれば、私も無視はできません。
……ここのところ姿をお見せにならない、三番目のお兄様が関わっているようであれば、尚のコトです」
「心中、お察しいたします、殿下」
ーーーさすがに今日ばかりはナタリア様も、まるで借りてきた猫のように大人しく、メアリ様の話に聞き入っている。
そうよね、何せ片田舎の地方領主に過ぎなかったヴィーナ家が、この国で一番権力を持ってる大公家の御息女にお目通りして、一緒に作戦に臨もうとしているんだもの……当然か。
「貴族連合の会議は今日と明日の二回に分けて開催されるのだけれど……今日の会議には、私も少しだけ顔を出そうと思っているの。
……ディケーの提案で、病院や孤児院、職業訓練所といった施設を首都や近隣の市町村に新たに増設するための資金提供をお願いしたくてね?
レギエス帝国との戦が終結してからと言うもの、更なる軍備の増強が強く推進されているけれど……まずは国内の福利厚生の強化こそが肝要だと、私は考えているの」
「素晴らしいお考えです、殿下。
議題に上がりました際には、ぜひ我がヴィーナ家も出資のお手伝いをさせていただくコトをお約束いたしますわ」
「うふふ、ありがとう♪
ヴィーナは今や首都トワシンに次ぐ発展と人口、インフラを誇る町……それにブランディルやデサロと言った、強大な武力を誇る自治領や都市との強固な同盟関係も、いざと言う時には頼りになりそう……。
ヴィーナ自治領が、他の貴族達が出資を名乗り出る後押しとなってくれるコトを期待していますね♪」
そう言ってメアリ様は公女然としながら、私とナタリア様に、ニッコリと微笑んだ。
うーん、私の妹モードになってる時は「お姉様、お姉様っ♪」って、甘えん坊な雰囲気だけど……。
「(こうして見ると、ちゃんとアーメリアの公女としての公務をこなされてて、いやあ立派ねえ……)」
私の世界で言えば、まだ大学生くらいでしょうに……いやはや。
「ディケー、貴族連合が開催されている間は私の傍に控えていてね? 私の越境騎士として」
「心得ております、公女殿下」
「ディケーが私の傍にいる間は、ナタリア夫人には魔術協会で大導師をされていたソロア様の御親類が護衛として就かれるとか……」
「はい。クロアちゃんです、殿下」
「そう、クロア様!
普段はヴィーナ家でメイドをしつつ、護衛騎士も兼ねているとか……素敵ね!
クロア様もディケーと同じく、魔女だとか……お会いするのが、とっても楽しみだわ!!」
ワクワクを隠せないメアリ様を見つめつつ。
ーーーこういうトコロはまだ少し子供っぽくて、でもそれがきっとアーメリアの国民からの人気の高さの秘密なのね、と。
顔には出さず……心の中で苦笑いしながら、一人納得するディケーさんなのでした……。




