第590話 宮廷潜入作戦前夜! 張り込みの定番と言えばピザ!!
「みんな、おつかれさま。
少し休憩しながら話さない?」
『ピザもあるよ!』
「あ、ディケーさん。ようこそ」
「お、お待ちしていました、マスター……それにキラリさんも」
アーメリア公国の首都トワシンで開かれる貴族連合の会議のどさくさに紛れて、ナタリア様がマリー様と共に宮廷を内偵するのを明日に控えて。
朝からヴィーナ発のトワシン直通鉄道に揺られ、昼には首都に到着した私、ナタリア様、クロアちゃん、キラリちゃん。
ナタリア様とクロアちゃんは先にお偉いさん方への挨拶回りがあるってコトなので、一旦別行動となり、
「先発で張り込みさせちゃってごめんね」
「いえ。ぶっつけ本番より、まずはドローンの性能テストをしてからの方が良いと思っていましたから」
「そう?」
前日からトワシンのホテルで私名義の部屋で事前に待機していたソロアちゃん、ネリちゃん、ベルちゃんと合流し……おみやげのピザでも食べながら、作戦の進行具合の確認をとばかりに……私はひとまずの休憩を提案した。
「す、既に、部屋には防音の術式を施してありますので……た、例え、ここにいる全員で大合唱しても、外には一切漏れませんから、ご安心を……」
「さすがソロアちゃん、抜かりなしね♪」
「うへへ……」
作戦内容が作戦内容だからね……バレたら全員、牢獄行き確実だし……そうならないよう、予め出来うる限りの対策はしておきたい。
皆がピザを一切れずつ箱から取り出して、もぐもぐし始めたのを確認しつつ……早速明日のナタリア様の内偵作戦についてのミーティング開始である。
「前日からソロア様に改良してもらった四機の迷彩ドローンを飛ばして、既に大公家の宮廷内の3Dスキャンは完了しています。
ディケーさんに事前にかけてもらった認識阻害の術式のおかげで、今のところ配置したドローンの所在はいずれもバレてはいないようです」
「おお、大公家のお城ってこんな感じの作りだったのね……メアリ様のお部屋は……この辺りかしら。
ここが私とヒュプノが夢魔ヴェローチェと戦った玉座の間で……ふむふむ」
よもや異世界で、3D投影されたホログラムのお城を眺めながら、潜入作戦を立てる日が来ようとはね……しかも実質の作戦立案者ですよ、責任重大だわあ……。
「ソロアちゃんの作ってくれた潜入用魔道具のバッテリーって、大体1時間くらいが限界なんでしょう?
マリー様はご自分で何とかするでしょうけど……仮に何らかの情報をナタリア様が掴めたとしても、さあ戻ろうって時にバッテリーが切れて姿が見えちゃったら、万事休すだわ」
こんなトコロでアンタ何してんだ! って捕まっちゃうのがオチだし……そうなると芋づる式で私達みんな、お縄コースですからね……ま、そんなコトさせないけどさ。
「……ネリちゃん、予め脱出経路をピックアップして、もしもの時に備えて待機しててもらえる?
暗殺者のスキルの"隠れ身"って術者が触れた相手にも有効でしょ?
……万一の時はナタリア様を抱えて、一緒に脱出してもらうコトになるかも」
「もぐもぐ……がってんでーす♪」
むにゅっ!
「わ……!?
ま、マスターとネリさんが……消えちゃいました……」
「相変わらず見事ですね、ネリさんの"隠れ身"は……目の前にいるはずなのに、気配すら感じさせないとは」
『透明人間、あらわる、あらわる!』
……どうやら今、私とネリちゃんの姿は完全にソロアちゃん達の視界から消えてしまっているらしい。
なるほど、他人から見ると突然消えた感じになるのか……さすが闇属性じゃないと昇格できない職業……魔女の認識阻害に近いスキルなんだわ、きっと。
……まあ、それはいいとして。
「……ネリちゃん。
いきなりおっぱい揉まないで。
びっくりするでしょ」
「てへ、ごめんなさーい♪
ディケパイが目の前にあったんで……つい?」
「ついで、おっぱい揉んじゃダメでしょ……」
ピザをもぐもぐしながら、満面の笑みを浮かべて「ディケパイ、ディケパイ、ディケパイパイ♪」と、鼻歌交じりに楽しげに私のおっぱいをムニュムニュ揉みしだくネリちゃんの手をそっとどかすと、
「あ……。
み、見えるようになりました……って、マスター!?」
「……ネリさん。
また抜け駆けして、ディケーさんの胸を揉んで……ズルくないですか?」
「でもこれで、私のスキルの隠密性が伝わったからいーじゃん、いーじゃん!」
……まあ確かに、鼻歌交じりで私のおっぱい揉みながらでも、十全に"隠れ身"のスキルを発動できる精神力はすごいっちゃすごいんだけど……うーん。
「ネリちゃん……。
あと何年かで貴女ももう三十歳なんだから……ね?」
「や、職場恋愛に歳は関係ないと思います。
これは声を大にして言っておきたいです!」
「左様ですか……」
デルハ大渓谷での異界のゲート封鎖作戦の時に私の"魔女の従者"と化してるから、見た目が二十歳くらいで止まってるからねえ、ネリちゃん……そのせいか、精神年齢も実年齢の割に、ちょっと大人になりきれていないトコロがあるって言うかあ……。
これまで男女問わず、何人かに告白されてはいるらしいんだけども……
『あ、私、ディケーさんが好きなんで、そういうのいいです♪』
ーーーって、全部断っちゃったっていうね……。
いや、事の発端は私の"魔女の瞳"が原因だし……マスターとして、最後まで従者の面倒は責任を持って見る所存です……。
『やっぱ(ディケーが)好きなんすねぇ』
「お、キラリちゃんは分かってくれてるね。
この気持ち、まさしく愛だよっ♪」
「こらこら、キラリちゃん。
ネリちゃんを煽らない、煽らない」
『テヘペロ、コツーン♪』
背中の羽でホバリングしつつ、ソロアちゃんの食べていたピザの欠片に横からかぶりついていたキラリちゃんが、久々にからかい上手のキラリさんになっていたので、釘を刺しておいた。
うーん、キラリちゃんも出会った当初は星妖精のお姫様みたいな雰囲気だったけど……さ、最近は何だか、すっかりノリが軽くなっちゃったわね……これも私と契約した影響なのかしら? ……まさかね。
「さて、あとはナタリア様次第か。
戻ってきたら、ソロアちゃんの潜入用魔道具の最終調整をしておきましょう。
迷彩以外にも色々とギミックがあるのよね?」
「は、はい……。
あ、あらゆる事態を想定しました……」
「ん、バッチリね」
明日はいよいよアーメリア大公家への潜入当日……私はメアリ様に付いていないといけないから、ナタリア様とはご一緒できないけど……ベルちゃんのオペレーションとソロアちゃんの作った魔道具を、とにかく信じましょうーーー。




