第589話 「学◯スの燐羽の実装より先に、ブ◯アカのニコ役で中の人がソロ曲出しちゃうのマジ? えー?」とか思いながら、この話書いた話する?
「あなた、では行ってきます」
「ああ。道中気をつけてな」
「母様、おみやげよろしくねー!」
「ええ、レムリア。
楽しみに待ってなさいな」
ーーーついに。
アーメリア公国の首都トワシン、大公家の宮廷で開かれる貴族連合の会議にナタリア様がヴィーナ代表として参加する前日となった。
まずは鉄道でヴィーナからトワシンに移動、ホテルに一泊してから次の日にいよいよ会議に参加……という流れになっているのね。
私は今回、第一公女のメアリ様に付いていないといけないから、ナタリア様の護衛はクロアちゃんの担当なんだけども……。
「すまん。
本来ならば当主である私が出席するべきなのだが……」
「いいのよ、あなた。
私の方が話し合いの場に慣れているし……あなたは国境を守る大事なお仕事があるでしょう? レムリアを頼みます」
……護衛の必要なんてないくらい、出発前から元気ねえ。御領主様も自分より商家の出のナタリア様の方が弁が立って、とっさのアドリブ(口からでまかせとも言う……)も上手いのを知っているからこそ、任せたんでしょうけど……明日の現地で何が起こるか分かってるこっちは、内心ハラハラですよ……。
「……ではディケー殿、クロア殿。
ナタリアを頼むぞ」
「はい、閣下」
「わーってるよ、旦那」
「う、うむ……」
そう言って御領主様に一礼する、私とクロアちゃん。
……クロアちゃんも普段のメイド服姿から、最初から騎士の鎧姿に着替えて、やる気十分だし……うん、大丈夫そうね。ディケー騎士団筆頭騎士の実力、頼りにさせていただきます。
「でぃけたん、クロ、母様をお願いね!
あと、おみやげも忘れちゃヤダよ!!」
「もちろん。
レムリアちゃんもナタリア様が戻るまで、いい子でね」
「おう。まあ任せとけや」
銀色の髪を揺らし、くりくりの青いお目々をぱちぱちさせて……レムリアちゃんは今から首都のおみやげが待ちきれないようで、キャッキャと笑い、見送ってくれた。
ーーーよもや、明日には自分の母親がトム・クルーズやジョージ・クルーニー、キャメロン・ディアスもびっくりの、スパイ大作戦をやらかそうとは夢にも思うまいて……。
「……じゃ、ディケー、クロア。
行くわよ」
「はい、ナタリア様」
「おう、姐さん」
ナタリア様のスーツケースも私の"魔女の工房"に仕舞ってあるから、手ぶらで移動できるのは僥倖ね。
まあとにかく……こうして私達は、御領主様とレムリアちゃんに見送られながら、三人で執務室を後にしたのだった。
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「クロア副メイド長……。
ああ、なんて凛々しいお姿……」
「普段のメイド服とのギャップがたまらないわあ……」
「ディケー殿も公女殿下の騎士様の貫禄が出て来て、とても御立派ですなあ……」
「いや、まったくだ」
ヴィーナの領主家の廊下を歩いていると、ナタリア様のお見送りのためにズラリと並んだメイドさんや執事、護衛騎士の皆さんの声が、ちらほらと聞こえてくる。
「(……何やかんやでディケーさんもヴィーナの御領主家にお仕えして、もうすぐ10年目……結構、職場でも古参になって来ちゃったわねえ……)」
嫌われ者のお局様にならないよう、越境騎士の爵位を得ても、今まで通り偉ぶらずに皆とは接しているつもりだけど……結構この10年近くで顔ぶれも変わったわねえ……結婚したり家業を継ぐために辞めてった人もそれなりにいるし。
閑話休題。
「(ヴィーナの御領主家が首都トワシンで開催される貴族連合の会議に参加させてもらえるのは、今回が初めて……それはつまり、いよいよヴィーナが、中央が無視できない程の発展を急速に遂げた証でもある……!)」
私が御領主家で働き始めた当初はまだ路面電車もバスも鉄道もなくて、外国から出稼ぎに来た違法な犯罪者やら売人やらが毎日のように騒ぎを起こしたり、町の外に出れば魔物やら有害召喚獣に出くわしたりと……発展途上なのに加えて、あんまり治安もよくなかったものねえ。……それが今では様変わりして、随分と発展して治安もよくなって、まあ。
「(……何よ、ディケー。
出発前だというのに、ぼーっとして)」
ーーーなどと、私が感慨に耽っていると。
玄関付近まで歩みを進めていたナタリア様が、念話で私の頭に直接話し掛けてくる。
せっかくの門出に何て顔してるのよ、とでも言いたげだった。
ーーーしかして、
「(この10年近くで、ナタリアともイロイロあったなあ……って。ちょっと思い出してただけ)」
「(また呼び捨てにして……まあいいわ。
ネリやベル、ソロア達とはトワシンで合流次第、明日に備えてホテルでミーティングよ。
……ハルバードの公爵夫人に乗せられた話とは言え、完遂しないと悔しいでしょう?)」
「(おおう……気合入ってる……)」
明日に控えた宮廷内でのスパイ大作戦に燃えるナタリア様の闘志に気圧され、これは負けていられないと密かに思う、ディケーさんなのでした。




