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アラサー勇者パーティ、全員独身。~世界を救ったので、私たちそろそろ婚活しようと思います。  作者: 依那 瑞希
第1章 大魔法使いアルルの場合

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第3話


「あの! 今日はモーリス様とお会いできるのを楽しみにしていました!」


 席に着くなり、背筋をピンと伸ばし、アルルが言う。


「えーっと、僕も…… です。かの有名なアルルさんとご同席できるなんて、大変光栄ですから……」

「ええ! もう楽しみにしていて、服装も気合を入れてきましたので!」


 おほほほ、と高笑いをするアルル。


「……おい、アルルがおほほなんて笑っているところ、見たことあるか?」

「ないですわね。あれは舞い上がっておりますわね」


 と、二つ隣の席で小声でレゼリアとローナが会話する。


「しかし、なかなか純朴で素直な男ではないか。まあ、ニトに言わせれば弱いと切り捨てられるかもしれんがな」

「そうですわね。お優しそうですし、気の強いアルルには、ちょうどよさそうですわね」


 こそこそと様子を伺いながら、レゼリアとローナが会話する。

 その間にもアルルたちのテーブルにも食事が届いた。


「うわあ、なんて美味しそうなのですわ!」


 レストラン中に響くような、アルルの大きな声が響く。

 一斉に周りの客たちがアルルたちの方を見つめるが、当のアルルは気づいていないようで—— モーリスは注目されていることに気づいたのか、顔を真っ赤にしていた。


「あ、あの…… アルルさん、ちょっとお声が大きいというか」

「え…… あ、ああ! ごめんあそばせ! おほほ」


 誤魔化すように笑うアルル。

 そのまま、アルルはモーリスに向かって問いかける。


「ところで、モーリス様。お休みの日はどんなことをしていらっしゃりますの?」

「え、僕の休みですか? えーっと…… そんなに面白くないですよ。近所を散歩したり、読書したり…… ですかね」

「あら! 奇遇ですわね! わたくしも読書は好きですの! 世界魔法大全とか、闇魔法の書物とか、よく読みふけって朝になってしまうことも多いですのよ! モーリス様はどんな書物をお読みになられるの?」

「えーっと、特にこれといった好きな本とかはなくて…… その時の気分で適当に…… とか……」

「ま、まあ! 私も気分でいつもと違う本を読むことはありますから! あ、モーリス様。飲み物がもう空のようですが、何か追加で飲まれますか?」


 モーリスの空になったグラスに気づいたアルルが、メニューを示しながら言う。


「あ、えっと…… 僕はなんでもいいので……」

「なんでも…… では、先ほどと同じ葡萄酒でよろしくて?」

「あ、ええ。じゃあそれで……お願いします」


 そんな二人の会話を見ていたローナが呟く。


「ぜんぜん盛り上がっていませんわね」

「ああ、無理しているな。お互いに」

「大丈夫かしら、アルル短気ですから……」

「まあ、いざとなれば私が出よう」

「ですが、レゼリア様が出張ったら、余計ややこしいことになるのでは?」


 なんて、こそこそとレゼリアとローナが会話をしている間にも、アルルのデートは続いていく。


「このレストランは、お肉と葡萄酒がおすすめですのよ! ところで、モーリス様はお好きな食べ物はありました?」


 アルルが、葡萄酒片手に問いかける。


「好きな食べ物ですか? うーんと、なんだろう。あんまり意識したことがないので…… しいて言うならパンとか…… ですかね?」

「パンは私も好きですわ! どうでしょうか、モーリス様! せっかくですから、パンも追加でオーダーしませんこと?」


 提案をしたアルル。モーリスはもごもごと小さな声で答える。


「あ…… 僕はどっちでも…… 大丈夫です」


 アルルの表情が少し引き攣ったものへと変わり——


「……じゃ、じゃあ頼んでもいい、かしら?」

「あ…… ええと、アルルさんにお任せします」


 ピキッと、アルルの額にしわが寄る。


「ちょ…… あんた、さっきから……」


 アルルの表情が完全に凍り付いたところで——

 様子を見守っていたレゼリアが言う。


「まずいな。このままだと、大惨事になるぞ」

「ええ、もうアルルの我慢の限界が近いですわね」

「仕方あるまい、ここは私が一肌脱ぐとしようか……」


 と、レゼリアが席を立とうとしたところで、


「待ってください、レゼリア様! 見てください!」


 ローナが、アルルたちのテーブルを指さし、そう告げた。


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