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アラサー勇者パーティ、全員独身。~世界を救ったので、私たちそろそろ婚活しようと思います。  作者: 依那 瑞希
第2章 大戦士ニトの場合

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第10話


「魔物!? なんで!?」

「こんな王都の真ん中に!?」

「逃げないと!」


 そんなパニックの中、ニトが立ちあがり、


「魔物!? どこだ!」


 ニトは真っ先に出口へと向かう。


「ニト様、私も!」


 ロドリゴも付いていこうとするが、


「ロドリゴ、危ねえから中にいろ!」

「いえ! 私も行きます!」


ニトに続いてロドリゴも外に出る。


「おい、私たちも行くぞ!」

「ええ!」「はい!」


 連れてレゼリアたちも外へと向かう。

 レゼリアたちが外に出ると、通りは大パニックになっており、空には一体の黒い影があった。長いスピアを持った紫色の悪魔。ガーゴイルである。

 その姿を見るなり、ローナが叫ぶ。


「ガーゴイル!? こんな王都の真ん中に!?」

「魔王軍の生き残りか!?」

「ちょっと、こんなフラグ回収はしなくていいのよ!」


 アルルもまた焦ったように叫ぶ。

 一足先に外に出ていたニトとロドリゴはガーゴイルと相対していたが、


「おい、ロドリゴ足が震えてるぞ」

「ええ。やはり、私は怖いようですな」

「まあ、大丈夫だ。俺がいるからな。この斧があれば……」


 と、ニトが背中に手を伸ばすも——


「あれ? ねえ! 俺の斧がねえぞ! ってそうだった! 今日は『でえと』だから、もってねえんだ!」


 一人ニトがパニックに陥っている間に——

 道では泣きながら歩いている小さな少女がいて——


「うわあああああん! おがあさん! どこ!」


「けけけ! 美味そうなガキがいるなあ!」


 と、ガーゴイルが少女に気づいたようだった。


「ニト! 馬鹿! 何やっているのよ!」

「ここからではさすがに間に合わないぞ!? アルル、魔法は!?」

「無理よ! こんな街中で魔法なんて放ったら、それこそ死人が数百人出るわ!」


 アルルやレゼリアが動こうとするも、少女まではだいぶ距離があり——


「ニトは!?」

「こけてるわ! 慣れない靴のせいで!」


 ガーゴイルに向かおうとしたのだろうが、慣れないハイヒールのせいか、ニトは地面に転んでおり、ピンクのワンピースは土まみれになっていた。


「だめ! 間に合わない!」


 アルルが声をあげた瞬間——


「いや、まだだ!」


 レゼリアが声をあげる。

 視線の先。

 少女の前には、ロドリゴが仁王立ちしており——


「ああ!? てめえはなんだ!?」


 ガーゴイルがロドリゴに向かって言う。


「この子に手を出すな!」


 ロドリゴが声を張り上げるも、両の脚はぶるぶると小刻みに震えており、


「きゃははは! なんだてめえ、足が震えているぞ!」


 ガーゴイルがスピアを構え、ロドリゴへと迫る。


「くっ、ここまでか……」


 だが——

 次の瞬間、ロドリゴは気がついた。

 自らの身へと迫るガーゴイルの背後——空中に、もう一人の影があることを。


 それは、歯をむき出しにしながら、笑みを浮かべ飛びかかってくる一人の女。


 ピンク色のかれんなワンピースだけでなく、ヒールを脱ぎ捨てた足をも、砂まみれにし、彼女はなお笑顔で飛び込んできた。


「……ニト様」


 目を見開いて、固まるロドリゴ。

 ガーゴイルがその影に気がついた時には、時すでに遅し。


「がぶっ!」


 ニトの歯が、ガーゴイルの右肩付近へと突き刺さった直後——

 ニトが噛みついた部分が破裂し、ガーゴイルの右腕がちぎれ、血しぶきがあがる。


「き、貴様! なにも……」


 右腕を抑えながら膝をついたガーゴイル。

 ガーゴイルを見下すニトは、血しぶきを浴び、笑っていた。


「かっこよかったぞ、ロドリゴ。ここからは俺に任せろ!」


 ニトが一気にガーゴイルとの間合いを詰め、まるで猿のように飛びかかり、そのまま再び食らいつく。


「ぐぎゃあああああああああああ!」


 ガーゴイルの叫び声が響き渡った直後——

 辺りは血の海に変わり——

 その中央で、全身に真っ赤な血しぶきを浴びたニトが立っていた。


「なかなかうまかったぞ、ガーゴイルも!」


 血まみれになり赤く染まったワンピースを着ていたニトは、無邪気に笑っていた。



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