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第12話 神林諸葉は問いかける。

「あ……」

「先輩? どうかしましたか?」

 まるで大事にしている玩具を取り上げられた子供のように……くずねえは帰ろうとしたシュンヤさんへと手を伸ばした。

 しかもその表情はいつも見るような気難しい表情でも、研究中の氷のような瞳でも無い……甘えん坊の子供のように見えた。

 そんな珍しいくずねえの姿を見て、あたしは固まってしまったけれどもすぐにハッとしてシュンヤさんを玄関まで見送る為に居間から出た。

「諸葉ちゃん?」

「シュンヤさん、玄関まで送るよ」

 そう言って、あたしはシュンヤさんに並んで歩く。

 歩きながらあたしは並んで歩くシュンヤさんをチラチラと観察するけれど、顔は決してイケメンでもないし、体付きは……一見ひ弱そうに見えるけれどその実、結構鍛えてるのが服の下からでもあたしには分かった。

 性格面は……まだ分からないや。

 ジロジロと見ているあたしの視線に気づいたのか、シュンヤさんは戸惑いつつ尋ねてきた。

「えっと、諸葉ちゃん? どうかした?」

「あー……うん、そうだね。えっとね、シュンヤさん。くずねえのことどう思ってるの?」

 悩むよりも直球。そう考え、あたしは思ったままを訊ねてみた。

 というか、シュンヤさんの説明だけだとくずねえをデート先でチャラ男から助けたってイメージと……くずねえの後輩だってイメージしかないのだ。

 だから問いかける、シュンヤさんにとってのくずねえはどんな存在なのかを。心を許せる存在であるかを。

 ついさっきのくずねえの様子を見る限り、くずねえにとってこの人は特別な存在だ……と思う。

「先輩のことをどう思ってるか? う~~ん……あ」

 あたしの問い掛けに腕を組みながら悩み始めるのを見ていたけれど、結論が浮かんだようだった。

 いったいどんなことを言うのだろうか?

 そう思いながら答えを聞く。

「僕にとって先輩は……頼りになる先輩だね」

「頼りになる先輩?」

「うん、何時も僕が女性と付き合う時に相談に乗ってくれて、振られた時には何がダメだったのかと丁寧にアドバイスをくれたりするんだ」

 一瞬聞き間違えかと思ったけれど、どうやら本当の事だとシュンヤさんの顔を見て、あたしは理解する。

 女性と付き合う時に相談に乗って、振られたら理由のアドバイスを貰う?

 何ていうか変だとしか言いようがない。というか気の良い仲間って感じなのだろうか?

 そう思っていると、シュンヤさんはしょんぼりと肩を落とした。

「今日だって先輩にせっかく相談に乗ってもらったのに、振られちゃったんだ……」

「その人のこと、好きだったの?」

 何でそんなことを尋ねたのだろう。気がつくとあたしはシュンヤさんにそう尋ねていた。

 あたしの言葉に驚いたのか、シュンヤさんは目を見開いてこちらを見ていたけれど……、困ったように笑みを作った。

「……よく、わからないんだ。彼女のことが好きだったのか、でもあの時は彼女が良いって思った。でも、その前は別の彼女が良いと思った……それの繰り返しさ」

 ……何だろうシュンヤさんが物凄いクズヤロウにしか見えない。

 そう思うけれども、クズみたいな台詞を吐くシュンヤさんの表情はすごく悲しそうに見えた。

 もしかすると、すぐに女性に声をかけて振られるのには理由があるんだろう……。

 そしてあたしの勝手な思い込みかも知れないけれど、シュンヤさんはそんな彼女達よりも頼りになる先輩であるくずねえを大事にしているように思えた。

 だからシュンヤさんとは、これからも仲良くしておいたほうが良いかも知れない。

「シュンヤさん、いやなーんか違うなあ……おにい。そうだ、おにいって呼ばせてもらうね!」

「お、おにい!? なんで?」

「なんでも良いじゃなの。それよりも、おにい。くずねえをこれからもよろしくお願いします!」

 あたしの呼び方に戸惑いを覚えるおにいにイタズラな笑みを向ける。

 そんなあたしを見て、あたしの呼び方に悩んだようだけれど……すぐに頷いた。

「まあ……こちらこそよろしく頼むね、諸葉ちゃん。それじゃあ、失礼します」

「うん、ばいばーい!」

 そう言ってあたしはおにいを見送ると、くずねえが居る居間へと戻る。


 そしてあたしの直感は当たっていたと思う。

 話を聞く限り、どうやらくずねえはおにいに好意を抱いているようだった。

 まだLIKEかLOVEかは分からないけれど……。

 だけどくずねえ本人はそれに気づいていない上に、気づいたら気づいたで助けて貰った時のドキドキがどうとか理由をつけてしまう可能性が高い。

 こう、「白馬の王子様現象だー!」とか「吊り橋効果だー!」とか言いそうだ。

 でもくずねえはこのままだとひとり寂しい思いをすることになるか、それとも天才と天才の血筋を~とどこぞの天才と結婚されそうな気もする。

 それにもしかしたら、おにいもこのままだと色んな女性に声をかけるだけの最悪な未来しか無いと思う。

 なるようにしかならないかも知れないけど、あたしの中ではくずねえとおにいがくっついて欲しいと思っていたのだった。

もう2話ほどで一旦区切ります。

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