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噂の動物屋敷  作者: 鵠っち
納葵音子~エピローグ~
44/50

カモカチュー

 今話タイトルは「カモカチュー」です。

「お夕食は八時までにはできるそうです。すみません、音子さん。僕たちの母が勝手なことを……」

「八時? いま六時半だろう。どうやったらそんなに速く、カレーとシチューを作れるんだい? それに、二人とも市販のルウは使わないだろう?」

 二人よりも料理が上手いと自負している遙にとっては、問題が山積している。

「祈裡のカレーはいつも違う味で面白かったし、イッツーのシチューも中々のものだった。どれだけ上達しているか楽しみだよ」

 遙は独り言のように呟いたのだが、音子の耳にははっきりと聞こえた。

「永井さん、お二人のカレーとシチューはいったいどのようなものなのですか?」

「それは、いつも食べてる二人に聞くのがはやいいだろう」

「未来也くんのお母さんのカレーは、今まで食べてきたカレーで一番のカレーだったわ! あんなにおいしいものをいつも食べているなんて、羨ましいったらこの上ないわ!」

 なぜか呉葉が遮った。

 過大評価だ、と未来也は思った。

 なんだかんだ話しているうちに、七時半。テーブルに二つの鍋が運ばれた。

「ん? なんだい、このにおいは? 昼間に同時進行で作ってたときには、こんなにおいじゃなかったよ」

「当たり前よ。これは私たち二人のオリジナルなんだから!」

「カレーでもシチューでもないのかい?」

「それじゃあリベンジにならないじゃない。両方よ」

「森一樹と」

「加古祈裡の合作」

「「カモカチューよ!」」

 未来也と美樹以外の頭の上には、不可視のハテナマークが盛大に踊っていることだろう。

「カモカチュー?」

 悠が声をあげた。

「カチュー、とはなんですか?」

 音子が尋ねた。

「え、えーと、加古の『カ』と森の『モ』、そしてカレーとシチューで『カチュー』だそうです」

「てっきり鴨南みたいなもんだと思ってしまったよ」

「み、美樹さん? それは私達の台詞よ……。そして遙! まんまと引っ掛かったわね!」

 台詞を取られた祈裡と一樹は、すこしがっかりしたが、『引っ掛かったわね!』と言って満足したようだ。

「ごめんなさい、小母様」

 美樹は少しうつむいてしまったが、未来也が手を取ってなにやら言うと、頬を赤くして目を潤ませ、未来也を見つめた。

「それでカチュー……」

 音子は名前に納得してうなずいた。

「なんだい、その滅茶苦茶なネーミングは」

 遙は、滅茶苦茶なネーミングに苦笑している。二人の思考パターンは子供の頃から変わっていないようだ。

「ジャーン! これでどうだ!」

「あんたら、よくその速さでこぼさないもんだね。それと、片つける前に何をどうやって作ったのか、キッチンを見てみたいよ」

 鍋から皿へよそう速さに、遙が感心している。

「残念ね、ハル。もう洗うものはこの二つのお鍋とお玉と食器しかないわよ」

 これには全員が感心している。

「見た目の色は、カレーとシチューを混ぜただけのような気もするが、問題は味か」

「そうよ、問題は味よ。これはハルへのリベンジなんだから。みんなも、おかわりはあるからたくさん食べていいのよ」

 食べていいと言われて、音子が表情を変えた。

「い、いただきます」

 音子の一言で、みんなで食べ始める。

「なにこれ……? 不思議な味。美味しい!」

 音子は気に入ったようである。

「こんなものを考え付くとは……。私の負けだよ」

 遙も気に入ったようである。

 美樹と未来也はそれを見て普通に食べ始めた。

 それをみた呉葉、夕日、悠は恐る恐る一口食べてみた。

「おいしい……」

 悠は勢いよく食べ始めた。

「…………」

 夕日は黙々と食べている。

「カチュー……。私にも作れるかしら?」

 一人だけ不穏なことを考えてはいるが、呉葉も黙々と食べている。

 全員が食べ始めたのを見て、満足げに頷きあって祈裡と一樹も食べ始めた。

 遙、呉葉、悠、音子がおかわりしたことで鍋は空になり、作った二人は洗い物に勤しんだ。

 今話はちょっと長めでしたね。

 カチュー……本当に美味しいのでしょうかね? まあ、二人が作るんだから美味しいんでしょうね。うん。

 どなたかそれらしきものを作った方がいらっしゃいましたら(以下略


 次話(予定)タイトルは「握手」です。

 幼い頃の約束を、律儀に守り続けている音子なのでした。

 そろそろ最終回が近いです。来月……いくらかかっても再来月には終わると思います。そう考えるとちょっと寂しいかな……。

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