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噂の動物屋敷  作者: 鵠っち
納葵音子~エピローグ~
42/50

長髪

 今話タイトルは「長髪」です。

「そういえば納葵ちゃん、一時期髪がものすごく長かったが、あれは何だったんだい?」

「ああ、十五年くらい前の話ですね。あれは、夕輝に長い髪を褒めらてから、ずっと伸ばしていて、ついに、自分の髪で躓いてしまって、それで少し短くしたんですよ」

 そうは言うが、現在の音子の髪の長さは、立っていても膝くらいまではある。座っている今は、何度か折り返して、背中の真ん中くらいの長さになっている。ちなみに、立っているときの髪型は、家にいるときと、『音木』邸にいるときに限って、腰の辺りで三つ編を三段だけ作って上下を赤い紐、もしくはピンクのリボンで留めている。これは、夕輝に出会ったときの髪型である。ついでにいうと、現在の服装は、那子のお気に入りの一つである、ライトグリーンの丈の長いワンピース。これも夕輝と出会ったときと同じだが、やはり、音子しか知らない事実である。

「短くしたって、そんなに長いのに?」

 今度は悠が聞いた。

「あの時は……そうねえ、あと三分の一は長かったかしら?」

「そんなに長いと地面にこすってしまいませんか?」

 今度は美樹が聞いた。美樹の場合は脚の付け根ほどだが、同じように長髪を持つものとして気になるのだろう、と未来也は思った。

「今やってるみたいに、何回か折り返してスカートと同じ長さにしていたわ。座るときにはもう一度か二度折り返して、椅子から少し垂れるくらいとかね。私が夕輝とであった時には、もう膝下くらいの長さがあったわ」

 実は美樹も未来也が、長い髪がきれいだ、と言ってくれたから長髪にしているのだが、流石にそこまで長くしようとは思わない。

(未来也様? 以前、長い髪がきれいだ、と言ってくださったのを、覚えていますか?)

(もちろんさ。忘れるはずがないだろう。あのときから、美樹の髪は長いのだから)

 その一言を言ったのは、小学校に入学してすぐのことだ。

(私もあのくらい長くしたほうがいいでしょうか?)

(それは、美樹がしたいようにすればいいよ。無理してやる必要はないさ。そんなことで嫌いになったりはしないから)

 美樹は嬉しそうに未来也を見つめている。

(今、私の髪はクラスで一番長いです)

(そうだな)

(なので、悔しいので、やっぱりもっと伸ばします)

(大丈夫か? さっき、転んだって言ってたぞ?)

(大丈夫です! 私は運動神経もいいほうだと自負していますから)

 実際、美樹は勉強だけでなく、スポーツもよくできる。特に、テニス、卓球、バドミントンが得意だ。

「ねえ呉葉さん。お二人は突然見つめ合って何も言わなくなってしまったけど、いったい何をしているの?」

 音子が当然の疑問を抱いた。

「あれは、無言で会話をしているのです。あの二人の思考回路には誰もついていけません」

 呉葉もよく分かっていないので、適当に答えた。少々投げやりな感じは否めない。

「呉葉さんと夕日さんは、そういう意思の疎通は出来ないのかしら?」

「お母様、二人の指を見てください。あれが会話の正体です」

 呉葉はトントンとリズムよく指を叩き合っていることを母に告げた。

「あれは何かしら? モールス信号? 指点字? ……いろいろ混ざってるみたいね。複雑怪奇。暗号解読の専門家が見ても、何がなんだか分からないでしょうね」

 音子はモールス信号なら受信すれば同時に読み解くことができるが、これは、そのほかに、様々な信号、ボディーランゲージなども図案化し、記号化し、暗号化してパターンに組み込んでいるので、暗号解読のプロに見せるのも、あながち無い手ではない。

「話によると、一週間でパターンを少しずつ変えているそうです」

 あながち無しではないのだが、そんなに頻繁に変わると、一度覚えても既にそれで読み解くことはできなくなってしまう可能性が高い。

「しかも、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットの別があるそうです」

 ここで一同が思ったことは、『この子たち、どれだけ頭がいいいの?』である。

 そこに、今まで完全に周りを気にしていなかった美樹が、突然宣言した。

「音子さん、私も髪を伸ばすことにします」

 突然言われた音子は、一瞬何のことだか分からなかった。

「私は、クラスで一番髪が長いのです。そして、今日貴女に会うまで、私より髪の長い方に会ったことがありませんでした。悔しいので私も髪を伸ばすことにします」

 そこでようやく、音子は何を話していたのか分かった。

「呉葉さんに聞いたわ。素敵ね、秘密の会話なんて。あなた達すごいのね。色んな信号をパターン化して、すべて暗記しているなんて、とてもじゃないけど真似できないわ。それで、今話していたのは、未来也さんに髪を伸ばすことを相談していたってことね?」

 美樹は、少しだけ呉葉のほうを見てから、言った。

「ええ、そうです。音子様の夕輝様と同じように、十年と三ヶ月ほど前に、長い髪がきれいだと、未来也様が私に言ってくれたのです」

「タソラも、美樹さんは髪が長いわね。まさか、呉葉さんよりも、長くしている子がいるとは思ってみみなかったわ」

 呉葉は背中の真ん中より少し長いくらい。そして、美樹とは違い、前髪も伸ばしていて、少し暗い印象を与えることもある。

 今回は長かったですね。2000文字超えましたね。

 総文字数が60,000文字を超えるのか……。話数としては42話目です。

 いやぁ、地味に長いですよね、これ。


 長いといえば、美樹の髪が長いんですよ。

 そして、音子の髪はさらに長いんですよ。

 呉葉も長いですが、まだ常識的な範囲ですね。

 自分の髪を踏んで転ぶとか、そこまで長い人って、現実にいるのでしょうか? ちょっと気になりますね。


 気になるといえば、指点字というものを知っていますか?

 ぼくも先日、何気なくいろいろ検索していたときに知ったので、よく知らないのですが、点字の6個の点の位置を、両手の人差し指、中指、薬指にあてはめて、指をトントンと叩いて会話ができるそうです。

 ただ、未来也と美樹がやっているのは、片手で、指を絡めて、人差し指から小指までの四本の指で、手の甲を叩くようなイメージです。指点字のことを知ったのは、本当につい先日です。


 次話タイトル(予定)は「リベンジ」です。

 話している内に帰れない時間になってしまったので、夕食の準備です。

 夕飯に何が出るかというと、……例のアレです。また出てきます。

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