納葵邸
今話タイトルは「納葵邸」です。
「この家の外見を見て驚いたでしょう。私が図面を引いて、完成図も描いて、細部のスケッチまで自分でやったのよ。写真だと、あの家が現れているときしにしか、見ることができないから、独学で絵の勉強をして、泊りがけで調べられても困るから、自分で設計や建築の勉強もしたの。医学や薬学の知識も、あのときの夕輝よりもあるつもりよ。夕輝が大学に通っていたのも、二年間だけですけどね。一応、学力だけなら、国家試験も通るのではないかしら。まあ、私は仕事を続けているから、医大にも薬大にも行ってないし、受験資格はないのだけど。そんなことだから、この家は『音木』の家の原寸大レプリカよ。本当に寸分も違わない。家具も同じものを、特注で作ってもらったわ。ただ、骨はね……。流石に、人を呼ぶときに気味悪がられるでしょう? だからやめたのよ。本当は置きたかったのだけれどね」
話を聞きながら、美樹の肩を抱き寄せていた未来也は、美樹が少し震えたのを感じた。
(どうしたんだ? 美樹)
(いえ、何でも。ただ、あの骨を思い出してしまって……)
「骨といえば、あれは何の骨なんです? 美樹と悠はしばらく放心してましたよ」
未来也は自分の疑問を確かめたかった。
「あれは、那子もいつからあるのか分からないそうよ。ネズミにカエル、小鳥に魚。とにかく種類は多いわね。まるで、猫が集めたような取り合わせでしょう? 私は結構気に入っているのよ」
「音子っちの好物は魚に鳥。まるで猫だものね」
夕の母が茶化すように言った。
「永井さん! そういう言い方はやめてください。子どもたちの前で!」
音子はどうやら、相当に恥ずかしいらしく、顔を真っ赤にしている。
悠の母は、また音子のあたまをぽんぽんとし始めた。
「あ、あの骨は、本物なのですか?」
美樹が震えているのを、未来也は感じている。
「石膏よ、って言ったら信じてくれるかしら?」
夕輝に言ったのと同じ言い方をしたのは、音子しか知らないことである。
「どちらにしろ気味が悪かったです」
美樹は正直に言った。
音木邸に転がっている骨、実は音子のお気に入りでした。理由は単純、夕輝との会話を思い出すからです。
次話(予定)タイトルは「長髪」です。
音子の長髪設定って、覚えている人はいるのだろうか……。




