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噂の動物屋敷  作者: 鵠っち
日常~動物屋敷へ~
28/50

帰宅

 今話タイトルは「帰宅」です。

 今話で本編最終話です。次話から章タイトルが変わります。

 ややあって、十四時。午後二時。

「呉葉、時間だよ」

「あら? この部屋に時計はないし、誰も身に着けていないようだけど、どうして分かるの?」

 未来也の母が時間を知らせに現れたのだが、その必要はなかったようで、代わりに当然の質問が出てきた。

「あたしたちは姉さんに鍛えられていますから、三時間くらいなら、一秒だってはずしませんよ」

 未来也の母は立ち尽くしてしまった。

「じゃあ、気をつけて帰ってね。お呼ばれ、楽しみにしているわ。

 そんな未来也の母に、美樹が救いの手を差し伸べた。

「ええ、そうね。お姉さまにもよろしく。それでは、気をつけてね」

 呉葉と夕日は、仲良く手を繋いで帰っていった。

「美樹さんはいつまでいる? もう一晩泊まっていってもいいわよ?」

 未来也の母は冗談っぽく言った。

「もう、小母さま。そうしたくなっちゃうじゃないですか」

 美樹は嬉しそうである。

「でも、お母様に御呼ばれのことを報告しなくてはならないので、でも、夕方くらいまでいいでしょうか?」

 美樹は残念そうである。

「そうね。じゃあ、また次の機会にね。お夕飯は食べてく?」

「いえ、夕飯には帰ろうかと思います」

「そう。じゃあ、ゆっくりしていってね」

 未来也の母は夕飯の買い物に出かけた。

「ねぇ、みきやさま。しばらくふたりっきりですが、なにをしましょう?」

 未来也の母が出かけたとたん、美樹は甘えたような声で問いかけた。

「うーん。美樹ちゃんはどうしたい?」

 これまたどうでもいいことだが、完全に人目がないと呼び方が『美樹ちゃん』になる。

「いつもどおり、おしゃべりしましょ!」

 即答である。やっぱり、することはおしゃべりしかない。

 二人はベッドに腰掛け、手を繋ぎ、唇を重ねた。事情を知るものがこの光景を映像で見ているとすれば、他に人はいないのだからそんなことしなくてもいいのでは? と思うかもしれないが、二人にはこのほうが早い。

 ――納葵さんの家にどんな服装にする?

 ――こないだくれたやつは?

 ――だーめ。あれは私の家に着てきて。

 ――いつ頃になるんだろう?

 ――夏休み中だといいわね。

 そこまで話すと会話をやめ、手は合わせたまま唇を重ねなおし、そのまま横になってお互いをきつく抱きしめて昼寝をすることにした。真夏の一番暑い時間には寝ているのが一番である。ちなみに、座った姿勢からそのまま横になったので、足はベッドからはみ出している。

「未来也、美樹さん。そろそろ起きて」

 時刻は十六時半。美樹はそろそろ帰らないと、家の夕食の時間に間に合わない。

「ん~~、おばしゃま、 なんじでしゅ?」

 寝起きの美樹はいつも舌っ足らずで、特に可愛い。

「ふふっ。美樹さん、舌が回ってないわよ? 今は、えーと……四時半くらいかしら」

「美樹、そろそろ帰らないと、夕食に間に合わないんじゃないか?」

「しょうでしゅね……間に合わない?」

 美樹はふらふらと鏡の前まで行き、服のしわを軽く伸ばした。

「では小母さま、お世話になりました。それと未来也様、愛していますわ」

「ああ。僕も愛してるよ、美樹」

 未来也と美樹はお互いに抱き合って、お別れのキスをした。未来也の母は早々に退散している。


 その後、永井家。

「ただいまー。ふぅ、未来也くんの家は遠いよ」

「お帰り悠。楽しかったかい?」

「疲れた。特に気力が」

「あっはは。それは災難だったねぇ」

「それで、今度、呉葉たちの家に呼ばれたんだ。母さんも一緒にって」

「私もかい? 一体なにを話してくれるんだろうねぇ」


 同じ頃。納葵家。

「……ということなんです。どうしましょう?」

「そうね。約束してしまったのだから仕方がないわね。

 そういえば、あなたたちがそんなに仲良くするお友達は始めてね。それだと、いろいろ隠しているのも辛いでしょうから、できるだけ話してしまいましょう。

 でも呉葉ちゃん。今後、そのような迂闊なことはしないようにね?」

「はい。ありがとうございます、お母様」


 一時間ほどして、森家。美樹は少し走ったようだ。

「おかあさーん! ただいまー!」

 美樹の暮らす家は、とてもとても広いのである。

「あら、美樹ちゃん。おかえり。走ってきたの?」

「お母さんにニュースよ! 未来くんのお母さんより、料理が上手な人に会えるかもしれないわよ!」

 本題よりも、先にそっちを話す美樹だった。

「そんな人は一流料亭にしかいません。でも、美樹ちゃんが言うなら、気になるわね」

 それはちょっと言いすぎじゃないか、とも思ったが、未来也の母の料理はどんなものでもおいしい。

「って、そうじゃなかった。納葵さんの家にお呼ばれしたの。お母さんも一緒にって」

「納葵さん? 新しいお友達だったわね。どんな方なの?」

「ラブラブな双子の姉弟よ。姉の呉葉ちゃんと弟の夕日くん」

「ラブラブって、美樹ちゃんと未来くんに敵うカップルはいないわよ」

「そんなの当たり前じゃない! 私と未来くんは、ほかのどんなカップルよりも仲のいい幼馴染よ!」

「やっぱりあなたたち、カップルじゃないって言うのね」

 あくまでも『幼馴染』だと言い張る美樹。これに関しては、美樹の母も、もはや諦めている。

「そんなことより納葵さんよ! お姉さんが、未来くんのお母さんが大ファンの声優の納葵音子なのよ!」

「『ナキネコ』って、あの動物の声の『納葵音子』?」

「ええ、そうよ。って、お母さんも知ってるの?」

「とんでもなく売れっ子じゃないの。美樹ちゃんが知らなかったなんてほうが驚きよ」

 美樹はなんとも言えない気持ちになった。

 全員帰宅しました。これにて本編『日常~動物屋敷へ~』が終了です。

 次話から章タイトルが変わって『納葵音子~エピローグ~』になります。


 分かるとは思いますが、一応。

『――   』となっているところは、例の指をトントンするやつです。


 次話(予定)タイトルは「電話(3/1) 祈裡(いのり)の授業」です。

 さて、また新しい名前が出てきました。祈裡さんとは誰でしょうか? 次話にて。2013.9.26 23:50

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