呉葉ちゃん……
今話タイトルは「呉葉ちゃん……」です。
ややあって、いまだ午前十時。
「そろそろ帰らないと、家に着くのが夕方になってしまうので、これで失礼します」
悠が帰った。
「悠さんの家って、そんなに遠かったの?」
「私の家のほうの駅から八つ? 行ったところから乗り換えて、さらに十駅くらい……だったと思います」
「……結構遠いところから来ていらしたのね。それにしても、夕方にはならないと思うのだけれど……」
都会ならば、そうだろう。
「悠くんの家は、見渡す限りの田園風景なんです……」
しかし、悠の家は田舎町だ。電車もバスも本数が少ない。だが、見渡す限りの、までではない。
「田舎……なのね」
それ以上言うことができなかった。
「それで、呉葉さんと夕日さんは、どのくらいまでいられる?」
「今日は……もう帰ってるかな、呉葉」
「う~ん……? お電話をお借りしてもいいですか?」
「ええ、構わないわよ」
呉葉は電話をかけることにした。
「…………」
なかなか出ないようだ。呉葉は携帯ではない、別の番号にかけた。
「……あっ、姉さま? ……まだそちらに……はい……では夕方に着くように……では……はい、ごきげんよう。
二時くらいまでお邪魔してもよろしいでしょうか?」
「ええ、いいわよ。じゃあ、お昼ご飯は呉葉さんのリクエストのおうどんにしましょうか」
未来也の母は買い物に出かけた。
しばらくして。
「ねえ、そんなに仲がいいなら、その……えっちなこととか、しないの?」
呉葉はどうしても聞きたかったようだ。夕日は頭を抱えている。
「するはずがないでしょう。私の知ってる呉葉ちゃんって、そんなに下品な子だったかしら?」
未来也の母が出かけたので、『わたくし』から『わたし』に戻っている。
「さっき、キスしてたじゃない」
「それってエッチなことか?」
「キスするんだったら、その先のことは求めないの?」
「その先ってなにかしら?」
「お互いに体中を触ったり?」
「それくらいなら、いつもしてるわ」
「……体中をなめ回してみたり?」
「それもたまにはするな」
「ゆ、ゆうひ~~~~!!」
呉葉は落ち着きを失い、夕日の胸元に顔を隠してすすり泣いているようだ。
夕日は、そんな呉葉の髪を優しく梳いている。
「……あなたたちも、他人のことをとやかく言えないくらいには、ラブラブよね」
「……森さんから言わないであげて。こう見えて、呉葉って対抗心強いんだよ」
どうでもいいことだが、夕日から美樹を呼ぶときは『森さん』のようだ。
「そうだったの……。それで? 夕日君は呉葉ちゃんのこと好きなんでしょ? 愛しているのではないの?」
「そうは言っても、姉弟だからね。いつかは他の人を探さなきゃいけない。法律的にも、倫理的にもそういう関係になっちゃいけないんだよ」
「世間体が悪いからならないほうがいいだけよ。私たちは軽蔑なんかしないわ。私だったら、耐えられそうにないもの」
「美樹ちゃんって優しいわね。今度までに、夕日とよく話し合ってみるわ」
そのあと、未来也の母が帰ってくるまで、他愛のない雑談は続いた。
呉葉のセリフ、「R15」設定でいいのだろうか?
ダメそうだったら、活動報告『投稿二十九回目』までお知らせください。
美樹が『自分がそうだったら耐えられないだろうから、軽蔑しない』と、呉葉と夕日のことを肯定していますが、あくまでも、美樹のセリフです。
ぼくだったら、たぶん、否定はしないでしょうけど……。
まあ、ぼくの知り合いにそういう人がいないから、こういうことを書けるんだと思います。
次話(予定)タイトルは「呉葉の料理」です。
お昼ごはんです。
呉葉が夕日を拒む、数少ないこととは?2013.9.21 19:15




