内緒話
今話タイトルは「内緒話」です。
どんな内緒話なんでしょうか。
朝食の席には呉葉と夕日、悠が先に着いていた。今日の朝食は、食パンと昨日余ったカレーだ。
「昨日からおいしいものしか食べていないわ! なんて幸せなのかしら!」
呉葉は大げさすぎだと夕日はおもったが、確かに、昨日からおいしいものしか食べていない。
「そんなに感激していただけるのは、とても嬉しいわ。毎日食べにいらしてもいいわよ」
「そんなことをしたら姉さんが悲しんでしまいます」
「それもそうね。ああ、音子さんにお会いするのが楽しみだわ」
食事の後、未来也の部屋にて。
「そういえば、昔からお互いの家にお泊りしているって言っていたけど、いつもは何をしているの? ざっと見回しても、遊ぶものは見当たらないけど」
悠は呉葉から視線を逸らした。
「本当に、悠さんと同じことを聞くのね」
「悠くんも聞いたの? さっき目を逸らしたのはそのせい?」
呉葉は納得したようにうなずいた。
「それじゃあ、悠さんにまたテストをします」
「たしか、お喋りをしてるだけ、だったよね」
「正解。悠さんの記憶力は案外侮れないわね」
美樹がさらりとひどいことを言った気がするが、誰も気にしなかった。
「それを聞くとますます、ラブラブなカップルにしか思えないのだけれど……」
未来也の母は嬉しそうだ。
「っ! いつからそこに……?」
夕日はとても驚いている。いつの間にか真後ろにいたのだから仕方がない。
「悠さんが呉葉さんから目を逸らしたあたりよ。中学校の途中までは、どうやって帰ろうかというくらいにべったりだったのに、いつの間にか人の目は気にするようになったのね」
「やっぱり、あたしたちで敵う相手ではなかったわね、夕日。それで、どれくらいべったりだったんですか?」
呉葉は、ふと気になってしまったようだ。未来也の母は、未来也と美樹に目配せした。
「今……ですか?」
「お願いできるかしら? 私の口からはちょっと……」
「……分かりました」
二人はベッドに座り、片方の手をとって指を絡めた。未来也のもう片方の手は美樹の腰の辺りに、美樹は未来也の胸の辺りにおく。見詰め合う二人の唇は、今にも触れそうである。
余談だが、この部屋は布団を敷くこともあるが、ベッドもある。
「……近すぎませんか?」
悠が小声で未来也の母に尋ねた。
「帰ろうにも、あんな雰囲気のところに割って入る勇気ある? 私たちには誰もそんな勇気はなかった」
未来也の母が、悠たちに小声で返した。
「では、どうしていたのですか?」
今度は夕日が尋ねた。
「仕方がないから、一晩預けて帰ることにしたのよ」
呉葉が「なるほど」と納得気にうなずいた。
「それで、昔からよくお泊りしていたのですね。お互いの服が置いてあるのも」
呉葉と夕日、悠は未来也の母から次の言葉を待った。
「それにしても、未だに一緒にお風呂に入っているようだけど、恥ずかしくはないのかしら?」
「そんなの今更だ、とか言いそうですよね。あの二人」
悠が言うと、全員で未来也と美樹のほうを振り返った。
未来也と美樹は、そこに人がいることを忘れて、二人の世界に入ってしまっている。
「あれって……唇触れてるよね……」
悠が誰にともなく言った。
「夕日、あたしたちもあんな風にしてみる?」
「絶対に恥ずかしいよ……」
呉葉の問いかけ、というより願望は、夕日に拒否されてしまった。呉葉は少し残念そうである。
「それにしても、いつも二人で何を話しているのでしょうねぇ。いつも一緒にいて、よく話題が尽きないものだわ」
そこで、みんながいることを思い出して、美樹が唇を離した。
「ご、ごめんなさい。……話が盛り上がってしまって……」
一秒、一瞬たりとも話をしているようには見えなかった。
「声なんて聞こえなかったし、そもそも口は塞がっていたじゃないか。どうやって話をしていたんだ?」
なので、悠の、ひいてはみんなの疑問はもっともである。そこで、未来也と美樹は繋いでいる手をあげてみせた。
「こうやって話しているんだよ」
組んだ指のうち人差し指、中指、薬指を不規則にトントン、と叩いている。
「まあ、みきやさまったらぁ!」
美樹は顔を真っ赤にして甘い声をだした。そのことに、さらに恥ずかしそうに顔を俯ける。
「……今、なんて言ったんだい?」
夕日は興味津々に聞いた。
「美樹がこんなになった言葉が聞きたいのか?」
「モールス信号かなにかかな? まあ、そうであっても僕には分からないけど」
悠が言ったことはある意味では正解、ある意味では間違いである。
「モールス信号とか、手旗信号とかを参考に、というか着想はそこだ。でも、これは僕らのオリジナル。あらゆる文字や記号をパターン化したんだよ」
「……なんだか分からないけど、すごいんだな」
悠はものすごく感心しているようだ。
「いつからでしたっけ? 未来也様がお考えになったのは。確か、十二年前……でしたか?」
「え?! 五歳の子どもが考えるには複雑すぎない?」
夕日も驚いている。呉葉と未来也の母はすでに何がすごいのか、分かっていないようだ。
「考え始めたのは、さらに半年くらい前だな。今でも、一、二週間に一回くらいで変化させてる」
それを完璧に覚えきる未来也と美樹の頭の中が見てみたい、と思う一同であった。
また2,000文字を超えました。このところ、長いです。
前書きにて内緒話の内容が気になった方、ごめんなさい。内緒話の方法でした。
今話は、朝食後、しばらく雑談でした。雑談、まだまだ続きます。
次話(予定)タイトルは「呉葉ちゃん……」です。
呉葉が少し呆れられてしまいます。
そして、悠が帰ります。といいつつ、家に着くのは夕方過ぎですので、まだ帰り着きませんが。
呉葉の呆れられる原因のセリフですが、いまだもうちょっとどうにかならないだろうか、と考え中です。「R15」でいいのだろうかと。たぶん考えてもどうにもならないので、そのまま投稿すると思います。ダメそうだったら教えてください。
呉葉が幸せそう、という今話のテンションからの次話です。2013.9.19 19:30




