一緒に
今話タイトルは「一緒に」です。
さて、なにを「一緒に」なのでしょう?
夕食が終わって。
「悠さん、お二人もお家が遠いのでしたね。泊まる用意をしていると美樹さんから聞いていますから、遠慮しなくていいわ。
美樹さんはいつも通りでいいわね?」
「はい、小母さま。私はいつでも未来也様と共に」
美樹がすごいことを口走ったと感じた三人だった。
「ありがとうございます。それで、僕たちの部屋はどこに……?」
三人で目を合わせて、悠が代表して言った。
「悠さんは一人で部屋をお貸しするわ。お二人は大変仲がいいと聞いているから、一緒のお部屋でいいかしら?」
悠は、仮にも年頃の男女が同じ部屋で寝ることに違和感はないのか、と思ったが、口に出すことはなかった。
「では、お部屋に案内するわ。ついてきて」
実は、森家ほどではないが、加古家も大きい。
森家では部屋数が多いのに対して、加古家は一部屋が広い。客室として使用される部屋がバス・トイレつきだったりする。しかし、今までに泊まりに来たことがあるのは、美樹と両親くらいしかいなかったのだ。中々に無駄なお金のかけ方だといえる。
ちなみに、美樹にはいつも専用に貸している部屋があるので、『いつも通り』とはそういうことである。
部屋の割り振りが終わって、再び未来也の部屋に集まった。
「そういえばさっき聞きそびれちゃったのだけど、ここって未来也くんのお部屋なのよね?」
より正確には、未来也の部屋のさらに奥にある部屋なのだが、今は仕切りがない。
「はい、そうですよ」
なぜか美樹が答えたが、いい加減、みんなも慣れたようだ。
「それにしてはやけに女物の服が多いような……。っ! 未来也くん、まさかそういう趣味の人なの?」
「未来也様を変態扱いしないでくださる? これは私のものよ」
呉葉と夕日は驚いたようだが、悠は以前聞いていたので特になんとも思わなかった。
「悠くんは知っていたようね……。それで、なんで未来也くんの部屋に美樹ちゃんの服があるの?」
「あら、永井さん知って……、そういえば前にも説明したわね。それなら、永井さんにテストです」
「たしか、未来也の説明だと、『幼馴染だ』、それで? 『以上だ』だったよね……」
「あら永井さん。お二人がポカンとしてらっしゃるわよ?」
「美樹ちゃんの説明だと、『幼馴染だ』、それで? 『昔からよく行ったり来たりしていて、お互いの部屋に泊まっている』だったよね」
「随分簡潔にまとめたわね……。いいわ永井さん。あっているわよ。
それで、お二人さん。今ので分かったかしら?」
呉葉と夕日はまだポカンとしている。
「しかたがないなあ」
分かったように見えないので、大仰そうに未来也が説明を始めた。
「僕たちは幼馴染です。そこまではいいですね?」
二人は無言でうなずく。
「そこまで分かるのであれば、不思議なことは何もないと思いますが?」
ここで分かるのであれば、行間どころか思考すら読んでいるのではないかと思う双子であるが、そんなことはおくびにもださない。
「未来也様。今回は早めに終わらせましょう」
そう前置きして、今度は美樹が説明を始める。
「私たちは幼馴染です。ここまではいいわね?」
「……ここで説明終了は無しよ」
「永井さんと同じ反応ね……。二回目はさほど面白いものではないのね……」
「美樹ちゃん。悠くんにも同じことを?」
「そうですけど、それは今は関係ないわ。説明の続きよ。
私たちは小さいころから、お互いの家を行ったり来たりしてるのよ」
「それで、今も続いていると?」
「永井さんより察しがいいのね。その通りよ」
若干馬鹿にされた気がした悠は、顔をしかめた。
それを見た呉葉は得意げな顔をした。……言ったのは夕日であるが。
「で、それでは未来也くんのお部屋に貴女の服がある理由になってないわ」
「昔からお互いのお部屋にお泊りしているのよ?」
「そんなに頻繁に?」
「ええ、そうよ」
この一日でいろいろ慣れてきたつもりであったが、これは呉葉も夕日も少し意外に思った。
「お風呂もお布団も一緒よ」
「私たちだって、小さいころは一緒だったわ」
「なら、今は?」
「い、一緒になんて無理に決まっているじゃない!」
呉葉の顔は真っ赤である。
悠は何かに気付いたようで、目が泳いでいる。
「この前言ってたのって……」
「この前? あぁ、当たり前じゃない。それより、よく覚えていたわね」
呉葉と夕日は何のことだか分かっていない。
「何の話?」
呉葉は唐突に気付いたようで、完全に固まっている。
「あら、夕日さん。呉葉さんは気付いたようよ」
夕日にはまだ分からない。
「私は、まだ一緒に入っていい。そう思ってるわ」
「そ、それじゃあ、……あたしの思い過ごしよね?」
「呉葉さんがどう思っているか分からないから、なんとも言えない」
「だから、『入ってもいい』って思ってるだけで、実際は一緒じゃないのよね?」
「なにを言っているのかしら、呉葉さん。そのようなこと、あるはずないじゃない」
「そ、そうよね。あるはずない……って、ええ!」
呉葉が再び、顔を赤く染めた。
「何を驚いているのかしら? 一緒に決まってるじゃない」
悠と、少し前に復活した夕日の顔も赤くなっている。
「呉葉さんと夕日さんは、一緒に入らないの?」
呉葉と夕日は目は合わせた。
「……夕日、今夜一緒に入ってみる?」
「恥ずかしいに決まってるだろう!」
「……こ、これが、普通の反応だと、思うのだけれど?」
悠は、危うく未来也たちが正常であると思いかけていた。
「何を恥ずかしがることがあるのよ。昔から一緒に育ったんですもの」
それならば、呉葉と夕日のほうが美樹と未来也よりも一緒にいる時間は長い。なにせ、双子なのだ。けれども、二人にこの感覚を共有することはできないのであった。
久しぶりに2000文字を超えました。
1000文字を超えるとページが長く感じます……。
ええと、今話ですが、『美樹の家にて』に出てきた会話からつながりました。「トイレ以外は一緒」ってあたりですね。
こんな設定でした。
すでにお分かりかもしれませんが、未来也と美樹は家同士で仲がいいです。家族揃って泊まりに来るくらいですからね。
次話(予定)タイトルは「納葵家へのお誘い」です。
NPC内に書いたのはこちらのほうが先でしたが、先日投稿した短編「広い世界の狭い世間で」に使った言葉が出てきます。もう一度言います。こちら(噂の動物屋敷)に書いたほうが先に出来ています。
※本文中には出さないつもりでいた人の名前を出すことにしました。「誰?」となることが確実なので、出さないつもりでしたが……。この人物はほんの一言だけ本文中にて語られています。2013.9.13 22:45




