愛の力
今話タイトルは「愛の力」です。
時間はだいぶ経って、未来也の家。
「ただいまー! さ、遠慮せずにあがって」
「お帰りなさい、未来也。
いらっしゃい、美樹さん、とお友達の皆さん」
「ご無沙汰しております、小母さま。こちらから永井悠さん、納葵呉葉さん、納葵夕日さんです」
「初めまして。未来也くんのクラスメートの永井悠です」
「同じく、納葵呉葉と、双子の弟で夕日です」
「納葵夕日です。初めまして」
「あら? みんな礼儀正しい子ばっかりね。以外だわ。これだけいれば一人くらい……。あっ、ごめんなさい。未来也の母よ。どうぞよろしく」
「小母さま、入り口で話しているのも……。皆さんお疲れのようですので、そろそろ未来也様のお部屋へ参ってもよろしいでしょうか?」
「そうね。気付かなくてごめんなさい。それでは、お夕食が出来上がったらお呼びしますね、美樹さん。
では未来也、皆さんをお部屋にご案内しなさい」
そして何故か、美樹を先頭に未来也の部屋に誘われた。
「未来也の家って、なんかすごいな」
なにがすごいかは分からないが、悠にはそう見えるらしい。そして、そんなことを思っていたのは実は悠だけである。
「別にすごくなんてありませんよ。でも、今日は少し気合が入りすぎですね」
「それにしても、今度は未来也『様』ねぇ……。やっぱり美樹ちゃんって、未来也くんのことが好きなんじゃないの?」
呉葉は茶化そうとして言ったのだが……。
「そんなこと当たり前よ、呉葉さん。私には未来也様がいらっしゃれば、それだけで幸せよ」
やはり美樹は赤面することも恥ずかしがることもなく、平然と言った。
呼び方が「呉葉さん」になっているが、気にしないことにした。
美樹の一人称が「わたし」から「わたくし」になっているのも気にしないことにした。
でも、やっぱり面白くないので今度は未来也に聞くことにした。
「未来也くんは美樹ちゃんのこと、好きなの?」
「当たり前です、呉葉さん。僕には美樹さんしかいませんから」
こちらも、赤面もせず恥ずかしがることもなく、平然と言った。それと、呼び方が「呉葉さん」になっている。
「二人ともなんで『呉葉さん』なのよ。美樹ちゃんはいつも『呉葉ちゃ……』」
言い終わらない内に美樹が余った座布団を取り出して呉葉の口を塞いだ。
悠の怯えたような顔を見てしまった夕日は、それ以上追求することができなかった。
「呉葉さん、夕日さん、とお呼びしなければどちらか分からないだろうに。納葵さん、だと二人ともそうなのだから」
未来也が言うと、美樹がようやく手をおろした。
「美樹、ちゃん。あ、あたしを、こっ、ころ、す、つもり、なの……?」
呉葉は息を切らしながらも、やっとの思い出言葉を紡いだ。
「未来也くんのお母さんは今ここにいないのだから、いつも通りに呼んでくれてもいいんじゃないの!?」
呉葉は起こっているが、冷静さは保っているので声を大きくすることはしない。
「呉葉さん、小母さまは『あとで呼びに来る』と仰ったのよ? そのときにい、いつも通りだとよろしくないでしょう?」
「だったら、そのあとは、いつも通りにしてくれるの?」
美樹は静かに、首を横に振った。
「……美樹ちゃん。分かったわ、貴女のこと。よく思われたい人の前でだけ、言葉遣いが良くなるのね?」
「違いますよ、呉葉さん。美樹さんは、美樹さんがよく知っている人に関わりがある『大人』のいるところで言葉遣いが変わります。相手によって変えているわけではありませんよ。
第一印象は結構重要ですからね。最初にどう接したのかを逐一覚えていて、その人の前では絶対に同じ対応をとり続けます」
未来也に気付かれていない、と思っていた美樹は唖然としたが、すぐに元の表情に戻った。
「未来也様、気付いておられたのですか……?」
それ以上はすぐには出てこないようだ。
「……やはり、未来也様には隠し切れませんね」
珍しく、照れたように未来也を見つめて、ようやく次の一言が出てきた。
「未来也くんも、よく、そう隠しているつもりのことを、やすやすと見破れるものだね」
「それこそ愛の力、ですよ」
「なんども聞いて悪いけど、恋人とかではないんだよね?」
「本当に何度も聞きますね。恋人、というのは適当ではありませんわ」
本当に何度目か分からない答えを、美樹は言った。
「でも、未来也様がそう仰るなら、愛の力なのでしょうね」
何度も言うが、『恋人』は否定するくせに『愛』は否定しない美樹であった。
最後の一行は、ちょっと引きずる言葉です。覚えておくと後で『あ、そういえば言ってたな』ってなる、かも? ……なる予定です。
未来也の母、初登場です。
登場人物の最後の一人でした。いや、名前がある人はあともう二人いるんですけどね。登場“しない”人物なので……。
悠が怯えているのは、以前同じ事をされているからですね。実際にやられると、口と鼻がふさがれて息が苦しいだけでなくて、その大きさで視界も塞がれて結構怖いですよね……。
こんな設定でした。
更新があいてしまったので忘れている方もいると思いますが、悠の家から未来也の家(美樹の家)までは遠いです。
ちなみに、未来也の家と美樹の家は、美樹の足で(走って)1時間くらいです。
次話タイトルは『加古家の夕食』
未来也の母の用意した料理は……?
お話にはあまり関係ないけど、ものすごく引きずるお話です。
次話とはあまり関係ありませんが、そのうち得体の知れない料理が登場します。決して真似をしないように。2013.8.3 22:45




