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4-1 張り詰めた座敷と、異国の商人

ヘンリーが歪な笑みを浮かべ、革袋から一本の頑丈なガラス瓶と、何枚もの精緻な設計図を取り出した。


 


「我がプロイセンが提供するのは、次世代の戦術――【神の霧】だ」


 


ガラス瓶の中に閉じ込められていたのは、ドロドロとした不気味な黄色の液体と、白い結晶の塊。牧野忠訓が、身を乗り出すようにしてその瓶を見つめる。


 


「これは……何だ? 大砲の弾ではないな?」


 


「ええ、牧野様。これは『塩素』、そして水では絶対に消えぬ『黄リン』のサンプルです」


 


エドワルドが静かに、しかし淡々と続けた。まるで天気の話をするように。


 


「これを特製の樽に詰め、風下に向けて開放する。あるいは簡易の木製大砲で撃ち込む。……霧に触れた人間は、自らの肺胞を焼き溶かされ、のたうち回りながら血の泡を吹いて絶命する。炎は肉を骨まで貪り尽くす。弾を当てる必要すらありません。一発で、敵の銃陣地が丸ごと『肉泥の山』に変わるのです」


 


座敷が、しんと静まり返った。


 


光昭は、自分の指先が冷たくなっていくのを感じた。頭の中で、その言葉が絵になって浮かんでくる。霧。肺腑。血の泡。肉泥。……人間が、人間に対してそんなものを使うのか。


 


ガラス瓶は、何事もなく畳の上に置かれていた。中の黄色い液体が、行灯の光を受けてゆらりと揺れた。


 

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