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3 桃の花びらと、二人の距離
「ねえ、光昭」
「なんだい」
「……ずっと一緒だよね? どんなことがあっても」
光昭は、杏の横顔を見た。笑っていた。けれどその笑顔の奥に、何か小さな翳りのようなものが過ぎったのを、光昭は見た気がした。
「うん。ずっと一緒だよ」
光昭は、迷わずそう答えた。
その約束の言葉が、これほど残酷な重さを持つことになるとは、この時の二人には、まだ知る由もなかった。
翌日。光昭を伴い、普通の巫女服を揺らして長岡の本陣へと足を踏み入れた杏。だが、その部屋の奥で、冷酷な笑みを浮かべて待っていたのは、プロイセンの死の商人、ヘンリー&エドワルド・スネル兄弟だった。この商談の席で、彼らが提示した「塩素ガスと黄リン」という悪魔の設計図、そしてその圧倒的な破壊力の魔力が、これから二人の運命、そして日本全土の運命をどのように変えていくのか。この時の二人は、まだ知る由もなかった――。




