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勇者はまた眠る  作者: KURA


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05話 鉄は起きてるうちに打て


つんざくような金属音が鼓膜を刺す。

何回もそして規則的にその音は聞こえてくる。

この音には馴染みがある。熱した金属を思いきり叩く音、俺が剣を習った爺さんは自分の得物を自身で作っていたから。

だが……爺さんの家は山の中の人がいないような所だったから良いものの、此処はおもっくそ国の中である。

苦情とか来ないのか?


「思ってることはわかる。ここら一帯には人はほとんど住んでねぇ。あの爺さんも夜はさすがに控えてんだが……昼にこの音を垂れ流されちまうと、な。此処じゃ有名な偏屈爺さんだよ」

「すごいっすねこの音。そりゃ人も逃げだすわ」


近づくたびに耳をふさぎたくなるようなその音は大きくなっていく。

普段なら避けて歩きたいところだが、残念なことにこの音の発信源に俺たちは向っているようだ。


ある建物の前に来た。

そこはいろいろな武器や鎧が置かれており武器屋や防具やである事がわかる。

そして金属を打ち付けるような音が聞こえてくることからこれらは作られていることがわかる。

まじまじと見ているわけではない為断言はできないが、質は良さそうだ。

刀を作れるまではいかないものの、手入れ位は出来るように殴られながら教え込まれたのが功を奏した。


「おーい、爺。いるかー?」


ギルドマスターが大声で叫ぶ。

するとその声が聞こえたのか規則的になっていた金属音がぴたりと収まった。

そして奥から老人が出てきた。

常人では振り回せないような大きなハンマーを持ちながら歩いてきたことからこの老人がこの店の店主だろう。


「珍しいな。引退したお前がここに来るなんて」

「見込みのありそうな新人がいてね。おい挨拶しろ」

「才賀です。剣が欲しくて来ました」


老人は俺のことを目を細めてこちらを見る。そして一振りの剣を投げてきた。

鞘に納まっており危険はない。金属であるためにずっしりと重いが、鍛えられたこともあり体を痛めることはなかった。

それを受け取り、職人の爺さんのことを見ると顎で店にある的のことを指していた。

恐らくそれを斬れとのことだろう。

技量を見たいのだろう。


「ちょっと素振りしても?」


なんか言えよ。老人は何も言わない。

まぁ、返事がないって事は良いって事だろう。

数回的の前で剣を振る。

久しぶりだ、この感覚。思い出さないと。俺は思い出さないといけない。

鬼のような爺さんに鍛えられていたといってもそれは過去の話。最近は爺さんの山に行かなくなっていた。

俺は生きるためにあの頃を思い出さなければならない。

剣を、振り上げた。


鼻から息を吸う、一瞬だけ目を瞑った。

剣も練習させられた。

これ出来なかったら爺にフルスイングでぶん殴られる。

峰とはいえ真剣で。


「いきます」


誰に言う訳でもなく俺はそう呟いた。

そして斬った。

的はそこまで硬くはなく案外簡単に斬れてしまった。

ふぅ、緊張して損した気分だ。


「おい」


変に緊張していた俺は後ろからかけられたその声にびくりと肩を震わせた。

老人は光線的な笑みを携えながら、こちらを見ている。


「その剣はやる。お前用に剣を打ってやる。数日後に」


来い、という事だろう。

それだけ言い残すと職人の老人は奥に引っ込んでしまった。

恐らくであるが気に入られたのだと思う。呑み込みが良くぶっ叩かれることが少なかった日の爺さんと同じ雰囲気をしていた。

あの老人から爺さんほどではないが、少なくない覇気を感じた。

彼の腕は疑うまでもないだろう。

偏屈さも折り紙付きだろうが。


「あの爺さんが誰かを気に入るのは初めて見たな。俺も見てたが見事な一撃だった。見たこともない振り方だった。何処の人間に教わったんだ?」

「辺境のクソ爺さんっすよ」


爺ほど強い人間を見たことがない。武器さえあれば山で一番強い生き物はあの爺さんなんじゃねぇかって思うくらいには。

人間かどうかも怪しいくらいだ


「ま、よかったな。あの爺さん腕は確かだぜ。この俺が言うんだから間違いない。認めた奴にしか剣を売らんから見ての通り客は少ないがね」

「ああいう輩相手に盗みなんてしようもんなら、おっそろしい顔で追いかけられて腕ごと斬られそうだ」

「はは、確かに。なんならやってた。」




そしてギルドの前へと戻ってきた。

俺は当初の目的を達成している。故にもう帰ってもいいのだが。

空を見上げると高かった日もその高度を下げていて、もう数時間もすれば暗くなり始めるだろう。


「これからどうすんだ?」

「もう日が暮れそうなんで帰ろうかと。あ、薬草が生えてるとことか、初めての討伐にオススメの場所とか教えてほしいんすけど」

「あー教会、わかるだろ? そこの方角から真反対に向かってこの国を出ると見える森は良いぞ。最近の報告を聞いていると大きな巣も無さそうだから奥にさえ行かなければお前さんなら生きて帰ってこれるだろう」

「あざっす。じゃあ、また」

「おうじゃあな。長生きしろよ、小僧」

「はーい!」


そういってギルドマスターと俺は別れ、元いた教会へと向けて歩き出した。


歩いているうちに日が暮れて夕陽が見え始めた。

そして廃教会についたのは夕日が沈みそうになっており夕方というには遅く、夜というには早い時間であった。

んー……すこしだが、眠気が来ている。

だが、素振りをしてから寝たいという思いがあった。

何故なら店で的を斬ったあの時違和感を俺は覚えていた。

あの的、昔の俺ならばもっと綺麗に斬れていたはずなんだ。


剣を抜いて、ゆっくりと構える。

そして仮想敵を目の前にイメージし、ソレめがけ剣を振り下ろす。

一撃。そして剣を翻し二撃。

更に足で押すように蹴る。

打撃目的ではなく、相手の体勢を崩すための蹴り。

その隙に剣を振り上げ、一瞬大きく息を吸い込んだ。

体の力を一つにする。体一つ一つの動きを全て斬るためのモノに。


そして出来上がる渾身の一撃を敵に……敵に……。


「ねむい」


鋭く敵を討つはずであった一撃はその途中でその鋭さを失い、紙飛行機が風によってバランスを崩され落ちるように剣は地面に叩きつけられた。

剣がゆがむほどの力も残っておらず、剣の重さの力だけが地面に伝えられた。


「こんなもん明日明日。きょうは、もうねむぃ」


教会の中に入り、長い椅子に横になる。

あぁ、最初にここに訪れた時も眠気に誘われるままに椅子に横になったのだろうか。


今日は色々と動いたせいで、ねむい。

なんかいろいろきになることとか、やらなきゃいけないことあるけど、もうねよう。

おやすみなさい。
















試しの剣


残念ながら素晴らしい切れ味と強度をしているわけでもない。

だが凡庸な剣という訳でもなく、腕のいい鍛冶屋が打ったことが分かる。

新品の剣ではなく、柄や刃に使用感がある事から何度か試しに使われているのだろう。

だが、名剣でない事に意味がある。


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