第三幕 ろくろ首 【二】
赤子の怪異の解決後、数日が経った。
一か月もの間、悪夢にうなされていた愛悟は、限界が近かった。
名家・白藍家の当主と娘の姫君の捜索を急ぐ中、一か月前に起きた流産事件の話を聞く。
一方、城で起きていた複数の女中の行方不明と物品の窃盗の事件も進展があり、二つの事件が同一の組織の犯行だと分かる。
盗まれた物は闇市で売られ、女中達は遊郭に売られていた。その名簿の中には……。
【二】
狩弥と愛悟は朝餉の後に、城に向けて歩いていた。
本来なら主人である真虎と一緒に行くのだが、数日前に彼の専属符術師・世羅が怪異事件を解決したため、共に城に滞在になっていた。
そのため、二人が城に到着次第、真虎達とも合流して白藍親子の話を聞くことになっていた。
武家屋敷は城の周辺に固まっているため、駕籠を使うのは身分がかなり高いか老人ぐらいで、ほとんどは徒歩で向かう。
真虎の武家屋敷からだと道の左右にはところどころ桜が植えられていて、すでに満開の見頃を迎え、桃色の花弁が風も無いのに散っていた。
城の水堀の外側にも桜が要所に植えられており、無数に花弁が水面に浮かび、小さな筏のように流れていく。
美しい景色を眺めつつ、狩弥はこっそり隣の愛悟を横目に見る。目の下に真っ黒な隈が出来ているのだ。数日に一回だった例の里桜姫の首吊り姿の夢が、首都に来てから毎日見るようになったらしく、ろくに眠れていないのだ。
これはもしかしたら彼女達が傍にいる証なのかもしれない。
(早くなんとかしないと彼の体力が持たないな……)
これも報告せねばならないとも考えていると、城の跳ね橋が見えて来た。
「あ、見えてきましたね」
「あ、あの、大丈夫なんでしょうか? 私、地位もない平民ですが……」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと城の通行手形も貰って、許可が降りてますから」
不安がって涙目にまでなっている愛悟を狩弥は根気強く宥める。
一か月間、誰にも話を聞いて貰えず、門前払いで殴られもしているのだ。寝不足も相まって情緒も不安定になっていた。
既に降ろされている跳ね橋の近くまで来ると、門番に苦言を呈している人物がいた。
「なぜ検査せにゃあかんのや! ワイは竜胆家の者やで! いらへんやろ!」
独特な言い回しは西にあるトラメ領の方言だろう。
その方言と、竜胆という名前でいち早く誰か気付いたのは狩弥だった。
「うげ……」
嫌そうな声と目元を引き攣らせ、すぐ傍の桜の木に隠れた。反射的になのか、俯いていつも被っている笠で完全に顔が見えないようにしている。
驚いた愛悟も真似するように門番に見えないように彼の傍に寄る。
「ど、どど、どうされました?」
「あー、いや、はは……面目ない。実はあの方が苦手でして」
狩弥は声を潜めて苦々しく笑う。
愛悟は木から少し首を傾けるようにしてもう一度門前にいる人物を確認した。
遠目ではあるが、独特の方言と、紫の着物には見覚えがある。彼の元々の主人である前白藍家当主……里桜の父親と一緒に帝都に来た時に見た顔だ。
「ああ……あの人、竜胆羯磨様ですよね……」
外見年齢は三十代前半ほど。黄色い角に紫の髪は結い上げられ、色白の細面で、切れ長の薄紫の瞳だ。彼は高価そうな濃い紫の狩衣を身に纏い、腰には蜘蛛の巣の模様の鞘が特徴の刀を佩き、手には扇子を持って門番に苦言を呈し続けている。
愛悟は過去の記憶を掘り起こす。
「前当主様から注意を受けました。遠目から、あの方を見せられて、絶対に近づくなって。えぇっと……確か衆道でしたっけ?」
衆道とは、いわゆる男色だ。
予想外の知識に狩弥は目を瞬かせ、それから肩を落とす。
「そうなんですよ。愛悟さんと同じく、あたしも特殊能力持ちでしてね。『魔性』と言われる力なんですが、あたしの顔を見ると、男女・ツクモも関係なく篭絡してしまうんです。様々な術で力を抑え込んでも女顔なもので、それだけで惚れられて酷い目に遭いやすくて」
「そんな能力があるんですね。ということは、竜胆様に素顔を見られてしまったということで?」
「ええ、噂を聞いた羯磨様に布を引き剥がされまして。それ以来、小姓になれってずーっとしつこいんですよ」
「……ああ……私はあまり顔の造作は良くないから大丈夫のはずだと前当主様に言ったら、真剣な顔で、彼へ奉公へ行った青年達が行方不明になっていて、白藍家で働いていた使用人の一人も取られて未だに戻ってこないと聞きました。証拠が無くて検挙できてないって……だから絶対近づくなと言われましたよ」
「うっげぇ……白藍の使用人の話は初耳ですぅ……ヤバすぎでしょ、あの人」
愛悟の話に、吐き気すら覚えた狩弥が蛙のような呻きを上げる。
同情を禁じ得ない愛悟が先に発言した。
「しばらく待ちましょう。衆道の他にも悪い噂の絶えないって聞きましたし」
「お手数おかけして申し訳……」
「あれ、どないしたんです?」
謝っていた矢先に、後ろから声がかけられた。
狩弥と愛悟が驚いて振り返ると、男性が二人立っていた。
話しかけた人物が誰だか気付いた狩弥だけがすぐさま背筋を伸ばした。
なぜなら、声をかけて来たのが闘将だったからだ。
外見年齢は二十代前半ほど。
赤紫の髪は短く切っていて、二本の黄色い角はまるで羊のように湾曲して捩じれ上がっているのが特徴的だ。切れ長の瞳は藤の花の色合いのような薄紫で美しく、目鼻立ちの堀も深いが、右の頬に斜めの大きな刀傷がある。
紫を基調にした袴と羽織りを着ていて、腰には『剣』を佩いていた。ただそれは非常に歪で、革製の鞘の形は切っ先になるほど幅広くなだらかな曲線を描いている。刃渡りから見て両刃だと推測できるが、刃の長さに対して、鍔の部分が短い……というより、茎が剥き出しで片手でしか振るえないような状態だった。
彼の名は竜胆カルマ。
十六歳にして闘将入りした三人のうちの一人で、序列も三人で並んでおり、彼が一番高く序列八位。三人共に美男のために一括りで〈三貴子〉とも呼ばれる。昴流と優駕が女性の如き繊細な美男なら、彼は野性味が強い男前と言ったところだろう。
木の傍で不審な動きをしていたために声を掛けたのだろうカルマは、狼狽する狩弥に気付いて眉間に皺を寄せた。
「あれ、あんさん……」
そして罵声が耳に届いて門前へ視線を向け、察して長いため息を吐く。
「えぇ……まだあんなとこにおるやん。せっかく時間を空けて屋敷を出たのに意味あらへん」
「あ、あの……」
「ああ、狩弥さんやろ? うちの兄がご執心の人。やらい迷惑かけてしもうてすんませんなぁ。あの人の所為で通れへんのやろ。ちょっと待っててな」
カルマは何も聞かずに従者らしき四十代に見える男性を伴って橋を渡っていく。
「どないしましたん?」
声を掛けながら門前へ行くと、羯磨がすぐさま気付き、カルマを見て鼻を鳴らした。
「なんや、私服やないか。謹慎が解けたと違うんやなぁ。何の用で城に来てるんや、この竜胆の恥晒しが」
「門番が困ってるはるやないですか。何してはるんです?」
嫌味を完全に無視するカルマに、羯磨は目元を引き攣らせて扇子を開いて口元を隠す。
門番達は困り果てた表情から、血の気が引いて顔面蒼白になり、一人がこっそり城へと入って応援を呼びに行く。
名家のいざこざに門番が対処など出来るわけがないのだ。
その応援へ行った門番は、途中で足を止めた。
狐の半面を付けた少女が門へと歩いて来ていたのだ。知り合いなのか、聞かれたのか、事情を話しているようだった。
その様子に気付いたのはカルマだけで、視界の端で成り行きを窺いつつ、羯磨の罵詈雑言を聞いていた。
「部下の躾もままならへん者が入城なんておこがましいと思わへんのか。竜胆家どころか闘将の名折れや。さっさと居ね」
「口が過ぎます! それに今回の件とは……!」
後ろに控えていた部下が声を上げるが、カルマが片手を上げる。意図を汲んで彼が口を噤むと、羯磨はやめることはない。
「あんな失態してもうて、謹慎だけって甘いんとちゃう? 初代皇帝から続く竜胆家の誇りである『業』の名も、【天沼矛】も返上した方がええんやない?」
「……ずっと当主の座も、名前も、神器も、興味あらへんって言うてるやないですか」
ようやく切り返したカルマは、悪意に満ちた眼光の羯磨を真っ向から受け止める。怒りよりも呆れと憐憫に近い表情だった。
「この際なんで言いますけど、当主になりたいんやったら身辺整理してください。悪い噂が絶えない者とばかりいはるでしょ? それで犯罪集団と関わってるとか、それどころか従わせてるとか、世話役の小姓が行方不明になってるとか、嫌な噂ばかり立ってるんや。ワイの耳にも入って陛下まで心配してはります。部隊の一つを任されてる身として、耳が痛くてならへんのですよ」
「な……!」
「その噂の所為で父上も次期当主に出来ずにいるんでっせ? ワイかて兄上に譲りたいんやから、悪事を働いてないって、身の潔白を証明してください」
「貴様に兄と呼ばれる筋合いあらへんわ!」
突然激昂した羯磨が、カルマに肉薄して胸倉を掴み上げる。
一触即発。その場の全員が反射的に硬直する中、一人だけ動いた者がいた。城からやって来ていた狐の半面を付けた少女だ。彼女は早足にやって来て、二人の間に長方形の紙を差し込んだ。その細い手が羯磨の腕に当たる。
「あれ? 腕?」
くしゃりと紙が歪み、腕が止まった事に少女が不審そうに首を傾げると、驚いた羯磨が手を離し、カルマも目を点にさせる。
彼女は紙を見下ろし、羯磨を見て、さらに彼の頭上を見上げた。
突然の行動とその格好にさすがに勢いを削がれ、さすがの羯磨も困惑する。
「な、なんや……?」
すると少女はゆっくりと顔を降ろし、羯磨の腰の刀を見た。
「おい、けったいな格好してこのワイを誰や思ってんねんっ」
少し調子を取り戻した羯磨の怒気に、少女が再度顔を上げ、ようやく彼の顔に視線が止まる。まるで彼の声を頼りにしてるような仕草で、面で分かりづらいが、顔よりやや下を見ているようだった。
視線の動きが気になり、カルマも首を傾げるが、少女が発言で訊ねることはやめた。
「これは失礼しました。人だったんですね」
「は?」
「いえね、微弱ですがツクモの気配がしたんで、城に入り込もうとしてるのかと思って見に来たんですよ。そしたら持ち物検査で嫌がる人がいて困っていると門番の方から言われまして、見たら『異形』が男性を襲おうしていたので、『結界の霊符』で守ろうとしたら腕に当たってしまいました。使うなら祓いか封印の霊符でしたね。どうもすみません」
「はぁ?」
事情を説明している様子だが、全く意味が分からない。
しかし、場数を踏んでいるカルマは理解して兄を見る。どうやら彼女には羯磨が別の、しかも化け物の姿に視えているらしいが、彼らには視えない。そして霊符ということは。
「お嬢ちゃん、もしかして符術師の見習いとか?」
カルマの詰問に少女がひょいと彼を見上げる。
「あ、自己紹介が遅れました。神器使いで初めて城に招かれました。〈最弱〉檜皮世羅と申します。符術師で、市井で怪異の相談の仕事をしています」
この時世羅はあえてメノウ領領主の専属符術師は伏せた。
別の存在が視えていた所為で、おそらくは武家の御仁に粗相を働いたのだ。これでは上司にあたる刈安家に迷惑がかかる。それぐらいの知識と配慮は出来ていた。
カルマは名前ですぐに気付き、顔を綻ばせる。
「ああ! 史上最年少神器使いちゃん! 今年から来るって聞いたから楽しみにしてたんや! ちっちゃ~! かわええ~! あ、ワイは竜胆カルマって言うんや。カルマお兄ちゃんって呼ん……」
「んっん!」
後ろの部下が渋面で咳払いをした。
「私の所為ではありますが、控えてください」
何やら注意を促され、カルマが肩を竦めてしおしおとしょげ返る。
「ええやん、呼び方ぐらい……子供に手ぇなんて出さへんて。もっと色気のある大人の姉ちゃんが好きやて」
「隊長」
「うぐぅ……カルマでええで。よろしゅう……」
「え、あ、はい。えーっと」
世羅は先に〈三貴子〉のうちの二人と知り合っていた。その二人曰く、彼は陽気でお調子者らしい。何か言われても聞き流すかあしらって構わないとも言われていた。
内心納得しつつ、世羅は話しを変える。
「持ち物検査を嫌がってるのはどなたでしょう?」
「そっちの兄ちゃん」
カルマが顎でしゃくると、その態度に羯磨が怒鳴ろうとする。しかしそれよりも先に世羅が注意した。
「申し訳ないですが、昨日から検査の強化が実施されました。ご協力お願いします」
「門番も言うとったけどな、名家で何千回も来てる城に入ってるのに、毎回検査受けなあかんって面倒やって話やで。顔だって分かってるやろ」
「あまりお話出来ないんですが、城の中で窃盗が起きてまして。門番が闘将閣下や名家様には持ち物検査もせずに素通りさせていたこともあって、武家、商人に関わらず、全員を検査するよう厳命が降りたんです」
「窃盗?」
「詳しく聞きたいのでしたら、第九、第十部隊の隊長に聞いてください。陛下も検査対象に入るぐらい警備を強化するとのことです。昨日からの厳命で、武家や臣下にも随時連絡されるので、ご存知なくても仕方ないのですが、どうか規則を守ってください」
「せやかて……」
「そこまで渋られると怪しまれますよ。見られたくない物をお持ちなのでしょうか?」
「ぐ……」
子供に言い包められる形になり、屈辱そうに唇を噛み締めると、カルマも加勢に入る。
「これ以上渋ると大人げあらへんって分かったでしょ? ワイも検査受けますから、大人しく持って来た物出して検査受けてください。仕事もあるでしょ?」
「ぬぅぅ……!」
嫌いな相手からも指摘され、羯磨が背中を向け、門番へ扇子と刀、懐に入れていた本を出して乱暴に押し付けた。
「これだけや! 他にやらなあかんことあるならさっさとせぇ!」
「は、はい。では腕を横に上げてください。他にないか調べさせていただきます」
「ちっ」
舌打ちして水平に上げた羯磨を門番は手際よく服を叩いて検査をし、彼の部下も大人しく従う。
安全が確認されたものの、羯磨は口を尖らせて不満を露わにしていた。
すると世羅が懐から霊符を取り出して彼に話しかける。
「あの、こちらを刀に貼っておいてください」
「あ?」
「先ほどのお詫びと、万が一の応急措置ですが……神器を制御できていないのではないですか? それに、言葉を選ばずに言うと、恨まれ過ぎて邪気だらけで、それを神器が吸収して復活寸前です。この霊符を貼れば、邪気を祓って復活を阻止できます」
世羅の善意に、苛立っていた羯磨の表情が驚愕で固まった。
一方で聞いただけでカルマが眉間に皺を寄せて刀を睨む。
「確かそれ、借金で首が回らへんくなった神器使いから金を肩代わりする代わりに無理矢理継承したんやったでしょ? 制御できてへんのです?」
「う、うるさい、黙れ! 大体、〈最弱〉ってけったいな称号のガキの言葉を信用すんのが問題やろ! どうせお前も親からの継承やろうが!」
「いや……」
カルマが否定しかけて、何を思ったか口を噤んだ。
『継承』とは神器を他の者へ受け継がせる儀式のことだ。
本来なら持ち主が死ぬと、神器は肉体であるツクモへ戻ってしまう。そうなると再び災害が起きる可能性が高い。
それを防ぐために、先達が苦心の末に編み出した術で、簡潔に言うと神器状態でも意識があるツクモを『騙す術』だ。
新たな持ち主を、ツクモ視点だと『元々の持ち主』だと思い込ませることで、ツクモの復活を防ぐ。ただ術は長続きしないため、新しい持ち主は実力を早々(そうそう)に認めさせる必要がある。
だからこそ、相当な鍛錬と実力を元の持ち主に認められないと儀式すらさせてもらえない。
そしてツクモを服従させることも含め、儀式については武家のみが行うものとされている。理由は鍛錬を積みやすいし、一般人が代々受け継いで管理するには神器は荷が重すぎるからだ。
神器をツクモとして復活させない。それこそが武家の務め。
そうして武家達によって長年持ち主が変わり続けた神器は、もう諦めたのか、かなりすんなり認めて馴染む物が多くなっていた。現に〈三貴子〉も十歳になると同時に三人共に実力を認められて継承し、最年少記録を三人で保持していた。
だがカルマは八年前に度肝を抜く知らせを聞いた。
たった六歳でツクモを倒して神器使いになった少女が現れたと。
しかも名家どころか、どこの武家の血も引いていない。
カルマ達よりも若い年齢で、遥かに困難な事をやってのけたことに、会ってもいないのに尊敬すらした。新たな神童が現れたと評判になって、悔しさどころか三人共どんな子だろうと、いつも話していて、会うのが待ち遠しかった。
その一方で、羯磨は継承はしたものの、屈服させられずにいる状態ということだった。
さらに言うと、羯磨は自分より下の者は徹底的に見下さずにはいられず、女性に関してはその場に存在しないような扱いをするため、神器使いなら名前を聞けば分かるはずの世羅のことすら知らないのだろう。
(兄上より手練れだって言わんとこ。いつか足元を掬われて恥ずかしい思いしくされ)
散々に罵詈雑言を浴びせられていたカルマのささやかな悪戯だった。
「んな紙切れいるか!」
羯磨は己の実力がないと侮辱されたと思ったのか、怒りで顔を真っ赤にさせて城内へと入っていく。
一方、部下達が不安そうに世羅を見る。
察したカルマは、世羅へ近づいて耳打ちした。服に香を焚きしめているのか、甘い香りが鼻腔をくすぐった。
「護衛としてあの人に何かあったら叱責受けるんは彼らなんや。彼らに霊符やったり」
「あ、なるほど。どうぞ」
納得した世羅が部下へ霊符を差し出すと、受け取った部下達が深々と頭を下げる。
「――ありがとうございます」
部下達が羯磨を追いかけて行ったのを見送り、カルマが振り返って大声を上げる。
「もうええよー」
彼の声に、狩弥と愛悟が橋を渡って来た。
霊力で気付いていた世羅が、まず兄貴分の狩弥を見る。
「あんなところで何してたの?」
「いや、その……さっきの人が苦手で困ってたら、竜胆閣下に助けられた」
「ああ……しつこい人ってあの人か」
以前、帝都に居たくない理由を愚痴っていたことを思い出し、世羅が城へ一瞥する。既に見えなくなっているが、気配は追える。
「あの人は近づかない方が良いね。色んな意味で」
「世羅が言うと意味が違ってくるんだけど……。で、何をしに出て来たんだ?」
逆に狩弥に聞かれ、世羅は今起きた事を説明すると、彼は頭を抱える。
「あの人、もう本当に怖い……」
「これに関してはホンマにすまん」
カルマが遠い目をしながら謝罪すると、世羅が城を示す。
「ココで立ち話もなんですし、さっさと検査して入りましょう。部屋も用意してありますよ。白藍親子の居場所の手がかりになるといいですねぇ」
「え? ちょい待って」
世羅の言葉を聞いて、カルマが顔を強張らせる。
「まさか、今日、里桜ちゃんのことを聞きたいってのは、世羅ちゃん達なん?」
「え? それを聞くってことは……」
世羅も気付いたのか、カルマの続きを待つと、彼は苦々しい顔をした。
「里桜ちゃんの流産に関わったんは、ワイと後ろの部下なんや」
カルマの傍にいる男性が委縮するように俯き、世羅とやって来た二人が絶句するのだった。
〈三貴子〉最後の一人、カルマ登場です。
関西弁に関しては完全ににわかなので、間違ってたら指摘ください。
ちなみに、書ききれるか分からないので三貴子の性格と、女性の扱い方を書いときます。
・カルマ→身長は二番目(昴流より親指一本分ぐらい低い)。お調子者。いつも陽気で、ずばずば言いたいことは言うタイプ。一番生まれに問題を抱えている(次の話をお楽しみに)。好みは年上のナイスバディ。けど誘われたら誰でも断らない。
・昴流→身長は一番高い。優男で色男。何事にも女性優先。竜胆の血筋のためカルマとは従兄弟。母親やカルマといる時は方言が出る。女性の好みもカルマと似てる。女性に関しては無条件で嘘をつかれても信じ通す男気もあり。ただし、三人の中では浮気も最多。
・優駕→身長が一番低い(カルマより拳一個分ぐらい低い)。三人の中ではクール系。ブラコン。二人が同時にボケるため、ツッコミ役。好みは清楚、お淑やか系。ただし、母親がせっついたりするので、女遊びも控えていて、数年は誰とも付き合っていない。
まぁ、ほぼ変わらず「女性最優先」、「女子供には手を上げない」、全員紳士ですが……女神器使いとの戦闘・決闘は加減は失礼になるという武士道で加減しません。ただ、戦うのは本当に嫌なので、極力そうならないように避けはします。
全員、婚約者はいない(っていうか候補に名乗り出て来る姫が多すぎて断定すると武家の序列的にも問題になるため、決められない)。その分、付き合ってる姫が多く、浮気し過ぎで問題を起こすこともあり、よく三人でつるんでいるし、喧嘩(じゃれ合い)もするので、闘将達からは『三バカ』と呼ばれています。
世羅のお面(火傷)に関しては、ほぼ聞きません。でも三人共かなーり気になってはいます。
しかし女性慣れしてるため、とても慎重で、世羅が言い出すか、何かきっかけが出来る(さり気なく聞ける時)まで待ってる感じです。昴流は流れで聞こうとしましたが、真虎に阻止されましたしね。おかげで説明が省けて書きやすいし、奇天烈な事を言っても無条件で信じてくれるのでスムーズで助かる(笑)。この三人に関しては、ネタバレですが、火傷を見ても気にしません。むしろ貶す相手を殴りに行くぐらいの男前です。
ちなみに世羅は、美形慣れしてますので、三人を見てもなんとも思ってません(笑)




