第10話 “徹夜研究派の魔法学者”が倒れる 魔法研究棟で爆発騒ぎ → 学者が煙の中から倒れる
魔法研究棟の方角から、
ドゴォォォン!!
と腹の底に響く爆音が鳴り、続いて白い煙がもくもくと立ち上がった。
アリアは思わず叫ぶ。
「また!? 今日で三回目よ!!」
ルチアが半泣きで走りながらついてくる。
「お嬢様っ、研究区画の魔力暴走です!」
アリアはスカートを翻し、廊下を疾走して研究棟へ駆け込む。
中はもう、霧のような煙で真っ白だ。
「げほっ……! 誰かいるの!?」
薄い影がゆらりと揺れた瞬間――
白衣を着た男がふらふらと姿を現した。
髪はぼさぼさ、白衣はすすだらけ。
目の下にはくっきりとしたクマ。
魔法学者・ヴァルノである。
ヴァルノは、まるで魂が抜けたように片手を上げた。
「……ちょっと……魔力計算が……ズレただけで……」
アリアはツッコむより先に呆れる。
「その“ちょっと”で煙が天井まで届いてるのよ!!?」
ヴァルノは青い顔のまま、壁に寄りかかる。
「すま、ん……少し徹夜が……続いて……いて……」
アリアは眉をひそめた。
「まさか……徹夜どころじゃないでしょ。
寝てない、食べてない、運動もしない……?」
その瞬間、廊下の奥から弟子たちが駆け寄ってきた。
「アリア嬢様! 先生、もう三日目なんです……!」
「座った姿勢からほぼ動いてなくて……」
「水、飲みました!?」「昨日の夕食は!?」
ヴァルノはぼんやりと宙を見つめ――
「……え……食べた……ような……?
いや……研究に没頭して……たので……」
アリアは頭を抱えた。
「それ医療案件じゃないの!!?」
ふらり、と学者の体が前に傾く。
アリアとルチアが慌てて支えた。
「わっ、倒れる倒れる!!」
アリアは怒りと呆れと不安を混ぜた声で叫んだ。
「ルチア! 急いで寝かせられる部屋を用意して!
この人、魔法学者以前に“生活習慣の亡霊”よ!!」
白衣の天才は、煙の中でぐったりと意識を落とした――。




