第四十一話「昔話とそのころ獣人の村では2」
トネはご飯を食べ終わりソファーに横になっていた。
そんな時にふとつぶやく。
「さて、俺もそろっか動きますか。」
彼にはやらなきゃいけないことがあった。
仲間にも言えない事が。
「トネ。何処か行くのですか?」
お皿を洗い終わったヤマチが台所から戻りながら聞いてくる。
後ろにはイスカも一緒だ。
「ん?俺なんか行ったか?」
トネはとぼけた。
「イスカ、聞イテタ。動クッテイッテタ。トネドッカイクンデショ?」
イスカにはしっかり聞かれてしまった。
「ん?散歩やジョギングしようと思ってな。お前らキグルミ着てっから痩せてっけど俺はこの体系だし。」
腹を叩いたあと頭を掻きながらトネは話す。
「まあそうですね。あなたはデブとは言いませんが大柄の体形。少し筋肉をつけてもいいかもしれません。」
「エー?トネ、硬クナッチャウノ?柔ラカイ方ガ良イナー。」
優しい二人がフォローする。
そんな二人にはさすがに言えないよな。
戦いに行くなんて。
トネの心はあの時の出来事のせいで荒れていた。
国は燃え仲間が消えそして生きる気力より芽生えたもの。
それは復讐。
町と城を火の海にした黒服の忍者。ヤマタカ。
そいつらを派遣したミツミの国。
後輩を・・・・・殺めた水の国の住人。
俺はこの時の為に生きている。
「トネ?」
「どうしたんだ?」
顔をのぞき込んできた二人。
「ごめんごめん。考え事をしてたんだ。」
それに気が付き慌てるトネ。
彼女らを巻き込みたくない。
だから・・・・・・・・
「ちょっとさ仲間に下水道の中に魔物がいないか長期の調査してくれと言われてな。そのためちょっと家に帰れそうもないんだ。」
嘘を吐くことにした。
「下水デスカ。ソレデハ私達ハ役クニタテナイね。」
「翼族のハーピーだもんな。天井があったら役に立てないね。」
声を合わせて言う。
「だからさここから通うんじゃなく町の方にボロボロの一軒家を借りてそこから行こうと思ってんだ。」
「ボロボロ?ジャアココカラ出勤スレバイイジャナイ?」
「・・・・・・そうよ。いきなり離れたいなんて・・・・・・」
イスカは内容が分かっていないようで困る。
「イスカたちは羽があるからひとっ飛びの距離でもな俺は歩かなきゃいけないんだ。」
「タシカニ。トネッテ重イカラ空飛ベナイモンネ。」
説明すると納得する。
「・・・・・じゃあちゃんと家を借りて私達もそっちに住むのは?」
ヤマチが案を出してきた。
だがトネは首を振る。
「お前達の存在が今国に入ったら大荒れになるのは分かってるだろ?だから許可できない。」
そう言うとヤマチは細い目でこちらを見てくる。
そしてこう言った。
「・・・・・そんなこと言って本当は獣人の国でかわいい子でも見つけたんじゃないの?ねえ?どんな子なの?犬獣人?それとも猫獣人?まさか同じ象獣人!?」
顔は完璧怒ってる。
俺の交友関係で怒るなんて。
まさか・・・・・・・・・・・
「安心しろ。そう言うのじゃない。俺が働いている間にそんな時間あったか?」
「帰ってくるときが遅い時があったわ!」
「ソウダソウダ!」
いや、だからそれは・・・・・・・・・
帰ってくるのが遅いときは確かにあった。
それはトレーニングをしているからなんだが。
武器は毎日練習しなければうまくならない。
だから仕事帰りは練習して水浴び、または銭湯に入って帰ってくるのが日課だ。
たまに残業がある日は困るんだがな。
「甘い臭イ付ケテキタコトモ・・・・確カニアッタナ。」
「それは町の銭湯に入ってそこのボディーソープで体を洗い汗流してきただけで。」
「銭湯?汗?ボディーソープ?どういう事かしら?!何故かいかがわしく聞こえてきたわ!イスカの教育上悪い気がするのでやめていただいても?」
「汗臭いまんまだと嫌なんだよ!」
「私は気にしませんが!?」
「イスカモ!」
これはやばい。
納得してくれないかも。
そう思ったトネは最終兵器を言う。
「俺は気にすんの!可愛い子の前で匂うって男として嫌なんだよ!わかる?女性だったら分かるでしょ?」
可愛い子。
女性だったら分かる。
最近トネが覚えた言葉の一つだ。
どうやら女性扱いが嬉しい年ごろらしい。
「えっと・・・・そうよね。汗臭いのは嫌いじゃないけど・・・・社会のマナーだからね。」
「ウレシイ!女の子扱アサレタ!」
これでこの話は納得してくれるだろう。
「で俺にそんな女性はいない。帰ってくるときが遅いのは走っていたからだ。いわゆるダイエットだ。納得してくれたか?」
その言葉に二人は返事が返ってこなかった。
うっとりしてる。
自分の世界に入ってるんだろう。
そのままトネは続ける。
「だからわかってくれたか?だから明日から向こうで住み始めるからそれだけはわかってくれ。ちょこちょことここへ顔見せに来るからな。」
そうして去ろうとした・・・・だが!
ー ガシッ! ー
行きなり捕まれた。
イスカだった。
「ワカッタ。ガンバッテコイッテ!デモ忘れ物アル。」
そういうとイスカはトネに稲を持たせる。
そして
ー チュッ! ー
キスをした。
「ふああああぁ!?」
奇声をあげるヤマチ。
トネも唖然とする。
「な、なにしてんのイスカ!」
「ん?稲とチュー?」
「だからなんで!?」
「ダッテ家族ガ旅立つンダヨ?ゴ利益トオマジナイダよ?聞イタコトナイ?」
「あ、ふう。そう言うことか。それ知ってるな。稲のはニジシマ様が昔話で言っていたよね。うんうん。」
無理矢理納得させようとしているヤマチ。
そこに追い討ちをかけるイスカ。
「ソレト大好キ、アイシテルッテ意味ヨ。ネッ!」
「はぁ?!」
イスカの肩をつかみながら揺らすヤマチ。
そんな姿を見ながらトネは
「あ、ありがとな。その愛情と祝福もらうよ。じゃあ先に部屋戻るわ。」
そう言って部屋を後にした。
部屋につくとトネは
「未練残っちゃうじゃねえか!くそっ!」
頭を抱えるのであった。
そして朝早く彼は旅立つ。
宿敵を打つために。
今、復讐の歯車が動き出す。




