前途多難
昨日更新した86部は規則に反する部分がありましたので、削除しました。
全くもってお恥ずかしい限りです。申し訳ありません。
少し書き直して更新しますのでよろしくお願いします<(_ _)>
あの部分はあれで気に入ってますので、読まれた方は思い出して、ふふっと笑ってやってくだされば幸いです(^^;)
翌朝、賢がダイニングルームへ入って来た。
髪の毛はぼさぼさ、目は血走っている。
もちろん、夕べは一睡もしていない。もんもんと朝を迎えたのである。
「おはよー、まー兄、どうしたの? 目、充血してるよ……寝てないの? 和泉ちゃんに今度こそ振られちゃったの?!」
「ああ? 何だ、てめー、朝から喧嘩売ってんのか? 泣いてもやめてやらねえぞ、このやろー」
賢がじろっと陸を睨んだ。
「あの後、和泉ちゃんと会ったんだろ? 和泉ちゃん、何て言ってるの? まさか、おばさん達と一緒に行かないよね?」
「……知らねえ」
賢がぶすっとした表情で答えた。
「知らないって?」
「ママが怖いから帰れって追い返された」
「まじで?」
「ああ、ちなみに、おばさんがしばらく和泉のアパートに滞在して、俺が近寄らないように見張るそうだ」
賢が不機嫌そうにテーブルについたので陸も座った。
すぐに女中頭の沢がワゴンに乗せた朝食を運んでくる。
「おはよう」
と仁が大あくびでやってきた。
「おう」
「おはよう、仁兄」
(賢兄、機嫌悪そうだな)
(うん、和泉ちゃんと揉めたらしいよ)
(おばさんの事か)
(らしいね)
(おばさん何か必死だったもんな)
(せっかく再の能力が開いたのに、もったいないよね~)
(土御門の再の見鬼の中じゃダントツだろうな)
(何とか説得して能力者として働いて欲しいよね)
(賢兄が振られるのはしょうがないけど、あの才能だけは惜しいな)
カチャン、っと音がした。
賢がコーヒーカップを皿の上に置いて、
「聞こえてるぞ」
と言った。
「あはははは……そう言えば、賢兄、和泉ちゃんに守護の式をつけたの? 赤狼の後」
と仁が聞いた。
「いや」
「つけてあげないの?」
「和泉が式はもういらないと言うんだ。まだ赤狼の自爆から立ち直れていない」
「え、でも、大丈夫なの?」
「和泉には気づかれないように、緑鼬を見張りにつけてある。再の能力が開いたからな。和泉の上等の霊気に引きつけられる悪霊もいるだろうし」
「そっか、赤狼、残念だったね……」
「ああ」
「でもまー兄、赤狼の抜けた後の式はどうするの?」
と陸が言った。
「しばらくはいいさ。めぼしい奴でもいたらな」
「ふーん。そうだ、賢兄、和泉ちゃんに能力者として働いてもらうっていうのはどう思ってるの?」
「惜しいよな、あれだけの才覚を持ちながら」
と仁も言った。
「どうかな、和泉がその気にならないと無理だろう。あの時は俺達と式神を助けたいと思った一念だ。今、あれだけの治癒の念を出すのは難しいと思うぞ。ばーさんの事でかなり自責の念があるし、ちゃんと修行しないと無理だろうな。だがその気があるかどうかは分からない」
「もったいない~~」
と陸が言った。
「まー兄、和泉ちゃんに本屋さんより、こっちでバイトやった方が時給高いよって言ってあげたら? 収入になるって知らないんじゃないの?」
仁も腕組みをしてうんうんとうなずいた。
「……」
「まー兄が手取り足取り優しく教えてあげればいいじゃん!」
「確かにそいつは魅力的な計画だが、その前に和泉のお母さんを説得してくれよ。バイト云々言ってる場合じゃねえ。和泉が連れて行かれてしまいそうだ」
と賢が言って大きなため息をついた。
「そっか。なかなか前途多難だねえ、賢兄」
仁が時計を見て立ち上がった。
「賢兄、今日の予定は?」
「お前は?」
「俺は午前中に次の祈祷場の下見と、午後は勉強会の講師」
「ふーん、忙しそうだな。陸は?」
「俺は報告書書いたり~賢兄は?」
「俺? 俺は忌引きだ」
と、賢が言ったので、仁と陸は口をぽかんと開けた。
「え、何それ」
「知らないのか? 世間知らずだな。親族が死亡したら、忌引きつって会社を休める制度があるんだぞ? 覚えとけよ」
「ちょ、まー兄だけずるくない?!」
「ずるい? 俺が? 正当な権利だ」
そう言って賢は立ち上がった。
ふがふがと文句を言っている弟達を残して賢はダイニングを出て行った。




