床ローリングもしくは15キロ疾走案件
「和泉」
と賢が呼んだので、和泉が顔を上げた。
その頬へ賢がチュッとキスをした。
賢の唇はそのまま和泉の唇へ重なり、(あ、やばい)と和泉は思った。
(風呂上がりだから、ノーブラだ。どうしよう、このまま突入かな。まあ、いいか。別荘でも結局喧嘩して出来なかったし。そういえば、勝ったら好きなだけ好きな事してもいい、とか言っちゃったし)などと考えていると、さすがに我慢も限界だったらしく、賢の手が和泉のTシャツの中に入ってきた。
和泉の胸を賢の手がまさぐり、そのままの姿勢から賢は和泉を押し倒した。
「和泉……好きだ、好きだ」
と賢が言い、和泉も賢の頭を両腕で抱え込んだ。
賢がTシャツをめくりあげ、和泉の乳房に唇を這わせる。
プルルルルルルル!
「で、電話、賢ちゃん、ちょっと待って」
「無理」
「ちょっとってば!」
和泉が賢の身体を押し上げようと……重くて無理。
和泉は手を伸ばして丸いテーブルの上の鳴り続ける携帯電話を取った。
かけてきた相手は母親だ。
「も、もしもし」
「和泉?」
「お、お母さん、どうしたの?」
そう言いながら身体を起こそうとするが、賢の勢いにとても無理。
賢は和泉の身体に濃厚なキスをする。
和泉がいやいやと身体をよじるが、賢の巨体はびくともしない。
だがこのままではどちらにも集中出来ないので、和泉は賢の頭をぺしぺしと叩いた。
「ちょっと、待ってって言ってるでしょ!」
と小声で賢の頬をつねる。
賢が身体を起こしたので和泉も起き上がって、シャツの乱れを直した。
「和泉? 誰か来てるの?」
「ううん、別に。お母さん、何? どうしたの?」
「あのね、お母さん、今から和泉のアパートに行くわ」
「え?」
丸テーブルに頬杖をついている和泉を賢が背中から抱きしめた。
「お父さんね、最終の夜行バスで帰ったの」
「ど、どうして?」
「早く荷造りを終わらせて新しい場所に行きたいからよ。最後の荷造りはお父さんだけでも出来るし、もうほとんど荷物は送ってしまってるしね。お父さんが全部終わらせてこちらへ来るまで、お母さんは和泉のアパートで暮らすわ。お父さんが来たら、皆で一緒に行きましょう」
「えー?」
和泉の首筋にキスをしながら、背後から賢の手が再びTシャツの中に入る。
大きな賢の手が和泉の胸を掴むと、和泉の身体がぴくんと動いた。
賢の手が肌をまさぐるのが気持ちいい。
唇が肌を這うのに甘い声が出そうになる。
久しく誰かとこんな風に触れあっていなかった和泉の身体は賢に敏感に反応する。
「ね、和泉、そうしましょう。賢さんの気持ちはありがたいけど、こんな状態で和泉を本家に入れるのはお母さん心配なの。一生、加寿子様の事で和泉が責められるなんて耐えられないわ。ね、お願いだから、もっと普通の人と恋愛して結婚してちょうだい」
電話の母親の言葉が賢にも聞こえたのか、和泉を抱きしめる賢の手に力が入った。
そして電話を聞いている反対側の耳元で賢は、
「駄目だ。和泉は俺のだ。誰にも渡さねえ」
と囁いてから和泉の耳たぶを強く噛んだ。
「あ……」
と和泉が思わず声を上げたので、
「和泉? どうかしたの?」
と母親が不審そうな声で言った。
「う、ううん、何でも……ない」
「和泉、どこにも行かないって言えよ」
と賢が耳元でまた囁いた。
「俺の側にいるって言えよ」
「……ま、待って……」
賢の手が唇が和泉を責める。
「和泉?! どうしたの?」
間に母親の甲高い声が耳に突き刺さる。
「お、お母さん、こっちへ来るなら気をつけて……」
と和泉はようやくそれだけを言った。
「ええ、じゃあね」
母親は機嫌良く電話を切った。
電話が切れると和泉は賢の腕をふりほどこうとした。
「賢ちゃん……お母さんが来るわ。今日はもう駄目」
「俺が和泉に近寄らないように見張りに来るのか」
「賢ちゃん、そんな言い方……」
「どうして行かないって言わないんだ。和泉が言えないんだったら、俺が話をつける」
「今はお母さんもショック受けてるからあんな事を言うだけよ。落ち着いたらちゃんと話をするわ。だから……今日はもう帰った方がいいわ。お願い」
しばらくの沈黙の後、賢は和泉の身体から手を離した。
乱暴に立ち上がると、ぷいっと玄関の方へ歩いて行く。
「賢ちゃん!」
賢がドアを開ける前に振り返り、和泉の身体を抱き寄せて胸元に強いキスをした。
「ま、賢ちゃん……」
それははっきりとした濃い痣になって和泉の胸に残った。
和泉が自分の物だと賢がつけた刻印だった。




