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土御門ラヴァーズ  作者: 猫又
第三章

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葬儀の日

 土御門加寿子、靜香姉妹の葬儀は土御門神道会館で厳かに行われた。

 喪主は当主である雄一、三兄弟も神妙な顔で葬儀に参列した。


 知らせを聞いた和泉の両親も夜行バスで飛んできたが、話を聞いて真っ青になった。

 もちろん和泉の身体を心配する気持ちが一番である。

 だが先代の加寿子大伯母の怒りに触れ、しかもそれが元で賢と加寿子の対立。

 そして加寿子が命を落とした、という事実。

 さらに和泉の母親が最初に言った言葉は、

「和泉、そんなに賢さんの事が好きだったの? 大伯母様の反対を押し切るほど?」

 だった。

「……好きよ」

 と和泉は答えたが母親は、

「じゃあ、本家にお嫁入りする覚悟があるの?」

「え」

「賢さんは次期の御当主よ。そろそろご結婚の話が出るわ。賢さんが加寿子伯母様を敵に回しても和泉を守ってくださったのなら、そういうつもりでしょう。でも和泉は賢さんと結婚というのがどんな事か分かってるの? その覚悟があって、おつきあいを始めたの? それに……今までならともかく、加寿子伯母様がこんな風になってしまって、あなたの立場はよくないわ。雄一さんも朝子さんも、近い親族の方も、きっと賛成はしない。それどころか加寿子伯母様が亡くなったのはきっと和泉のせいだと思うわ」

「それは……そうだと思うけど」

 和泉はうつむいた。

 加寿子を死なせたのは自分のせいだ、と思っていた。

 赤狼を死なせたのも、加奈子を死なせたのも、全部、自分のせいだ。

 

「和泉、お母さん達の所に帰って来なさい」

「え? でも、東北のおじさんのとこじゃまた……」

「お母さん達ね、もうおじさんの所を出て、よそへ移る事にしたのよ」

「どこへ?」

「四国よ。ね、お母さん達と一緒に行きましょう。賢さんはいい人だと思うわ。次期の御当主としても立派にやってのけるでしょう。でも……例え、賢さんが守ってくださっても、きっと本家での生活はつらいと思うわ。お母さんは和泉が苦労すると分かった今は賢さんとの交際は反対だわ。土御門を捨てても、和泉の幸せの方が大事。苦労はさせたくないわ」


 母親の言葉を考えながら、和泉も葬儀に参列した。

 盛大な葬儀で、何百人もの弔問客が訪れていた。

 和泉はその弔問客に紛れて目立たないようにしていた。

 大勢の人が加寿子を慕って泣いていた。

 美登里もその家族も目を真っ赤にしていた。

 喪主である雄一も震える声で挨拶をし、朝子も始終うつむいていた。

 思う事はどうしてこんな事に、という事だけだった。

 和泉はずっとそればかりを考えていた。

 どうして赤狼は死んだのか、どうして加寿子はあんなに自分を憎んだのか、どうしてどちらかが死ぬまでやり合わなければならなかったのか。

 玉串奉奠の順番が来て、和泉は前に進んだ。

 合同の葬儀であるので棺桶が二つ並んであった。

 

 これは妄想だ。

 和泉の思考回路があの戦いの夜から正常に戻っていないのだ。

 何故なら、棺の蓋が開いて白い着物を着た加寿子がこちらを睨んでいる。

 睨みながら起き上がってくる。

 若くも美しくもなく、しわくちゃの血の気のない顔だった。

 だが、酷く和泉を恨んでいるような目だ。

 和泉は二、三歩、後ろへ下がった。

 そして身体中から力が抜けて、そのまま倒れた。

 床に身体が崩れ落ちる前に、「和泉!」という声を聞いたような気がした。



「和泉を連れて行きます」

 と和泉の母親が言った。

 葬儀の全てが終わり、弔問客もいなくなった夕刻だった。

 和泉は倒れて本家の屋敷へ運ばれ、布団に寝かされたままだ。

 和泉の両親は彼女が気がつくのを待っていた。

 リビングルームで雄一と朝子が一息つき、賢も弟達もその場にいた。

「本当にご迷惑ばかりおかけして」

 と和泉の母親が言ったが、暗に、ここには置いていけないと言っているようだった。

「喜美ちゃん」

「話は和泉から聞きました。加寿子伯母様の事も……和泉のせいかもしれませんけど、和泉を責めるのはどうぞお許しください」

「和泉ちゃんのせいだなんて思っていないわ」

 と朝子が言った。

「喜美子さん、私達は和泉ちゃんを責めるつもりはないし、そもそも和泉ちゃんに詫びなければならないのはこちらの方だ。私の母親が迷ったせいで」

 と雄一が言った。

 和泉の母親は酷く疲れたような顔で首を振った。

「和泉には……小さい頃からあまり土御門の事は教えないようにしてきました。いつかはよそへ嫁に行って土御門とは無縁になると思ってましたし」

「でも、おばさん。和泉ちゃん、見鬼の才能が開いたんだよ」

 と仁が言った。

「見鬼の才能ですか」

「そう、しかも再の見鬼。凄かったよ。俺ら三人の霊能力を完全再生したんだ」

 和泉の母親はそれに対して何の感動もなかった。

「そうですか」

 と言っただけだった。

「これから精神修養の修行をすればもっと……」

「いいえ、和泉は連れて行きます!」 

 語気を強めて和泉の母親が言った。

「もう二度と本家へは関わらせませんから、お許し下さい」

「待って下さい」

 と言ったのは賢だった。

「和泉と結婚したいと思ってます。それを許してはもらえませんか」

 和泉の母親は賢を見て、

「賢さん……和泉には無理です。あの子はそんなに強くないんです」

 と答えた。


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