表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
土御門ラヴァーズ  作者: 猫又
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/107

最終決戦3 金の闘鬼

 鬼が手を振った、それだけで巨大な黒狐の動きが止まった。

 闘鬼はにやにやとして、片手で黒狐を止めている。

 そして振り返った。

「さあ、若よ」

 と言って左手を賢の方へ差し出した。

 賢はふらふらと闘鬼に近づいた。

 差し出された鬼の左手に自分の右手を重ねる。

「やめろ! 賢兄! やめてくれ!」

 と仁が叫んだ。

 空中では傷ついた式神達が悲しそうな顔で賢を見ている。

 金の闘鬼が出てきたからには、もう誰も何も言えなかった。

 加寿子でさえ、自分の黒狐を動かそうと念を送っているがびくともしない闘鬼に唇を噛んでいる。


 賢の右手が闘鬼の左手に重なった瞬間から、闘鬼は賢を喰らい始めた。

 賢の手がぶすぶすと闘鬼の手の中に入っていく。

 手の平が、手首が、腕が、闘鬼に喰われていく。

  

 このまま身体全体が闘鬼に吸収されて、喰われてしまうのだ。

 賢に許されるのは意識までが闘鬼に乗っ取られてしまうまでのわずかな時間。

 その時間だけ闘鬼の力を借りる事が出来る。

 闘鬼の力があれば、そのわずかな時間でも加寿子と対決する事は可能だろう。

 加寿子に勝利する事も。

 だが、その後に全ての意識が闘鬼に乗っ取られる。

 それは賢の完全な死、である。 


「やめろ! やめてくれ! 闘鬼! 賢兄を喰らうのはやめてくれ! 俺を……俺を代わりに喰ってもいいから! 賢兄はやめてくれ!」

 と叫んだのは陸だった。

 だが、闘鬼は、

「貴様など何人食っても腹の足しにならん」

 と冷たく答えた。

「そんな……」

「陸、悪いな……全ては俺のわがままからだ。決着は自分で……つける」

 肩の辺りまで闘鬼に吸収された賢が少しだけ笑った。



 闘鬼は特別な式神だった。

 闘鬼だけは主人に飼われていない、主の霊能力を滋養としない存在だった。

 賢の式神をしているのは、ただの契約である。

 最初に闘鬼と契約をしたのが、誰だったのか、土御門の本家の文献にさえもう残っていない。何故、闘鬼が人間と契約したのかももう誰も知らない。

 二千年も生きているという闘鬼を使えたのは、先祖安倍家でも霊能力の高いわずかな人間だけだったという。

 そして土御門では口伝で代々の当主には十二番目に闘鬼が式神となる、という事だけが伝わっている。だが、実際には闘鬼が姿を現さない時代の方が多かった。

 気まぐれな鬼はその時代の土御門の当主が気に入らないと何百年でも姿を見せない、と言う。

 だから闘鬼を式神として使えるのは滅多になく、だが、使える時には自らの命を賭して使わなければならない。

 実際、賢の父親である現当主の雄一には姿を現さなかった。先代の加寿子も闘鬼を噂でしか知らない。

 賢の前に姿を現したのは、まだ賢が子供の頃である。次代と決まっていたものの、この先どう成長するかも分からない子供の時にすでに闘鬼が式神となった。

 これが賢が土御門で神童とされる理由でもある。 

 闘鬼が姿を現すという事は代々の当主の中では名誉な事であるが、使わなければ意味がない。そして使うとは、今、賢がしようといる事である。

 自らの命を餌にして、闘鬼を使役しなければならないのだ。



 空中で式神達がもがいている。主である賢を助けたいが、黒狐同様、ぴくりとも動けない。その隙に攻撃をしたい加寿子も同様である。

 賢の式神として存在しているのは知っていたが、加寿子は土御門家でも最高機密の闘鬼を見たのは初めてだった。

 もの凄い妖力を発しているのは感じる。どれだけ霊能力を保持していてもたかが人間である加寿子や賢にはとうてい適わない存在であるというのも理解した。

 だが加寿子はそれでよかった。満足だった。

 賢が死に、闘鬼が自分を滅するだろう。

 土御門は弟が継ぎ、和泉の血は土御門に入らない。

 それだけで良かった。

 自分を袖にしたあの男の孫など認めない。

 私は土御門で一番、能力が高く、美しい。

 だが、もうあの男がどんな顔だったのかも思い出せない。

 ただ憎しみだけが加寿子を支配していた。



「賢兄……」

 仁が泣きながら賢の名前を呼んだ。

「じ、仁、次はお前が……土御門をたの……頼む……責務を全う出来なかった俺を……ゆ、許せ」

 と賢が言った。

「賢兄!」

 陸が賢にすがりつき、その身体を引っ張った。

 だがすでに半分ほどは闘鬼に同化している身体はびくともしなかった。

「賢兄……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ