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土御門ラヴァーズ  作者: 猫又
第三章

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最終決戦2 金の闘鬼

 二匹の黒い狐が加寿子の前に飛び出したが、一匹は頭を飛ばされ、一匹は腹に大きな穴が開いて、落下していった。

「ふん、そんなものなの?」

 次の瞬間には加寿子の操る狐軍が一斉に賢に襲いかかったが、青帝の大きな尾がそれらをはじき飛ばした。茶蜘蛛が加寿子に勢いよく糸を吐いたが、加寿子の手から放たれた細い鋭い閃光がそれを断ち切った。

 すかさず白虎が加寿子に牙を剥いて襲いかかったが、加寿子に見つめられただけで白虎の動きが止まった。痺れたように身体が動かない。

「グギギ」

 と白虎が呻いた。

「銀猫、私を敵に回すとはいい度胸ね」

 と加寿子が言った。

 白虎の中の銀猫の気配がたじろいだ。

「お前は私に逆らえない。そういう風に私が育てた。賢の懐にいても、お前は私の僕なの」

「グ……」

「お前はもう動けない。お前が動けないから、黄虎も動けない。ほうら、もう二匹脱落。橙狐もいない。生意気な狼もいない。水蛇も今ではただの蛇。動けるのは? 青帝、朱雀、紫亀、茶蜘蛛、緑鼬? 年寄りばかりじゃない。ほほほほ」

 白虎はぴくりとも動けない。空中に固まったまま、止まっている。

「白虎!」

 と賢が叫んだが、白虎は悲しそうな瞳を賢に向けるだけだった。

「ガウ!」

 と唸って緑鼬が加寿子へ飛びかかった。

 同時に朱雀が紅蓮の炎を吐き出す。

「ほほほ」

 加寿子が笑いながら手を振り上げた。

 閃光が生まれて、流れ星のように勢いよく式神達の上へ降り注いだ。

「ギャーーーーーーーーーーー」

 と悲鳴が上がり、緑鼬の身体が炎に包まれた。

 朱雀も青帝も茶蜘蛛も紫亀も一瞬でその身体を焼かれ、絶叫を上げた。

 

 賢もただ眺めていただけではない。

 閃光が降り注いだと同時に加寿子に向かい、攻撃を仕掛けた。だが全ての波動が跳ね返され、賢自身の身体を真っ赤な溶岩のような激流が襲った。  

「賢兄!」

 と陸が叫んだ。 

「駄目だ、式を操るだけで精一杯だ! 賢兄、全然、回復できてない! 八神! 賢兄を護れ!」

 仁が再び八神を呼んだ。 

「和泉ちゃんの能力でも駄目だったって事? 水蛇を再生したじゃん!」

「それは……分からない。和泉ちゃんの能力も開花したばかりだから、使いこなせてないんだ。急に賢兄を回復しろって言われても無理な話だったんだ」

 八神が現れて賢の前に立った。

 銃を構えて加寿子へ射撃を始めたが、疲れ切った仁から力が送られない。

 加寿子へ攻撃どころか、すかさず襲ってくる狐を防ぐ事も危うい。

 

 賢は膝をついて大きく息をした。

「やはり、駄目か」とつぶやいてから、頭上の加寿子を見上げた。

 賢の身体中の傷から血が流れ出ている。

 ふさがっていた傷が衝撃で開き、激痛が賢を襲う。

 痛みの為に精神の集中が出来ない。

 手にも足にも力が入らず、パワーをひねり出す事も難しい。

 攻撃の技を出す力を自分で感じられないのだ。

 賢の身体を傷つける為の加寿子の作戦が見事だった、と言う他はなかった。


「しょうが……ねえな……闘鬼……闘鬼」

 と賢がつぶやいた。


 ふいに雪が止んだ。

 加寿子がちらっと周囲を見渡す。

 黒い狐がぐるるると空へ向けて威嚇した。


「やはり呼んだな? 若よ」

 

 大きな大きな体格の男だった。

 筋肉隆々の逞しい体躯、長い手足。

 黒髪に、涼しげな瞳。

 冷酷そうな薄い唇の両端からにゅっと牙が出ている。

 頭の上には二本の長く鋭い角。

 身体全体が金色に光る鬼、だった。


 金色の鬼が空から下りてくる。

 その為に暴風雨は止む。雷も遠慮する。夜は急いで明けようとする。

 自然をも味方につけている鬼は賢の前に下りてきて、笑った。


「やはり無理か。強いな、お前のばあさんは」

 と十二番目の式神、金の闘鬼が言った。

「……」

 賢は何か迷っているような表情をしている。


「賢兄! 駄目だ! それは駄目だ!」

 と陸が言った。涙声になっている。


「しょうがねえだろ、もうこれしか手がない。闘鬼なら……勝てる」

 賢は顔を上げて、闘鬼を見た。

 金色の鬼は素晴らしく不敵な笑みを浮かべている。

 久しぶりの戦いに舌なめずりしているようだ。

 逆に加寿子の緊張感が高まる。ぽつぽつと黒い狐が数を増していく。

「駄目だ! 賢兄! 闘鬼の力を借りたら、賢兄は闘鬼に食われてしまうんだぞ!」

 仁が叫んだ。

「他に選択の余地がないだろ、それとも、俺に和泉を見殺しにしろって言ってるのか?」 と賢が言った。

「賢兄……」

「仁、陸、後の事は頼む。和泉の事もな。あんまり、泣かないように言ってくれ」

 そう言ってから、賢はゆっくりと立ち上がった。


「いい覚悟だ、若よ。お前の思う通りにあのばあさん討ち取ってやろう」

 と言って闘鬼がにやりと笑ってから加寿子を振り返った。


 黒い狐が一斉に闘鬼に襲いかかった。

 何千といる黒い狐が大群となり、闘鬼の方へ飛びかかりながら大きな固まりとなり、整列し、秩序よく並び、やがてそれは巨大な一匹の黒狐となった。


「笑止!」

 闘鬼が片手を振った。

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