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土御門ラヴァーズ  作者: 猫又
第三章

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最終決戦1

最終決戦です。長かったですね。

いよいよ第一部が終わると思うと寂しいです……(T_T)


え? 第一部って…←まだ続ける気?

 どうしたらこれだけの狐を操れるのだろう、と思うほどの数だった。

 雪深い山奥の別荘地に夜が訪れようとしていた。

 外灯はほとんどなく、建物からこぼれる光だけが頼りだった。

 暗闇の中でも黒い狐は次々と突撃してくる。

 仁の式神、八神の小隊も休む事無く、思念の銃弾で狐をシャットアウトし続けているが、相手の勢いは衰える事がない。八神は侵入を防ぐので精一杯で、黒い狐と戦うのは陸の赤蜘蛛だけだった。鬼女紅葉と犬神は回復が出来ておらず、姿が見えない。

 赤蜘蛛は頑張っていたが、黒い狐の数に子蜘蛛達の勢いが負けてきていた。

 黒い狐と赤い子蜘蛛がお互いに絡み、噛みつき合っている。その横から別の狐が子蜘蛛の足を食いちぎるのだ。

 その戦いの頂点に振り袖姿の加寿子がいた。

 黒い空に加寿子が浮かんでいる。

 振り袖の裾が風雪になびいている。

 その顔は若く美しかったが、狂気を帯びて不気味な笑みを浮かべていた。

 仁と陸は屋根の上にいた。

 空は凍てつくような黒。空気は何もかもを切り裂くような冷たさ。

 だが、二人ともに顔に汗をかいていた。

 脂汗が滲み、肌が小刻みに震えている。

 攻防に全能力を絞り出していた。

 二人とも、汗が出るほどに必死だった。

 意識の糸が切れてしまいそうで、それを保つだけで精一杯だった。

 

「可愛い孫達。そろそろ諦めなさいな。お前達では遊び相手にもならないわ」

 と加寿子が言った。

「……」

「私に従うなら命だけは助けてあげるわ。今私に逆らっても、賢が私に破れた時点でお前達もおしまいなのだから」

「ま、賢兄は……負けない」

 と陸が言った。

「そうかしら。あの怪我では思うように能力も操れないでしょうに。それに残りカスの能力で、私に挑もうなんて身の程知らずもいいところ」

 ほっほっほっと甲高い声で加寿子が笑った。 

「……」

 仁と陸が顔を見合わせた。不安な思いが胸をよぎる。

 加寿子は確かに強かった。

 二人でも防ぐのが精一杯だ。とても攻撃に転ずる事が出来ない。

 五分五分ではなく、圧されているのも確かだ。

 赤蜘蛛は疲れてきていた。そして八神達も。

 何匹もの子蜘蛛が黒い狐に食い殺されていくのを陸は眺めているしか出来ない。

 威力の失せた銃弾をはね除け、屋根の上まで上がってきた狐がにやりと笑う。

 一匹がマシンガンを構えた式神の喉を食らいついた。

「ジンサマ……」

 襲われた式神が仁の名を呼び、そしてゆらっと揺らめいて消えた。

「アアアアアアア!」

 と叫びが上がり、赤蜘蛛の足にも黒い狐が三匹噛みついていた。

 狐の牙は鋭く、がっしりと赤蜘蛛の足に食らいついている。

 赤蜘蛛はそこから動けず、それに合わせて子蜘蛛達の動きも次第に悪くなる。

 丸くふくらんだ腹を食い破られ、悲しそうな悲鳴を上げて子蜘蛛達が落ちていく。 


 だが、そこで、 

「母ちゃん!」

 どすーん、どすーんと、大きな音をたてて茶蜘蛛が現れた。

 三階建ての別荘よりも大きく巨大化したチャッキーが突如現れた。

「あんたぁ……」

 茶蜘蛛は四本の足を振り上げて、黒い狐達を攻撃した。

 まるで鋭いカマを振り回すように、するどく尖った足の先で赤蜘蛛の足に噛みついている狐の腹を串刺しにした。

「ご苦労だったな。八神、赤蜘蛛」

 と声がしたので、その場にいる者が皆安堵した。

「賢兄ぃ」

「すまん、仁、陸。もういいぞ、休んでくれ」

 その瞬間に赤蜘蛛と子蜘蛛達、八神が消えたが黒い狐に攻撃の手は休まなかった。

 青帝が建物に巻き付き、護っている。

 朱雀が黒い空に現れ紅蓮の炎を吐き出すと、何十匹かの黒い狐が一瞬で消えた。

 白虎が暴風雪の中を飛び回り、景色を切り裂くようにその太い腕で黒い狐を叩き落とす。 紫亀、緑鼬が賢の側に控えている。

 もちろん巨大化した茶蜘蛛は怒り心頭で、その長い足を存分にふるって暴れている。

 茶蜘蛛の吐き出す、強靱な糸が黒い狐達を一網打尽に捕らえていく。 


「すげえ、賢兄、全開じゃん」

 と陸が言った。

「和泉ちゃんの再の能力で回復したのか?」

 と仁が聞くと、

「ああ」

と賢がうなずいたので、二人はほっとした。

「そうか……よかった」

「二人とも、悪いな。戦いに巻き込んで。すまないが……ばあさんには二度と会えないと思ってくれ」

「どうして、こんな事に……」 

 という陸の問いには答えず、賢は加寿子の方を睨んでいた。

 

 ぶわっと賢の闘気が上がった。

 だが、そこで仁は一瞬の不安に襲われた。

 賢は全開で戦う姿勢を見せている。

 いつものように一瞬で蹴散らせる悪霊相手ならばそれでもいいが、あの加寿子相手に

あまりにも急ぎ過ぎているような気がするのだ。


「あんたの事はもうばあさんとも思わない。だからこれはただの悪霊退治だ」

 と賢が言った。

「お前達に、その師匠である父親に、陰陽師としての手ほどきをしてやったのはこの私。賢、お前はなかなかの才覚がある。だが、雄一も、仁も、陸も、私の小指のほども才能がなかった。私はお前達に教えるのが退屈で仕方がなかった」

 加寿子の言葉は仁と陸を酷く傷つけた。

 黒い狐に噛まれるよりも二人の心が痛かった。 

 仁と陸は屋根の上に座ったままうつむいた。

「仁、陸、悪霊の戯れ言だ、気にする事はない。一族から奪った能力で若返って、それがそんなに嬉しいのか? 今のあんたは確かに強いかもしれないが、あんたに付き従う者は土御門にはいない。寂しい老後になったな」

 と賢が答えた。

「土御門は私に平伏すわ。お前も含めた全ての者がね。付き従うのではなく、従わせるのよ。この私にね!」

「一度でも考えた事があるのか? そんな性格だから竜之介さんに振られたってな!」

 賢の言葉の後に、鋭い閃光と雷鳴が響き渡った。

 庭の樹木が縦に切り裂かれ、真っ二つになっている。

 加寿子の顔は般若のように醜く歪んでいる。

「あんたの気持ちは分かる。多分、俺だけが理解出来る。だが、同情はしない。あんたは弱い人間だった、それだけだ!」

 賢の手から圧縮された闘気が放たれ、加寿子に向かって一直線に飛んだ。


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