蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛
え~、今回のお話は蜘蛛が出てきますので、嫌いな方はスルーした方がよろしいかと<(_ _)>そして、最後の方だけ読んでいただければ、と思います。
「ミズキ!」
と誰かの声がした。
和泉は自分の手の中の大きな蛇の頭部を見ながら悲鳴を上げ続けている。
悲鳴を上げているという意識もないのかもしれない。
賢が和泉の頭を抱き寄せて、
「和泉、落ち着け! 和泉!」
と言ってから和泉の頬を叩くとはっとしたように賢を見た。
「ま、賢ちゃん……どう、どうしよう」
「そのまま水蛇の頭を抱いていてやってくれないか」
と賢が言った。
「お願いでやんす! あっしからも! どうか、どうか、ミズキに死ぬなと願ってやっておくんなさい!」
と茶蜘蛛が近寄って来てそう言った。足が一本折れてしまっているのでいつものように素早さがなく、かくんかくんという風に近寄ってくる。
「死なないで、お願い」
と言って和泉が水蛇の頭をぎゅっと抱きしめてやった。
水蛇の目からすーっと涙がこぼれた。
「あんたぁ!!」
と威勢のいい声が頭上から降ってきた。
賢がはっと見上げてから苦笑した。
黒い狐が飛び込んでくる大きな天井の穴から何者かが飛び降りてきた。
それは大きな大きな赤い蜘蛛だった。長い足、つやつやとした胴体。
強靱な長い糸でぶら下がり、つーっと賢の前まで下りてきて、足の折れた茶蜘蛛を見て、
「あんた……なんて姿に!」
と叫んだ。
「お前、来てくれたのか!」
と茶蜘蛛が言った。
「あんたの危険にあたしが来ないでどうするのさ! ああ、可哀相に、色男が台無しだよ! この狐どもがやったのかい!? 許せないね! 丁度いい、坊や達はお腹が空いてるんだよ!」
赤い蜘蛛はそう叫ぶと、またつーっと天井近くまで上って行った。
そしてぷーーーーーーーーーーっと腹の辺りの白い袋をふくらませた。
「さあ、行っておいで、坊やたち。おっとさんの仇を取るがいい!!!!」
そう赤い蜘蛛が叫んだ瞬間に、腹の袋が破れ、何百という子蜘蛛が飛び散った。
何百という子蜘蛛たちは、次々に黒い狐に飛びかかって、狐と同じくらいまで身体を大きくした。そして獰猛な子蜘蛛たちはいっせいに黒い狐を補食しだした。
さすがの賢も顔を引きつらせてその様子を見ていた。
和泉が見たら、多分、気を失うであろうような光景だった。
だが、和泉はぎゅっと水蛇の頭を抱いて、目を閉じていた。
子蜘蛛と狐の戦いはしばらく続いたが、腹を空かせた獰猛な蜘蛛の攻撃にさすがの狐も数が減り始めた。
やがて満腹になった子蜘蛛たちが母蜘蛛の腹に帰るころにはあらかたの狐の姿が消えていた。
「賢兄!」
そこへ飛び込んで来たのは仁と陸だった。
「よう」
と賢が手を上げた。
「だ、大丈夫!?」
「ああ、助かったよ。よく分かったな」
「うん、昨日から赤蜘蛛が異様に興奮してさ-、チャッキーを助けに行くってきかないんだ。で、急いで来たら、こうなってた。やっぱ蜘蛛は予知能力が高いね」
「和泉ちゃんも怪我してるの?」
と陸が和泉の方へ振り返った。
賢が、しっと指を立てた。
和泉はやはり目を閉じたまま水蛇を抱いたままだったが、和泉の目から涙がこぼれ、それが水蛇の頭部へふりかかった瞬間、そこから色が変わった。
しゅわ~という優しげな光がさし、水蛇を包んだ。
まず、ちぎれた身体の方が溶けて消えていった。
そして次に頭部の方も徐々に消え始めた。
「ま、賢ちゃん……どうしよう、消えちゃう…」
和泉の手の中の水蛇の頭部が完全に消えて、小さな光になった。
その光も徐々に消えつつある。
「大丈夫だ。見てみろ」
光が完全に消えた和泉の手の中に、小さいミミズほどの長さの水色の蛇がいた。
小さい水色の蛇は鎌首をもたげ、きょろきょろと辺りを見るような素振りをした。
「あ」
「すげえ、再生した。和泉ちゃんの再の能力、すげえな」
と仁が言った。
「再の能力?」
と和泉が賢に聞き返した。
「そうだ。お前は再の見鬼だから」
と賢が言った。
「再の見鬼?」
と和泉が言って顔を上げた時、
「ああ、よかったでやんす」
と言う茶蜘蛛と、その横にするすると下りてきた巨大な赤蜘蛛。
かろうじて和泉は悲鳴を飲み込んだが、そのまま気を失ってしまった。




