また俺たちをいじめに来たのか!
「まだ何か持ってるんだろ?」
「ジャンプしてみろよ」
いつの時代のカツアゲだよ。
現場では小学生くらいの男の子が不良4人に取り囲まれていた。
僕たちが到着した瞬間、服の隙間から飴が1個地面に落ちる。
「やっぱりまだ持ってんじゃねぇか」
「うひょー、ペロペロキャンディ発見!」
高校生にもなってペロペロキャンディでそこまで喜ぶか。
「ん? なんだあれ」
「駄菓子……みたいね」
不良共の中心にあったのはでっかいポリ袋。その中には大量の駄菓子が詰め込まれていた。
ざっと2千円分といったところだろうか、随分と大人買いだ。これのせいで不良共に目を付けられたんだろう。
……いやだから高校生にもなって駄菓子に目を眩ませるなよ。
「あーもう、見てらんないわ」
「え、ちょっと――」
イライラが最高潮に達したのか、小走りで奴らの方へと向かっていく緋奈ちゃん。
「あんたたち、いい加減にしなさい!」
「あ? 誰だてめぇ」
「こいつあの時の女ッスよ!」
「なんでもやのとこの女か」
「また俺たちをいじめに来たのか!」
いや、先に悪事を働いたのはお前らだろうに。
呆れ顔で突っ立っているだけの僕をよそに、話はどんどん進んでいく。
「てめぇ超能力なんか使って卑怯なんだよ」
「喧嘩は拳で語るもんだろ」
「もう説教は聞き飽きたぜ嬢ちゃん」
あまり挑発するのはやめたほうが……ヒッ!? これ緋奈ちゃん本気で怒ってるぞ……。
同じ超能力者である僕には分かる。彼女の背後で錬られた「iE」の膨大さが。
「そうね」
「あ?」
「なんだ?」
「超能力を使うのは確かに卑怯よね」
何をする気だ。もしかしてこの子って超能力を使わなくても実は喧嘩が強かったり――
「今日の相手はこいつだから。思う存分に殴り合うと良いわ」
緋奈ちゃんの指差した先に居たのは……勿論、僕だった。
「ほーう、今日はお前が相手か」
拳をゴキュリと鳴らしながら近づいてくる不良B。
「ふぁーあ。この程度の奴に俺が出るまでもないでしょ」
ずっと気怠そうにしている金髪ピアスの不良C。
「あんな奴、1撃でやっちゃってくださいよ!!」
スネ夫みたいな不良D。
「絶対許さねぇ……」
そして、緋奈ちゃんと同じく闘志に燃えるおそらくボスと思しき不良A。
……え、こいつら同時に僕が相手するの? ムリムリ。
僕は緋奈ちゃんに向かって全力で拒否のボディランゲージを試みるも、どうやらこの子に僕の意見を聞き入れる気は更々ないらしい。僕の方をチラリとも見てくれない。
僕の方を見ずに、その真っ赤な唇が動く。
『わ・た・し・に・ま・か・せ・て』
まず最初に飛びかかってきたのは不良B。
「オラァ!」
僕はそいつの拳を腰を落として避ける。
「何!?」
そしてそのまま頭突き。
「ガッ」
頭突きが顎を直撃したことでそいつはそのまま倒れてしまう。
因みに、僕は何もしていない。体が勝手に動いたのだ。
次はCとDが僕を挟み撃ちにしようと迫ってくる。
Dはまだしも、Cは指輪をジャラジャラ嵌めていて1発でも当たると痛そうだ。
「よくも兄さんを!」
「俺の出番が来るなんてな」
どうやらDが僕を捕まえて、そこにCが攻撃を加える腹積もりらしい。
「おりゃあああ」
僕に向かって真っ直ぐ突撃してきたDだが、さっきの動きを見ていなかったのだろうか。馬鹿なのか。
そう簡単に捕まるはずがないだろうに。
「よっと」
僕はDを勢いそのままCに向かってヒョイと投げ飛ばした。
「ぎょえええええ!」
「おいコラ邪魔すんな馬鹿」
「グボァ!?」
Cの拳を食らって吹き飛ばされるD。……あれは痛そうだ。
おっと眺めている暇はないようだ。僕の体はCに向かって走り出す。そして繰り出すのは回し蹴り。
「その程度――ギャンッ!」
Cは咄嗟に受け身を取るも、構わず僕の右足は奴を蹴り飛ばした。
痛みは感じないけど……大丈夫かな僕の足。実は今ので折れてたりしない?
「てめぇ……」
最後に残ったのはA。1番体格のいい男だ。今までの感じを見るに余裕そうだが……。
「お、覚えてやがれ!」
「ちょ、ま、ここで逃げるのかよ」
なんてタマの小さい男だ。けど、逃げた先にはあの子が――
「馬鹿ね」
そう。緋奈ちゃんがいるのだ。いつ移動したのかは僕にも分からなかったけど、気づいたらAの逃げた先に居た。
「あふんッ!?」
奴は手刀1発でのされてしまった。
その後、気絶したAを引きずって僕の方へと近づいてくる緋奈ちゃん。
「カッコ良かったわよ、翔。私の傀儡に相応しい働きだったわ」
この子はそう言って、僕に向かって妖艶に微笑んだ。
そうなのだ、今の喧嘩で僕は何もしていない。
喧嘩慣れしているように精一杯演技していたが、その実、僕はこの子の操り人形であった。




