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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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アダージオ体験 レッスンの後で

レッスンが終わりました

「皆さん、お疲れさまでした」

その声と共に、拍手が沸き起こった。


いずみ先生の大人のバレエクラス。

いつもなら、稽古の後は先生に感謝をこめて挨拶はするがそれだけだ。

こんなに拍手に包まれるスタジオ、真理(エリゼ)にとってはオープンクラス以来だろうか。


その後、稽古後のスタジオで生徒たちは康太先生や大河と一言二言会話をし、徐々に更衣室へと引き上げて行った。


「今日は、ありがとうございました」

真理(エリゼ)は逆に大河から礼を言われた。


そう言えば、急な外出で荷物を持ってきてあげたんだった。


大河のロッカーを漁って、荷物を取り出し慌てて会社を出たのが随分と前の事の様だ。

真理(エリゼ)は笑顔で、大河に向かうと、


「こちらこそ。今日は私たちのお相手をありがとう。頼りになるじゃない」

と声をかける。


そして、

「康太先生、お世話になりました。娘の事もよろしくお願いします」

と続ける真理(エリゼ)。


「真理さん、今日はお疲れ様でした。真理さんの才能、しかと見せていただきましたよ」

と康太先生が言った。


その言葉に真理(エリゼ)は少々うつむきながら控えめに会釈をして足早に更衣室に向かった。

康太先生がまだ何か言おうとしていたにも関わらず。


「まずい、つい調子に乗ってしまった」

とこころでつぶやくエリゼ。


いくら、「もどき」と言われたとはいえ、初めてのアダージオでリプカが出来る訳がない。

いや、才能あふれる若者なら可能性もなくもないが、なんせ真理だ。


「ピルエットもついついいつもの癖が」

とエリゼ。

エリゼにとっては、いつも通りのアダージオ。

毎日、ごくづ通に稽古している内容だった。

しかしその動きは、真理の身体を使ったとしても他の生徒からは程遠いほどの洗練されたものだったのだ。


「真理ちゃん、流石ね、すごく上手だったじゃない」

とさっそく幸子には話しかけられる真理(エリゼ)。

晴美やあかりも同じく真理(エリゼ)に賛辞を送っている。


しのぶでさえ、

「真理さん、すごく上手でしたね。いつも娘さんのを見ていただけであそこまで出来るようになるなんて」

と少々ピントのズレた誉め言葉を送った。


「娘がレッスン後に家でおさらいをしていたから」

と真理(エリゼ)は言うが。

これは真理の本心ではない言葉を言だ。


舞香が男性パートナーと「組んで」踊るようになるころには、真理は稽古に付き添うこともほぼなく、

保護者公開のリハーサルなどでしかその様子を見ることはなかった。

それに、舞香は家でパドドゥの話はしたものの、おさらいなどはほぼしてはいなかった。

バレエ講師から、家で勝手な自主練はしないように、と言われていたのだ。


「お疲れ様、楽しかったわね」

と言いながら更衣室に入って来たのは真由子だ。


どういうわけか真理(エリゼ)の側に近寄ろうとしない真由子。

先程方続いている真理(エリゼ)への賛辞も聞こえてはいないように振舞っている。


「真由子さんのアドバイスのお陰で助かりました」

そんな真由子に声をかけるしのぶ。


「お陰でって?」

と真由子は腑に落ちない表情で聞く。


「ピルエットの時、手の形の事言っていたじゃないですか。私すっかり忘れていて。

真由子さんもですよね?私はなんとかぶつからなかったけど、真由子さんがなんて言ったらいいのか、

見本?みたいに見せてくれたので思い出しました」

としのぶ。


と、誰もあえて言わなかったことに触れたしのぶ。

稽古前は自信満々で男性と組んで踊ることについて語っていた真由子。それが、納得できる出来栄えではなかったのだろう、誰もがそう思った。

しかも、自分があれだけ「エラそうに」周囲に注意をした手の形。それなのに、大失敗をしたのは他でもない自分自身だったのだ。


「一番気にしてることを」

と真由子は内心、穏やかではないがそれを顔に出すことはしない。

周囲はハラハラしながらも、しのぶの天然的な発言にもこの時ばかりは寛容になれていた。


「よく言ってくれたよ」

と。


「あのね、次の発表会で大人クラスの生徒からも組んで踊る人がいるみたいなの。

今日はその候補を決めるためでもあったようよ」

としのぶの言葉をスルーして言う真由子。


「でもね、今日上手く出来たというよりも、全体のバランスとか身長とかの方が重要みたいなんだけどね」

と続ける真由子。

今日の出来栄えで決まるなら、真由子はかなりの望み薄だ。


「そうなのね、でも私には荷が重いわね」

と幸子が言う。


「まあ、稽古も倍になるから、幸子さんには」

と真由子がいいかけてあえて押し黙る。

年齢の高い幸子には無理だ、そう言いそうになったのだ。


「お稽古もですけれど、お金もかかりますよね。この前だって私だけ少し割り増しでしたもの」

としのぶが口を挟む。


そんな会話が続いている間に、さっさと着替えを済ませてここから立ち去ろう。

真理(エリゼ)はそう思いながら支度を急いでいた。


真理(エリゼ)は話に加わることもせず、そそくさと着替え荷物をまとめると、更衣室を出ようとした。

そんな真理(エリゼ)の背後から、


「真理さんは、お嬢さんも出られるなら、お金がたいへんですよね」

と声がした。

しのぶだった。


「お気遣いありがとう」

それだけ言うと、真理(エリゼ)は挨拶をしてその場を離れた。

すると、ずっとは話に夢中になっていたはずの真由子が後を追ってくるのが見えた。


「真理ちゃん、一緒に帰りましょうよ」

そう言いながら。

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