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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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初めてのアダージオ レッスン開始5

緊張しながらも楽しいお稽古

「あら、なんだか母娘でそっくりね」

と急に背後から声がした。

ちょうど真理(エリゼ)が康太先生にサポートされてピルエットをきれいに回り終えた直後だ。


その声の主は、いずみ先生の妹でここ「あすかバレエスタジオ」主催者でもあるあすか先生だった。

あすか先生は舞香を小さなころから指導してきた。


「私の出番はないようね」

と続けるあすか先生。


普段、大人のバレエクラスには関わらないあすか先生だが、今日のアダージオレッスンではみんなの「お手本」を披露する役割を頼まれていたのだ。


スタジオの外からレッスンの様子を伺っていたあすか先生。

参加している生徒で「お手本」が出来ているではないか。

そう思い、そのまま見守っていたのだが、真理(エリゼ)のピルエットを見て思わず口を挟まずにはいられなくなったようだ。


「舞香も得意だったわよね、ピルエット。なんだか、舞香を見ている様だったわ」

とあすか先生。

その顔はどこか懐かしそうだ。

舞香があすか先生の元を去って、まだそれほどの時間は経っていないのだが。


「舞香ちゃんは今、僕のところでがんばっていますよ」

と笑顔で言うのは康太先生。


「次の発表会には出てくれるのかしら」

と小さな声で言うあすか先生。

何か思うことがあるような含みを持つ言い方だった。


「せっかく来てくれたんだから、模範を見せてあげてよ」

といずみ先生が声をかけた。


あすか先生は、軽く手足をストレッチすると大河をパートナーに、先ほどまで生徒たちがチャレンジしていた、アラベスクからパンシェを始め、誰もがよく知っているパドドゥを披露した。


最後、大河に手を取られてレヴァランスをするあすか先生。

生徒たちは真近で見られたこのパフォーマンスに思わず感嘆の声を上げて拍手を送った。


「さ、素晴らしいお手本に少しでも近付こうね」

といずみ先生。

そこから、ピルエットの練習が再会された。


目の前であすか先生と大河によるピルエットを見たばかりだ。

生徒たちの意識も上がる。


「真由子ちゃん、手を」

といずみ先生の声が飛んだ。

ちょうど、康太先生を相手に真由子がピルエットに挑んでいた時だ。


康太先生のリードもあり、今度は力む過ぎることなくルルベアップをしてパッセのポーズをとる真由子。

そこで、康太先生が真由子のウエストに手を添えて、回転をサポートする。


その時の、真由子の手の形だ。

一人でのピルエットの場合、回転している時は両手を胸の前で丸い形にするのがポピュラーだ。

しかし、男性が後ろでサポートしている時は、その手の形では男性にぶつかってしまのうだ。

なので、少し小さめに両手をまとめる。

事前に、生徒たちにはそう伝えられていたのだが、いざ自分がやってみるというとそこまで気がまわらない。


真由子も一人の時と同じような、大きな丸を作っている。

このまま後ろを向けば、完全に康太先生にその手が当たってしまうだろう。

しかし、いずみ先生の声も真由子には届かないようだ。


回転する真由子の手は思い切り、康太先生の胴体に当たった。

避けることも出来たが、そうするとサポートする手が離れてしまう。

康太先生はそのまま動かずにいた。


しかし、手が当たった真由子の方はそれでバランスが崩れたのか、大きくふらついた。

ポアント立ちの足が床につき、回転もそこで止まる。


「さ、気を取り直してもう一度」

と、そんな真由子に声をかける。


真由子は神妙に馬ずくと、再度康太先生のリードの元ピルエットに挑む。

今度は腕も小さくまとめ、無難にクルリと回転することが出来た。


「これなら完璧だ」

周り終えた真由子に康太先生が言う。

顔を紅潮させて、やっと満足げなほほ笑みを浮かべる真由子。

このレッスンでは初めての笑みだ。


生徒全員がピルエットに挑戦し終えたのを見たいずみ先生。

「さあ、そろそろ最後ね」

と声をかける。


あっという間にレッスン時間も終わりに近づいていた。

最後は、康太先生の発案で、今日体験したうちの一つを披露し最後にパートナーとレヴァランスする、というものだった。


生徒たちは自分のやりたいことを申告し、順番を待った。

最初はしのぶ。

康太先生のリードで、アラベスクからパンシェ、そしてピルエットで締めくくる。

二人でのレヴァランスはまるでパドドゥを踊った後のように息が合っている。


他の生徒たちも、今日の成果を精一杯披露し、その場の皆からそのたびに拍手が沸き起こった。

真由子も相変わらず力が入ってはいるが、失敗することもなくピルエットをやり終えた。


そして、いよいよ真理(エリゼ)の番だ。

「じゃ、真理さんは一通り全部ね」

と康太先生。


真理(エリゼ)も躊躇することなく、アラベスクからパンシェに始まり、プロムナード、そしてピルエット、そのすべてを優雅にこなした。


これで、康太先生とレヴァランス。

と真理(エリゼ)がそう思った時、


康太先生が、

「アラベスクに」

と声をかける。


自然と一番ポディションの基本的なアラベスクのポーズをとる真理(エリゼ)。

すると康太先生は真理(エリゼ)の身体を持ち上げならら、自分に沿わせるように前に倒した。

真理(エリゼ)はごく自然に、両手を広げてポーズをとる。

背中は真理として出来る限り反らせてはいるが。


その後、康太先生は真理(エリゼ)の身体をまっすぐに戻すと、真理(エリゼ)も両足でポアント立ちになりそしてゆっくりとかかとをおろした。

それから、康太先生が真理(エリゼ)の手を取り、お互いにレヴァランス。

これこそ、本当にパドドゥの最後のお辞儀の様だった。


「リプカ、もどきだったけど、真理さんなら出来ると思ったんだ」

と康太先生が言う。


「舞香も得意だったわね、このポーズ」

とあすか先生。


「今日は皆さんとのアダージオ体験、こちらもとても楽しかったです。

また機会がありましたら、ぜひ企画してもらいたいですね」

とレッスンの最後に康太先生が言う。


「そうですね、ぜひまた。まあ、発表会の稽古でお世話になるとは思いますが」

といずみ先生も言う。


その日のアダージオ体験レッスンは、生徒たちもとても有意義な時間を過ごし盛況のうち幕を下ろした。

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