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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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初めてのアダージオ レッスン開始4

アダージオレッスンは続く

「ほんとに、難しいのね」


「簡単にやっているように見えるのに」


「全然、出来なかった」


そんな声でざわめくスタジオ。

康太先生による、アダージオレッスン。

アチチュード、プロムナードを生徒たちが「体験」した。


「見てるのと、実際にやってみるのでは全然違うでしょ?」

といずみ先生も笑いながら言う。


「いかがでしたか?難しいでしょう?」

と康太先生も同様に言う。


「体の軸がぶれないように、引き上げておくことが大切ですよ」

と、康太先生。


「こんなふうに」

そう言いながら、康太先生が真理(エリゼ)を手招きした。


「大河」

と小西大河も呼び寄せる康太先生。

そして、真理(エリゼ)と大河を見本にしながら解説を始めた。


「真理さんはバランス感覚がいいですね」

と康太先生。

そりゃ、エリゼが細心の注意を払って、身体の重心をさぐり軸を作っているからだ。


康太先生の解説付き真理(エリゼ)と大河の実演が終わると、生徒たちがもう一度アチチュード、プロムナードに挑戦をした。


少しふらつきはしたが、しのぶも今度はスムーズでにできた。

そして、


「すごいじゃない、幸子さん」

といずみ先生の声がする。


康太先生のサポートにより挑戦した幸子も、一度も止まることもポアントが落ちることもなく、

ぐるりと一周することが出来た。

他も生徒たちも、先ほどと比べると少しばかり上達しているようだ。


そして、真由子の番になった。

先程は散々だった真由子。

二度目の順番が来るまで、何度もアチチュードのポーズをして重心の位置を確認していた。


「こんどこそ」

そう意気込む真由子。

リベンジのパートナーは大河だ。

その側で、康太先生も付きっ切りだ。


相変わらず、手に力が入る真由子。

大河がリラックスさせるように声をかけるが、身体はこわばったままだ。


そして、アチチュードの形に。

大河の手をぎゅっとつかんでいるのがよくわかるが、なんと片足立ちでポーズをとった。

そのまま、大河がゆっくりと動く。

何度かふらつくが、そのたびに大河がバランスを整えるように手を動かす。

真由子は途中で挫折することなく、アチチュード、プロムナードをすることが出来た。


周りからは拍手が起きた。

真由子もうれしそうに満面の笑みだ。


「大河先生のおかげですぅ」

と少しハイトーンな声で言う真由子。


「真由子ちゃん、さっきより全然いいわよ。形がきれいだわ」

といずみ先生。

元々、手足の長い真由子。

きちんとしたポーズを取れば、それなりに美しいのだ。


「大河くん、サポート上手ね」

と心で思うエリゼ。

先程から、大河は女性がスムーズにそして美しく踊れるように動いている。


講師でもある康太先生ならばわかるが、大河もそんな風に動けるだなんて。

エリゼは感心しながらも意外に感じていた。


「どう、私だって出来るでしょう?」

と心でつぶやきながら真由子がチラリと真理(エリゼ)を見た。

さっきから、真理(エリゼ)だけが、自分の事を絶賛していないのが視界に入っていたのだ。


「妬いてるのかしら」

と真由子。

実際、真理(エリゼ)は大河の事を考えており、真由子の事など眼中にはなかったのだが。


「じゃあ、次、ピルエットいくよ。

組むんだったら、これはやっておかないよね」

と康太先生。


次に生徒たちが挑戦するのは、ピルエット、回転だ。

片脚で立ち、もう一方の脚をパッセの形にしてくるくると回る。

これもバランス感覚がとても大切だ。


上達していくと、2回転、3回転と回れるが、個々の生徒たちは1回転するのがやっと。

それもポアント立ちでとなると、足元がおぼつかず回るどころではない状態だ。


みんな、それぞれ自力でのピルエットを試みる。

ポアントに立ちきれない者、パッセにするのがやっとな者、周囲からはため息が漏れていた。


「そんなに気負わないで。みんなしゃきーん、とパッセで立つことだけを考えて」

と康太先生。


ここでもお手本はしのぶが務めた。

前回の合同発表会では、ピルエットなどは振りに入っていなかったのだが。


康太先生の前に立ち、4番ポディションの足から、さっとパッセの形になるしのぶ。

ポアントにも綺麗に軸に乗れている。

そして、自力でのピルエットのように、手を広げて回転を始める。


すると、康太先生がしのぶのウエストに手を添えて、回転をサポートする。

しのぶは両手を自分の前で小さめの丸い形にした。


康太先生がしのぶのうえすとを、クルリと回すとしのぶはあっという間に2回転をしていた。

そして、そのままパッセの足を静かに下す。


「じゃ、もう一人、誰かにお手本をお願い」

と康太先生。


そう言いながらも、

「真理ちゃん、こっちに」

と真理(エリゼ)を指名する康太先生。


男性サポートのピルエット、エリゼが大好きなパートだ。

元々回転は得意だったが、男性の補助によりまるで飛び立てるように早く回れる。

もうエリゼのの本能がうずいて止まらない。


真理(エリゼ)は、康太先生の前に立つと、そのままポアント立ちするとパドブレを始めた。

トウシューズで細かく刻むように進むパドブレ。

男性サポートがあるピルエットでは助走のように、まずパドブレで重心を整えることが多い。


そして、数歩分パドブレですすむと、すこし大きめに4番のポディションを取る。

これは男性側に、助走が終わったことを知らせるためだ。


それから、ゆっくりとルルベアップし手を広げながらパッセのポーズをとる。

それと同時に、康太先生が支えている真理(エリゼ)のウエストを回転させる。


スルスルスル、っと3回転した真理(エリゼ)。

3回転目で正面に戻ると、パッセのまま両手を広げた。

回転が終わりですよ、と宣言しているように。

そして静かに足を下すと、康太先生と少し離れて小さくレヴァランスをした。


「まるで、練習動画に出てきそうなピルエットだね」

と康太先生。


いずみ先生も大河も、真理(エリゼ)のスムーズな動きに目を見張っていた。

もちろん周囲の生徒たちも絶賛だ。

真由子を除いて。


そんな中、真理(エリゼ)のなかのエリゼは、

「どうしよう、ついつい本領発揮しちゃった。真理にこんなことできるわけないのに」

そう思いながら焦りまくっていたのだった。

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