二度目の面談
いよいよ面談
「ですが、契約者には家族がおりその家族が、契約者本人を必要としているのです」
と語っているのはエリゼ。
そのエリゼの前に、ずらりと並ぶのは天国の門、審査官たち。
その中央にいるのがゲートマスター、エヴァだ。
エリゼの熱弁を怪訝な顔で聞いている審査官をよそにエヴァは満足げな表情だ。
「あの世」に行くか、「この世」に留まるかをかけて真理の望みをかなえようとしているエリゼは挑戦者と呼ばれる。
その挑戦者からの異例な申し出。
これは審査官たちも困惑を隠せない。
「エリゼ、貴女は何を言っているのかわかっているのですか?」
と思わず声をかける担当審査官のリーズル。
「この設定はゲートマスターが最高の状況を熟慮して配置したものよ、それは知っているでしょう?
それを変更しろだなんて」
と小さな声ではあるが、怒りがにじんだ強い語り口で言うリーズル。
真理の身体に憑依する。
それはエヴァの決めたことだ。
真理の本心は残すものの、基本はエリゼが真理のすべてを乗っ取った形をとった。
それも、ゲートマスターの決定だ。
「納得した上ではなかったのかね。周囲から疑われたり、不審に思われたりしないようにするのは、挑戦者の役目ではないか。それを、設置そのものを変えろとは、これまた驚いた提案だ」
とも別の審査官が言う。
今までに、こんな申し立てはなかったようだ。
そのもの、契約者に近しい存在が真理の中のエリゼに気付いている、それ自体異例な事だ。
「なんで、バラしちゃったのよ」
と小声でエリゼに詰め寄るリーズル。
「だって、あの子すごく察しが良いんだもん。それに、前一度入り込んだことがあるし、私の感覚を覚えていたみたいで、あっさりと見破られたわ」
とエリゼが言う。
「自慢することではないでしょう」
とまた別の審査官。
リーズルに至っては既に呆れた表情だ。
審査官が一同、ため息をついた、その時、天国の門のゲートマスターであるエヴァが口を開いた。
「その心に迷いはないですね?」
と。
審査官が一斉にエヴァを見た。
エヴァはほほ笑んで、エリゼを見つめている。
「お返事を」
とリーズルがエリゼをつついた。
「あの、はい。」
とだけ答えるエリゼ。
リーズルが咳ばらいをしながら再びエリゼの脇をつつく。
そして、目配せをする、かなり鋭いし視線で。
「契約者の娘、舞香は今将来について決めなければならない重要な時期で、母親の助言が必須です。
ですから、わたしと真理を同居という形で共存させていただきたいのです」
とエリゼが言う。
やっとはっきりと、審査官とゲートマスターの前で、希望をはっきりと伝えたのだ。
一瞬静まり返る、審査官たち。
ゲートマスターのエヴァが何と言うのか、それに全神経を集中させている。
「では、そうしましょう」
とエヴァが言う。
あっけないほど、簡単にエリゼの希望を叶えると言うのだ。
「しかし」
とエヴァの隣にいる審査官が否定的に言うが、エヴァは気にする様子もなく、
「あなたが、望んでくれないと、こうは出来ないの。
よく、意見を言ってくれましたね」
とエヴァ。
そして、エリゼの手を取り、
「貴女と真理はこの先、同じ身体を使います。
これには今までにはないリスクもあるわ。だから、貴女は必ず真理の希望を叶えなければなりません」
と静かに言った。
「それでは、よろしくね」
と言うとエヴァはその場を去って行く。
二人の審査官が慌ててエヴァを追う。
この二人はゲートマスターの側近なのだ。
残されたのは、エリゼと担当審査官のリーズル。
そして、そのほかの審査官たち。
「しばらくお待ちなさい。詳細をお伝えしますから」
と審査官の一人が言うと、同じくエヴァの後を追って行った。
この場にいるのは、エリゼとリーズルだ。
「まったく、寿命が縮んだわ」
とリーズル。
「そんな大げさな。そもそも、寿命なんてないんじゃないの?」
とエリゼが言うが、
「ま、それはそうね」
とリーズルの額は汗びっしょりで言う。
心なしか、顔色も悪い。
「あの、ごめんね」
とリーズルの様子を見たエリゼが言う。
今までにないほど、疲労感を漂わせるリーズルの姿に、エリゼもようやく察することが出来た。
自分は随分と、「大それたこと」をしたのだと。
「でもね、ゲートマスターのお考えでしょうから、あなたは自分の思う道を進むのよ」
とリーズル。
そしてしばらく経つと、さきほどのエヴァの側近がやってきた。
今後の事について知らせるために。
「ゲートマスター、エヴァのご意思により、挑戦者、エリゼと契約者真理は真理の身体にて同居するものとします。
しかし、今、睡眠状態にある真理をいきなり身体に戻す訳にはいきませんので、少し順応期間をおいてからとなります。
来週の真理の誕生日より、新たな体制のスタートとします。」
と無表情で決定事項を知らせる審査官。
「それでは、リーズルあとはよろしく」
と言い残し去って行った。
「来週からなの?」
とエリゼ。
エリゼはすぐにでも真理が戻ってくると思っていたのだ。
「これは、お互いの心と身体に一番ダメージを少なくするためよ。
受け入れてちょうだい」
とリーズル。
エリゼは一日でも早く、舞香を真理に会わせてやりたいのだが、これは従うしかないだろう。
「舞香、分かってくれるかしら」
とエリゼは不安を抱える。
舞香の進路決定もあまりゆっくりとはしていられない。
様々な、不安と疑問が頭を巡る。
そして、ふと気づくとそこは天国の門ではなく、真理の自宅の台所だった。
そして、
「おはよう、ママ?」
と舞香が声をかけてきた。
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