↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
83/85

和人の帰省

一家団欒

「ただいま」

と玄関から声がする。

息子、和人だ。

真理エリゼと祥太が買い物から帰ってしばらく経った時だった。


「おお、親父」

と祥太に声をかける和人。

会うのは久しぶりだ。


元物置の自分の部屋に荷物を置くと、すぐに居間にもどってくる和人。

真理エリゼが冷たい飲み物を用意した。


舞香も合流し、久しぶりに家族4人が揃った。

和人は通っている大学の事、やりたい研究の事、下宿先の地方都市の事、いろいろと話した。

少し前までは、舞香と同じく「難しいお年頃」とかで親の前ではムスッとして、特に父である祥太とはほとんど口もきかなかった。


それが、流石に大学生になると反抗期も影を潜め、父にも母にも大人の対応ができるようになっていた。

大学の学費、地方都市での一人暮らし、それを支えてくれる両親に感謝の気持ちも素直に語っていた。


そして、妹の舞香が反抗期に突入し、不機嫌が増えてくるとそっと話をきいてやった。

近すぎず、遠すぎず、静かに寄り添う兄に、舞香の心もだんだんと落ち着いていったのだ。


「それで、お前、学校はどうだ?JKライフは堪能してるんだろ?」

と和人が舞香に言う。


「もちろん、毎日楽しくてこれぞ青春だわ」

と舞香。


「それならよかった。そろそろ進路も決める時期だね」

と祥太。

兄妹の会話に割り込むように言った。


「そうね、あとで話すわ」

と舞香は言葉を濁した。


それから、真理エリゼは早めに夕食の準備に取り掛かった。

夫が帰宅した時とは明らかに気合の入れ方が違う。

姉妹で育ったエリゼには、息子に対する母の愛情が限りなく深いことがわからなかったのだ。


張り切って買い出しをしたその日の夕食。

どれも和人の好物ばかりだ。


普段は使わない、テーブルクロスをかけた食卓に、これまた普段は使わない皿が並べられた。

上質な食材を存分に使い、テーブルの上はあふれんばかりの料理が並んだ。


家族4人が食卓に着き、グラスに飲み物を注いだ。

祥太と和人はワインを、真理エリゼと舞香は炭酸水だ。


「じゃあ、久しぶりの一家団欒に乾杯」

と祥太が音頭を取る。


そして、

「これ、ママに」

と祥太がきれいに包装されたプレゼントを真理エリゼに手渡した。

誕生日の贈り物だ。


「わ、パパ今あげちゃうの?」

と舞香が慌てて言うと、自室に駆け戻り紙の手提げを持ってきた。


「はい。これお兄ちゃんと私から」

と舞香。


少し目を潤ませて満面の笑みを浮かべてプレゼントを受け取る真理エリゼ

舞香たちに急かされて開けてみると、

祥太からは、真珠の飾りのついたネックレス、そして和人と舞香からはタオルとTシャツが贈られた。


さっそくネックレスを身に着け、Tシャツを合わせてみる真理エリゼ


「さすが、パパ。これ、ここで買うとすごく高いんだよね」

と舞香がネックレスを見ながら言う。

真珠は祥太の赴任先の特産品だ。

現地では上質の真珠のアクセサリーが、ここよりもお手頃に買えるのだ。


「このTシャツって」

と舞香たちからもらったTシャツを眺めながら真理エリゼが言う。


「そうよ、スタジオXの限定品」

と舞香。


今流行りのバレエパフォーマンス集団、スタジオX。

そのスタジオXが公演記念に発売した数量限定品だ。


レオタードの上に着るのにちょうどいい、ストレッチの利いた生地。

首周りはゆったりをしており、踊りやすさにはこだわって作られている。


「これ着てお稽古したら?」

と舞香。


「タオルも持ってね」

と和人。


このタオルも、バレエダンサーに人気のブランドの品だ。

スタジオ・アーツインでの持っている人がいた。

みな、バキバキのバレリーナだった。


「わあ、うれしい。これだけで上手くなった気がするわ」

真理エリゼ


「いや、上手くならないと困るんだよ」

とエリゼが心でつぶやくが、誰にも聞こえることはなかった。


そして、改めて祥太と和人、そして舞香に礼を言う真理エリゼ

自分がバレエを趣味と出来ること、それは家族の理解と協力があったのこと、そんな感謝の言葉も忘れなかった。


「いつもママだ」

とそれを聞い祥太は思った。


それから、夕食の宴は和気あいあいとした雰囲気の中進んだ。

途切れることのない会話、笑い声。

それは何処にでもあるけれど、ここにしかない家族の時間だ。


そんな時間がしばらく続いた後、

舞香が口を開いた。


「あの、私の進路なんだけど」

と。


「昼間、言いかけたことだね」

と祥太。


「あの、私、内部進学はしないつもりなの」

と舞香が言う。


思わず顔がこわばる祥太。

和人も驚きを隠せない様子だ。

しかし祥太は口を挟むことなく舞香の言葉を聞いている。


「それでね、私、アニメの専門学校に行きたいの。ママも賛成してくれているわ」

と舞香。


「ねえ、舞香、本気なの?」

と和人が言う。

和人は事前に何も知らされてはいなかった。


「アニメの専門学校、に行って何を学ぶつもりなんだい?」

と祥太はあくまで静かに舞香に問う。


舞かは自分の気持ちを話す。

大学でまた「勉強」するのが苦痛であること。

だから、好きなアニメに触れていたい。

と。


「それだけ、なの?」

と和人、

舞香の語った将来への夢、展望があまりに幼稚で現実的ではなかったからだ。


「それで、ママも賛成しているんだ」

と祥太も口を開く。


「そうよ、ママはあなたの好きな道に進みなさい、って言ってくれているの」

と舞香は言う。


そう言われて、真理エリゼはただ頷いている。

その顔はどこか満足気だ。


「ねえ、ママ、君も舞香の進路を認めているって」

と祥太。

少しだけこめかみが引きつっている。


「どうしたんだ、そんなことを、君らしくないじゃないか」

と次に思わず大きな声を出していた。


応援していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。