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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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戻った「メーター」

飲み会もお開きの時間になり

ー天国の門、管制室ー


「挑戦者、エリゼ・リデルのメーターが」

と一人の審査官が言った。


並んでいるエリゼの「メーター」

その一つを指さしながら。


「さっき通常値にしたばかりなのに、元に戻っちゃってる」

と怪訝な顔をするのは、エリゼの担当審査官、リーズルだ。


「真理の心遣いその3」その数値が異常な値を示しており、ついさっき手動で通常に戻したばかりだ。

それなのに、針はまた明らかに異常な数値を指している。

これはどうもおかしい。


「どうしたのでしょうか」

とリーズルも一緒の審査官も首をひねるばかりだ。


「このままで過ごしてもらうしかない、そう言うことでしょう」

と二人でそう言うと、納得したようにメーターの針を眺めていた。



誕生日女子会は、

真理エリゼと幸子がロウソクを吹き消したバースデーケーキが、切り分けられて皆に配られていた。

生クリームとイチゴのケーキは程よい甘さだ。


「あら、ケーキは久しぶりだわ。普段は食べないもの」

そう言いながらも、ケーキを頬張っているのは真由子だ。

相変わらずの「体型、気を付けてます」アピールだ。


「小さいんだから、これくらい食べても大丈夫じゃない?せっかくだから美味しくいただきましょうよ」

とさりげなくしのぶが言った。

こういう時に、しのぶの少しズレた発言はありがたい。


「そうよね、このケーキ、ほんとにお上品な甘さで美味しいわね。さすがあかりちゃんのチョイス。

まあ、発表会が近くなったらみんな、身体は絞ってもらわないと困るけどね」

と笑うのはいずみ先生だ。


「それに、近いうちに康太くんのアダージオクラスもあるしね」

といずみ先生。


「そうですよね、特別レッスン、させていただきますね。すごく楽しみ」

と康太先生が言う。


まだ日程は不明だが、この康太がこの大人クラスの生徒たちにレッスンをする。

その時には、男性ダンサーと「組んで」踊るアダージオも体験できる予定なのだ。


「じゃ、細っそくなっておかないと」

と笑う幸子。

他の者たちも同様に頷いた。


「そんな無理はしないでよ、ほんの体験、お試しだからね」

とその様子に康太が言った。


「特別レッスンには助手として、この大河君も参加します」

と康太。


今まで、大人の女性たちのおしゃべりに圧倒されていたのか、ほとんど無言でただ笑顔でそこにいた大河だった。

それが、急にみんなの視線が大河に向けられて、すっかり恐縮している。


「あの、はい、よろしくお願いします。」

と口ごもりながら言う大河。

会社でバレエ談義をしている時とはずいぶんと違う。


「緊張してるの?」

真理エリゼが声をかけると、周囲から笑いが起こった。

そして、ますます肩をすぼめてうつむく大河。


「おばちゃんパワーに驚いちゃった?」

と声をかけられる始末の大河だ。


それをみた康太が、まるでかばうように、

「この、大河はかつては若手のホープとまで言われていたんですがね、どういうわけか嫌になったらしく一旦バレエから離れて普通に社会人になりました。それが、救世主の出現によりバレエに復帰したんですよ」

と康太が大河の肩を叩きながら言う。


「救世主ですって」

とざわめく周囲。


「そうだよな」

と康太が大河に言うと、


「そうなんです、僕の会社の同僚でもある真理さんが、バレエを始めたって聞いてこの前の舞台も見せてもらいました。

真理さんとお仲間の皆さんが踊る姿がとても尊くて、僕ももう一度踊りたいって思ったんです」

と少し顔を赤くしながら言う大河。


「こんなおばちゃんの姿にそんな事思ったの?」

真理エリゼが思わず突っ込んだ。


「真理さんが踊ってる姿、一生懸命ですもんね。それなら自分も、って思いますよね」

としのぶが言う。


その言葉にみんなも頷いて、口々に賛同の言葉を言う。

しかし、

「だったら、自分でも踊れそう、って思いますよね」

としのぶが小さな声で続けていた。


「はいはい、あの踊りなら自分でもって思うよね」

とその言葉をしっかり聞いていた真理エリゼは思った。

相変わらずのしのぶの発言に、少しだけ苛立ちを覚えながら。


いよいよ、誕生日女子会はお開きの時間となった。

最後に一言、と言われたこの日の主役の二人、真理エリゼと幸子。


「今日はありがとうございました。これからも皆さんと一緒にバレエ頑張りたいです」

と幸子。


それに続いて、真理エリゼもお礼と感謝を伝え、そして。

「次の発表会が、私にも皆さんにも、最高に心に残る舞台になるといいですね」

と締めくくった。


真理エリゼと幸子に拍手が送られて、いずみ先生の最後の言葉で会は終わった。

その時には既にあかりが手際よく会計を済ませており、後は支度をして帰るだけだ。


店を出て、そこでいったん解散だ。

駅に向かう者、バスに乗る者、それぞれだ。


こういう飲み会ならこの後、二次会なんてものに流れるのが普通だが、今回の参加者はほぼ家庭をもつ身だ。

真理エリゼを含めそのほとんどがそのまま帰路についた。

駅に向かって歩き出す、真理エリゼ、そして同じ方向に行くしのぶと幸子も一緒だ。


「先生たちは次に行くのかな」

としのぶが店の方を振り返りながら言った。


そこには、いずみ先生と康太、大河、そして真由子がまだ店の前で談笑をしていたのだ。

本来なら、真理エリゼ立と同じ路線で帰るはずの真由子。

それがここにいない、ということはこのまま二次会にでも行くのだろう」


「いずみ先生、時々真由子さんと飲みに行くんですって。」

と幸子が言う。


「仲良しなんですね」

としのぶ。


「だから、真由子さん、最近すごく」

と幸子がそこまで言って口ごもった。


そう、最近すごく、「存在感」を増しているのだ。

レッスンでも、着替えの最中でも。

真理エリゼはその理由わけが分かった気がした。

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