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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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誕生日の願い事

次への期待と不安が募る

「白鳥の湖」

その全幕上演が、次の発表会になるかもしれない。

その場にいたみんなが歓喜した。


誰もが知る、バレエの名作。

それが発表会の演目になる、そしてその舞台に自分たちも参加できる。

これでテンションが上がらないわけがない。


ただ一人、真理エリゼを除いて。


白鳥の湖、確かに演じる側にとっても、踊りがいのある役柄ばかりだ。

華麗な宮廷場面、静かで物悲しい白鳥たちの場面、

バレエを踊る者なら、どのシーンにでも出てみたいものだ。


しかし。

真理の夢である「舞台の真ん中で踊る」ことはどうだろうか。

かなり、難易度が高いのではないか。


まず、ソロで踊るのは主役クラスだ。

宮廷の場面で、様々な踊りが披露されるが、それも数人で踊るものが多い。

白鳥たちのシーンはもちろん群舞だ。


となると、真理の技量では、みんなで踊る演目、に選ばれるのが精いっぱいだろう。

いくら発表会とはいえ、お客様に観てもらう以上、それなりでなければならない。

先生だってそのあたりはしっかりと考えるはずだ。


バレエ教室の発表会で、よくあるのが

いくつかの小品を踊る演目だ。

「あすかバレエスタジオ」の発表会ではそれをバレエコンサートと呼んでいる。


それならば、真理の出番もありそうだ。

懸命に練習をして自分の憧れのバリエーションを踊る出演者。

もちろん、完璧な踊りではないし、失敗することだってある。

プロの舞台では決して見ることの出来ない、別の意味で観客を魅了する感動的な演目となっているのだ。


真理がその舞台に立てば、頑張って踊る若くはないバレリーナ、そんな風に見えるだろう。

それでも、真理の夢は叶うのだ、そしてエリゼの夢も。


そんなバレエコンサートがない、となると。

真理が舞台の真ん中で踊る機会がない。

かもしれない。


エリゼは周囲の歓喜をよそに、そんなことで頭がいっぱいになっていた。

次の発表会で結果が出なければ、自分の未来はないのだから。


「あの、バレエコンサートもあるといいですよね」

その声で我に返る真理エリゼ

声の主はしのぶだった。


「白鳥の湖、ぜひ出てみたいですけれど、バレコンで大好きなバリエーションにも挑戦してみたいんです」

としのぶ。

自分エリゼと同じ思いをここで言ってくれた。

自分も、と言いたくて息を吸ったその時、


「そうよね、幕物はすばらしいけど、ほとんどみんな群舞になるでしょう。次に野心を燃やしている子もいるわよ」

といずみ先生をちらりと見ながら、真由子が言った。


「もちろん、それはわかっているんだけど、時間の問題もあるし、全幕となったらバレコンは厳しいわ。

出来たとしても精鋭の数名かしらね」

といずみ先生。


「精鋭か」

それを聞いて再び心が重くなるエリゼ。

精鋭に、真理が入るとは思えない。


「それにね、康太君の生徒さんも、希望があるなら踊ってもらいたいし」

といずみ先生が言う。


協賛出演してくれるという康太先生の生徒たち。

今は舞香もその一員だ。

いずみ先生の大人の生徒に比べると格段にレベルが高い


精鋭に加えて、レベルが格段に違う生徒たちの参戦。

もう真理の出番などないではないか。


いつの間にか、誕生日女子会も終盤となっていた。

最後のデザートとして、バースデーケーキが運ばれてきた。

あかりが特別に手配したのだ。


「ハッピーバースデー」の合唱が起こり、真理エリゼと幸子がケーキのロウソクを吹き消した。

周囲からは拍手が沸き起こる。


「願い事は何?」

と誰かが聞いた。


誕生日ケーキのロウソクを吹き消す前には願い事をするのだ。

これはエリゼの母国でも同じだ。


バレエ学校の生徒だった数年間、願いはいつも同じだった。

「退学になりませんように」

そんなことを思い出して少し心が苦しくなるエリゼ。


「私は、次の発表会に万全の体調で出られますように、って願ったわ。

なんせ、区切りのお歳ですからね、あちこちガタがくるのよ」

と幸子が言う。


「あなたはどんな?」

と幸子が真理エリゼに問いかける。


「私は、生涯で一番忘れられない思い出の発表会になりますように、って願いました」

真理エリゼ


「舞台の真ん中で踊れますように」と言いたいところだったが、真理の本心が恥ずかしがって口に出すことができなかった。


「ふたりとも、発表会の事ばかりじゃなくてもいいのに」

といずみ先生が言う。

しかし、この流れで、「それ以外」の願い事など言える雰囲気ではない。


「でも、ふたりの誕生日の願い事、しかと聞いたわ。叶うといいわね」

といずみ先生。


「それにさ、協賛出演するうちの生徒には真理さんの娘さんもいるじゃない。

母娘共演だなんて、これは最高の思い出になるはずだよね」

と康太先生が口を挟む。


「そうなんだ」

と小さく呟く真理エリゼ

実際、舞香からはまだ何も聞いていない。


「娘からは何も聞いていなくて」

真理エリゼが言うと、


「そりゃあ、本人もまだ知らないしね。

協賛の話をもらって、僕考えていることがあるんだ」

と康太先生は言う。


「まだ内緒だけどね」

と付け加えると、いたずらっ子のように笑った。

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