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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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8/26

発表会と伝説のバレリーナ

発表会に向かって始動です。

「発表会に、出る?の、ママが?」

と舞香が驚きの声を上げた。


舞香がずっと通っていたた「あすかバレエスタジオ」、ここでは1年半に一度「発表会」が開催される。

生徒たちはほぼ全員が参加をする。

数人で踊る演目もあれば、一人で舞台に立つ者も。

あと、幕物と呼ばれるバレエ作品などは、教室の生徒総動員で出演する。


そんな発表会に、いずみ先生率いる「大人の生徒」たちも参加することが決まった。

しかし、出演するのはひと演目だけ。

大人クラスの生徒全員での踊りを披露するのだ。


「ま、がんばって」

と舞香が冷静に言う。


「見に来てよね」

と母。


母の言葉に舞香は曖昧に頷いただけだった。

自分がバレエを辞めて以来、あの稽古場には一度も行っていない。


今では、バレエの事を考えることもなく、見ることも聞くこともない。

あれだけ気を使っていた食事制限からも解放されたが、太るのは嫌だったので、無理のない程度で続けている。


「久しぶりに、見るのもいいかな」

と舞香は心でつぶやいた。


母の踊るバレエって言うのを見てみようじゃないの、と。



大人のバレエクラスでは、ほどなく「発表会」の演目のための練習が始まった。

その初回、


「皆さんが発表会で踊る演目ですが、「眠れる森の美女」第1幕のワルツでどうでしょう」

といずみ先生から話があった。


既に数回の稽古で顔なじみになっている生徒たち。

お互いに顔を見つめながら笑顔で歓声を上げた。


「じゃ、今日から振り付けを始めましょう」

いずみ先生がこう言うと、それぞれの立ち位置を指示される。


センターに立つのはのあだ。

その周りに、数人ずつ配置される生徒たち。

真理も中央のあの斜め前のを指定された。


「じゃあ、今日はここまで。皆さん、次回までに忘れたりしないでね」

といずみ先生が言う。


その日の稽古で発表会の演目、「眠れる森の美女」第1幕のワルツの最初の数フレーズの踊りを習った。

いままで、稽古でやって来た動きをつなぎ合わせた振りだが、曲に合わせるとそれなりに難しい。

真理もほかの生徒もいつもより疲労困憊でその日の稽古を終えた。


「私、あのワルツ大好きなのよ」

と真理と同年代の生徒の一人、高山晴美が言った。

更衣室でのひとときは今では貴重な生徒同士の会話の場になっている。


「私も、眠れる森の美女、何度観たかわからないわ。」

と一番年配と思われる小島幸子が言う。


チャイコフスキーの楽曲と共に有名なバレエ作品である「眠れる森の美女」

様々なバレエ団がレパートリーとして取り入れている。


真理だって、大好きな演目何度も見ている。

と、話そうとした時、


「私も、大好き。だいぶ前だけどパレ・ロワイヤルバレエ団が来日したじゃない。その時観て本当に感動したの」

と幸子が興奮しながら言う。


「世界最高峰のバレエ団ですものね。あれ以来眠れる森の美女はやらないわよね、あれを見たんだ、うらやましいな」

と晴美。

他にも、眠れる森の美女を見たことのある生徒たちが話に花を咲かせている。


「ここでも発表会でやったことがあるわよね、何年か前に。真理さんのお嬢さんも出ていたんでしう?」

といきなり真理に話が振られた。


真理の娘がここ、あすかバレエスタジオの生徒だったことは既に周知の事実だった。

高校生となり辞めてしまったこともだ。


「そうね、あの頃は小学生で、マズルカをおどったかしらね」

と真理。


その時、同年代の小学生たちと数人で「マズルカ」と言う群舞を踊ったが、舞香はそのセンタ―を任されていた。

それを客席から観たのが懐かしくよみがえっていた。


「そう言えば、パレ・ロワイヤルバレエ団の公演って直前で主役が交代したのよね」

と思い出したように晴美が言った。


「あら、晴美さん、よく知っているわね。予定では誰だっけ、このままいけば伝説級の天才っていう噂のバレリーナが踊るはずだったのに、急遽降板したって聞いたわ」

と幸子。


「誰だったかしら、バレエ学校時代から数十年に一人の逸材って言われていた」

と晴美。

幸子も同様に考え込んだ。


「えっと、リデル?」

と真理が口を挟んだ。


真理も古い記憶を探っていた。

パレ・ロワイヤルバレエ、世界最高と言われるバレエ団に付属するバレエ学校。

その学校公演を見たことのある真理。


「そうそう、リデル、エリゼ・リデルよ」

と晴美が言った。


「あの子、どうかしたのかしら」

と真理。

かつて親善交流イベントの一環として来日をしたパレ・ロワイヤルバレエ学校。

その公演を見たのは、まりがまだ小学生の頃だ。

まだ、夢見るバレエ少女だった真理。


そんな自分に、トゥシューズをくれた、その人がエリゼ・リデルだ。

その後、ほどなくしてバレエから遠ざかった真理、エリゼ・リデルのその後の事を知ることはなかった。


「確か、事故に遭ったじゃなかったかしら。エリゼ・リデル。

その後は全く聞かないものね」

とほかの誰かが言った。


「エリゼ・リデルってそんなに有名なの?」

と真理が聞くと、


「そうよ、伝説のバレリーナ。でも不遇よね。志半ばで」

と晴美。

エリゼ・リデルを知っているらしい数人が寂しげに頷いた。



「ねえ、私はどうなるの?」

と叫ぶ若い女性がいた。


「で、ここは何処なのよ」


「私、なんでここにいるの?」


「早く帰りたい」


立て続けに言うその女性。

細い手足に金髪、何故だか真っ白な衣服を身に着けている。


「まあ、静かにしてちょうだい。貴女はね車に跳ね飛ばされて今生死をさまよっているの。

ここはね、あなたをこれからどうするか決める場所。天国の門と呼ばれている所よ。

普通ならあなたの事故の遭った事故だと即死ものなんだけど、あなた一応、将来性って言うのが最高点で。ここでもう一度チャンスをあげようってここにまわされたのよ」

といつの間にか側にいた女性の声が言う。


「そりゃ、私天才バレリーナって言われているもの」

とエリゼ。


「じゃその天才さん、貴女がこの世に留まれるかどうかの判断基準とその条件を説明するわね。

あ、申し遅れましたが、私は天国の門、審査担当者の女神、ルイーゼといいます」

とその声の主、ルイーゼが言った。

突然の状況にエリゼは目をシロクロさせながらそのルイーゼを呆然と眺めていた。

大人の生徒さんたちはみなバレエに詳しいみたいですね

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― 新着の感想 ―
読ませていただきました。 とても親子が出ていてなんだかほのぼのでもこれからお母さんがどうなっていくのだろうと 親子で共演などもするのかなぁーと とっても楽しみになりました。 ヤマカイさんも最近YouT…
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