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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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誕生日女子会

次の発表会、始動?

「次の発表会か」

駅でばったり会ったしのぶ。

誕生日女子会の会場までの道筋は、二人だけで話すいい機会だった。

あまり、ゆっくりと話したことはない、真理エリゼとしのぶ。

もう次の舞台の事を考えているしのぶ。

この時、真理エリゼはしのぶの意外な一面を見た気がした。


見た目は、欲などなくおっとりした印象だが、

心には強い思いを秘めている。

それは、今まで何度となく聞かされた、悪気のない強気な発言と重なった。


真理エリゼも内心焦りを感じた。

ここ、いずみ先生のバレエクラスの「大人の生徒たち」も舞台に出る楽しさと喜びを知っている。

次の発表会にかける思いも以前とは違うだろう。


駅から歩くこと数分で、目的の店に着いた。

ビルの地下にある、広く和風の店構えだ。


「私たち、一番乗りかしら」

としのぶが言う。


入り口で名を告げると、すぐに係の人がやってきた。

もうすでに数名が来ていると言う。


「一番乗りじゃなかった」

としのぶ。


「みんな時間より早いのね」

真理エリゼが言った。

真理エリゼもしのぶも待ち合わせ時間ちょうどに着いたのだ。


案内係は店の奥まで進んで行く。

テーブル席もあれば、座敷もある。

暖簾で仕切られた、半個室もあるようだ。


「さ、こちらです」

と案内係が、引き戸を開けると、そこは和室の個室だった。

たたみに、掘りごたつのような低いテーブルが置かれている。


「いらっしゃーい」

そう言って出迎えたのは、この会を取り仕切るあかりだ。


靴を脱いで和室に入る真理エリゼたち。

すでに、真由子や幸子が到着しており、席についていた。

席はあかりが決めているようで、真理エリゼはコの字型のテーブルの上席に座るように言われた。


「お誕生日席ね」

とあかりが言う。

隣りは、もう一人の「お誕生日」を祝われる幸子だ。


そしてしのぶは、真理エリゼとは少し離れた席を指定された。

しのぶは、膝上のタイトなスカートをはいていた。

そこからのびる、すらりとした足を、掘りごたつにもぐり込ませる。


それから、数名が到着し最後にいずみ先生がやって来た。

これでお誕生日女子会に参加するメンバー全員が揃った。


「お誕生日会」の始まりだ。


「じゃあ、みなさん。

今日は幸子さんと真理さんのお誕生日、ということでお祝いをしながら、自分たちも存分に楽しみましょう」

とあかりがそんな言葉で乾杯の音頭を取った。


バレエの仲間たちとこんな風に、飲み会をするのは合同発表会の後の打ち上げ以来だ。

10数名の参加者たちは、席の近い者同士談笑をしている。

真理エリゼは、隣の幸子、そして斜め前にいるいずみ先生と何やら楽し気に話しをしている。


この日のメニューは、この店イチオシの「女子会コース」だ。

あかりが手配した。

焼き鳥専門店ではあるが、女子を意識したの色々な料理を少しずつ食べられるように工夫されている。

器や盛り付けも、いかにも女子好み。


「真理さんが焼き鳥好きだなんてね」

とあかりが言う。

そう言えば、行きたいお店、と聞かれて思わず答えたのだ。

かつて、バレエ学校の生徒としてこの国にやってきて、食べた焼き鳥が忘れられなかったから。


「鳥のささ身はダイエットにもいいしね」

と口を挟んだのは真由子だった。


ちょうどいずみ先生の正面に座っている真由子。

先ほどまで隣同士で楽し気に話をしていたのだが、いつも間にやらこちら(真理たち)の会話に参加している。

ついさっきまで、真由子と話をしていた、晴美は所在なさげに料理を食べている。


「ねえ、晴美さん。この間のレオタード、おニューでしょ?」

とそんな晴美に声をかけた真理エリゼ


真由子より自分の席の近くに座っている晴美。

それなのに、真由子はまるで晴美の存在を無視するかのようだ。

それも、周囲からはそうは見えない。


真由子が時々やる「いじわる」だ。

しかし、「いじわる」をしているようには決して見えない真由子の立ち居振る舞い。

笑顔で、感じのいい話し方。

やられている当人でさえ、気付かないほどすごく「いいひと」な真由子。


「私も気付いたわよ、すごく似合ってる」

といずみ先生が晴美に言う。


「私も、晴美さんみたいなの、買おうかな」

と真由子も言う。

話の中心がさりげなく真由子に移っていた。

いつもの事だ。


そんな会話が何度も続いた。

真由子の話は面白い、そしてつい聞きたくなるような話し上手でもある。


その時、いずみ先生が覗いていたスマホから目を離す。

そして、


「康太先生が来られるそうよ」

と皆に言った。


ほどなく、個室の引き戸の外から、

「お客様です」

と係の人の声がした。

そこには、康太、そしてもう一人、大西大河が立っていた。


「ちょうどリハの都合がついてね」

そう言いながら、部屋に入る康太、そして大河。

思いがけないゲストの登場に、部屋の中がにわかに活気づいた。


「みなさん、急に飛び入り参加させていただき恐縮です」

と康太が声をかけるが、

個室内はもうウエルカムな空気で満たされている。


「こっちは、後輩の大河。あ、知ってるよね」

真理エリゼを見ながら康太が言う。


「お誕生日会と聞いたので」

そう言うと大河は、小さなバラのブーケを幸子と真理エリゼに手渡した。


「康太さんとぼくから」

そう言いながら。


合同発表会の時、頭飾りに付けたような真紅のバラのブーケ。

思わず、顔を見合わせて笑顔になる、幸子と真理エリゼだった。


幹事のあかりは事前に康太たちが、参加するかも、と知らされていたようで、追加の料理を店に頼んでいた。

二人にグラスも用意されて、


「じゃあ、もう一度乾杯しましょう」

といずみ先生が言う。


席にはまだ余裕があり、2人増えたところで窮屈ではない。

康太はいずみ先生の隣に、大河は晴美の横にに座った。


2度目の乾杯がにぎやかに行われて、ますます盛り上がる。

そこで、康太先生が皆に向かい、


「次回、あすかバレエスタジオの発表会には、ぼくの教室も協賛参加させていただくことになりました。

演目は白鳥の湖、皆さんも出番はたくさんありますよ。がんばってくださいね」

と康太。


思わぬ発表に、一瞬静まり返ったが、すぐに、

室内は大きな歓声で溢れていた。

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