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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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舞香の「進路」

明らかになる舞香の進路希望、そして。

「これって、カミングアウトしちゃった、ってことだよね」

真理エリゼ


舞香と別れて自室にこもりながら、先ほどまでのやり取りを思い出していた。

思いの他、自分の事をあっさりと認めてくれた舞香。

それどころか、まるで以前からの友人のような接し方だ。

母、真理に憑依している自分を。


「夢に向かって,進むのみね」

と思いを新たにする。


今までは、エリゼは自分自身が助かるために叶える夢だった。

それが、舞香と一緒に真理のために夢を叶えたい、そんな気持ちが芽生えてきたのだ。


真実を舞香が知ったその後も、真理エリゼとの生活に大きな変化はなかった。

いつも通り、舞香は真理エリゼを母として接する。


そして祥太が帰ってくる前日となった。


「食材、買いこんだわね」

冷蔵庫を覗き込みながら舞香が言う。

どれも祥太と和人の好物ばかりだ。

舞香のアドバイスと真理の意識が、この品々を選ばせた。

中には、キャビアやシャンパンなどもあり、多少のエリゼの好物も含まれてはいるのだが。


「パパたちが帰ってきたら食べるのよ、つまみ食いしちゃだめだからね」

真理エリゼ


「わかってるわよ」

そう答えながら、舞香がまじまじと真理エリゼを見ながら、


「本当にうまくなりきってるわよね。外見はもちろんママ、それでいて中身はエリゼのはずなんだけど、普段の会話はママと話しているのと同じ。エリゼ、女優になれるわよ」

と感心したように言う舞香。


「それは、真理の本心がそうさせているのよ。それに、天国の門の監視員の影響力もあるかな。

ちゃんとコントロールしてくれてるのよ。監視されてるともいうけどね

好き勝手させて騒ぎになったら困るでしょ?かつての天才バレリーナ、普通の主婦に乗り移る、なんて」

真理エリゼは笑いながら言った。


「でもまあ、相手が私でよかったわよね。他の人ならこうはいかないから」

と舞香も何故か誇らしげに言う。


「ママの本心、それどれくらいの割合で影響があるの?

ちょっと気になっていることがあって」

と舞香が先ほどまでとは一変した真剣な眼差しで言った。


「まあ、基本的な人格は真理のままよ」

とエリゼ。


「たぶん。じつはよくわからないの」

と続けた。


「そっか。じゃあ、ママだと思ってここで言っておくわ」

と舞香が更に改まった表情になった。


「私、そのまあ内部進学しないって言っているじゃない」

と話し始める舞香。

自分の進路についてだ。


「私ね、専門学校に行きたいの」

と舞香。


「専門学校?」

と聞き返す真理エリゼ


エリゼの母国にも「専門学校」はたくさんある。

それぞれの進みたい道の合わせて、必要で役立ち知識や技術を習得するための学校だ。

パレ・ロワイヤルバレエ学校も広い意味では「専門学校」だ。


エリゼの母国では、高校を卒業すると一人前とみなされてそれ以降の進路はほぼ自分自身で決める。

そのまま働く者、大学へ進学する者、そして専門学校へ進む者。


多くの若者がそのどれかに進む。

ここと大きく違うのは、大学へ進学する者はかなり少ない。

そもそも大学の数が多くはない。

そしてそのどこもが、学業がかなり優れていないと入学することができないのだ。


どの道をえらぶにしても、決めるのは本人。

両親や先生たちは、助言はするが決めつけることはしない。


そして進学に必要な費用は、自分で捻出する、これが当たり前だ。

もちろん、そんなたくわえのない学生も多いので、国に費用を一時的に立て替えてもらう制度がある。

奨学金というやつだ。


様々な種類の奨学金制度があり、学業に秀でていれば返済が免除されたりもする。

エリゼがパレ・ロワイヤルバレエ団に入団し、独り暮らしを始めた時にかかった費用はすべてバレエ団から支給された。

これもある種の奨学金だ。


舞香と通して知るこの国の進学事情は、エリゼの母国とは大きく異なっている。

特に舞香の周囲はほぼ全員が、大学へと進学する。

その費用も親が負担をすることも多い。


それに、高校を卒業しようとしている子供の将来に口を挟む保護者も珍しくはない。

舞香のクラスメイトには、親の希望した学部に進む友達もいるのだと聞いて驚いたものだ。


「それでね、ママ」

と舞香が更に真剣な顔をした。


「私、アニメの専門学校へ行きたいの」

と舞香。


その言葉を聞いた真理エリゼの中で、何か大きな感情が動いた。

舞香の言葉への拒否反応だ。

しかし、それはすぐに霧が晴れるように真理エリゼの心から消えていた。


「あなたがそうしたいなら、それが一番いいと思うわ」

真理エリゼが言う。

先日の、舞香の学校での面談の時と同じだ。


「自分の進む道は自分で決めればいい」

真理エリゼ


「本当に、いいの?」

と舞香が少し戸惑いながら言った。


「当り前じゃない、あなたが自分で決めたんでしょう?」

真理エリゼが言い切る。


「そう。それはママの答えとして受け取っていいのよね?」

と舞香が更に聞くが、


「信用してよ。真理の本心がこう言っているのよ。反対する気持ちがあればこうは答えられないもの」

と真理の中のエリゼが言った。



ーその頃、天国の門の管制室ー


「ねえ、これおかしくない?」

と天国の門の審査官が言った。


そこは、天国の門の管制室だ。

エリゼのように、天国の門で生死をかけて挑戦をしている者たちの、さまざまな管理を行っている。

そこにはたくさんのメーターが並んでいる。


その一角に、

「エリゼ・リデル」

と名前の書かれたメーターがあった。


いくつも並んでいるそのメーターは、

小さな天秤の付いた、レトロな計りのような形状をしており、

細い針が、刻まれたメモリを指している。



そのうちの一つ、

「依頼人の本心その5」

と書かれているメーターの針は、基準値よりもかなり低い数値で止まっていた。


「このままでは、依頼人の本心が発動されることはないわ」


「だとすると、挑戦者の気持ちが優先されてしまうのでは?」


そのメーターを取り囲んでワイワイと話す天国の門の審査官たち。

そのメーター、

「依頼人の本心その5」

その側に、

「娘の進路に関すること」

と小さく注釈が書かれていた。

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