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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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天国の門の審査官との「面談」

面談、何を聞かれるのやら

「あなたの行動は、こちらでも把握しているけれど、あなたからの報告もお願いするわ」

と静かに言う女性。


広い空間の真ん中にポツンと置かれた椅子に座っているのは、エリゼだ。

そのエリゼの斜め前に立っているのが、審査官のルイーゼ。


そのずーっと前方に数人の人影が見えている。

審査官たちだ。


その中央にいるひときわ目立っているのが、審査官のリーダー、ゲートマスターのエヴァだ。

様々な決定権をもっている。


そのリーダーから、今の状況を説明するように言われたエリゼ。

ここは、天国の門、その広間なのだが、周囲には壁も天井もない。

あるのはただ広大な空間。


その真ん中にポツンと座るエリゼ。

落ち着かない様子で視線が泳いでいる。


「緊張しなくてもいいのよ」

と声をかけたのが、エリゼの担当審査官、ルイーゼだった。

この日は、エリゼが真理に憑依してから初めての、審査官たちとの定期面談だ。


エリゼは自分の手を眺めていた。

今の身体は誰なのか、本当の自分なのか、真理なのか、それを知りたかったのだ。


「何をしているの?ゲートマスターがあなたの答えをお待ちよ」

とルイーゼが焦った様子で言う。


そう言われて自分の姿を気にしながらも、今の生活を話すエリゼ。

真理の夢、舞台の真ん中で踊ること、を叶えるために奮闘している。

真理の身体はとてもバレエには向いていないが、自分の培った知識で何とか出来るだろう。


「次の発表会で、真理を舞台の真ん中で踊らせて見せるわ」

とエリゼが自信たっぷりに言う。


「まあ、それは頼もしいわね」

と前方のゲートマスター、エヴァ。


「この調子で頑張ってください」

とエヴァがねぎらいの言葉をかけ、その場を立ち去ろうとした。

面談はこれで終わりの様だ。


「あの、」

とエリゼの方から声をかけた。

ルイーゼが焦って身を乗り出すのが見えた。


「あの、もしも私の存在が知られたらどうなるんですか?」

とエリゼ。


エヴァは立ち止まり、エリゼの方を振り返った。

そして、

「そうですね、その相手にもよりますが」

とエヴァ。


「運命を変えない限り許容としましょう」

と言うとそのまま去って行くエヴァ。


前方にいた数人の審査官がエヴァと共にその場を離れた。

残されたのはエリゼとルイーゼだけだ。


「もう、驚かせないで。ゲートマスターに自分から話しかけるだなんて」

とルイーゼ。


「そんなに偉い人なの?」

とエリゼが聞く


「だから、すべての決定権はあのゲートマスターにあるんだって。

あなたが無事に生還できるかもエヴァが決めるのよ。

まあ、温厚なお方だから、このまま計画が上手くいけば問題はないと思うけど、変な波風は経てない方が無難よ」

とルイーゼ。


「それに、ゲートマスターは私たちとは身分が違うの。気軽に話していい相手じゃないのよ。

これからは気をつけて」

と続ける。


「じゃあ、また次の面談で。それまでちゃんと計画を進めてね」

そう言うと、ルイーゼがエリゼに席を立つように促した。


壁も天井もない大きな空間をしばらく歩くと、いつの間にか廊下に出ていた。

周囲は何処も真っ白で、少しもやのかかった空気。


「神殿なの?」

とエリゼ。

昔読んだギリシャ神話に絵本に出てきた神様の住む宮殿によく似ていた。


「あなたにはそう見えるのね」

とルイーゼ。

どうやら、ここは「形」があるのではなく、その人の思い描くイメージ通りに見えているようだ。


「さあ、ここから出れば戻れるわ」

とルイーゼが言った。

そこにはいくつものドアが並んでいる。


そのドアには、

「エリゼ→真理」

とプレートが付いていた。


このドアをくぐれば、真理の家に戻っている、そうルイーゼは言う。

自分の姿がどうなっているのかはわからないままだが、今日のところはこだわることはせず、このまま戻った方がよさそうだ。


ルイーゼに別れを言って、ドアに手をかけようとした時、

背後から足音がした。


バタバタと走る、小さな足音。

思わず振りかえると、そこには小さな男の子がいる。


「ねえ、僕、願いをかなえてあげればいいんだよね。」

とその子が笑顔で話している。


自分と同じ、天国の門の審査官に、「猶予」を与えられているのだろうか。

「誰かの夢を叶えれば」

なんて自分と一緒ではないか。

でも、まだ小さいのに、生死をさまよっているだなんて。


そんなこその男の子が、エリゼの方を向いた。

目が合った途端、エリゼに駆け寄ってくるその子。


「ねえ、あなた、エリゼ・リデルでしょう?僕のあこがれのバレリーナだ」

とその子が言う。


「あなた、ルイ?」

とエリゼ。


その顔には見覚えがあった。

パレ・ロワイヤルバレエ学校に入る前に通っていた、地元のバレエ教室にいた子だ。

エリゼがパレ・ロワイヤルバレエ団に入団した後、その教室を訪れた時に誰よりもキラキラした目で、

自分を見ていた、小さなバレエ少年だ。


「僕、夢を叶えに行ってくるね」

とルイがいうと、エリゼの3つ先のドアを開けてその中へ入って行った。


「あの子も私と同じなのね」

とエリゼがルイーゼに尋ねるが、ルイーゼは。


「あなたは特例中の特例よ。あの子はね、自分の夢を叶えてもらいに旅立ったのよ」

と言う。


「でも、夢を叶えればいいんだよねって」

とエリゼはルイが最初に言っていた言葉を思い出していた。


「誰かの夢を叶える、ではなく自分の夢を叶えるということ」

なのだろうか。


しばし考え込むエリゼに

「あの子の事は気にしないで、あなたは自分の計画を進めることだけを考えて」

とルイーゼ。


エリゼはルイの輝く瞳を、心にとどめながら、ドアを開け「いつもの生活」へと戻って行った。



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