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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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カフェでのひと時

レッスン後のお茶タイム。どんな話をするのかな

カトレア・クラブのオープンクラスを終え、近くにあるカフェ・ラ・メゾンでティータイムをしている真理エリゼと真由子。


大理石の丸いテーブルには、ケーキとコーヒー、そしてオレンジジュースが並び、

それを囲む二人の女性が笑顔で談笑をしている。

まるで奥様雑誌にでも載っていそうな、優雅なひと時だ。


しかし、それは周囲から見えている姿。

実際には、真由子の強気な発言が続いていた。


一通り真理の事を聞いた後、真由子は「自分」について話し始める。

有名な企業で働いており、責任ある仕事を任されている。

若い頃は、旅行が趣味で色々な所へ行ったこと。

結婚していないのは、自分だけで生きていけるから。


そして、バレエを始めたきっかけは、

「私、身体の条件がいいじゃない、柔らかいし。バレエに向いてるよ、ってずっと言われていたのよね。

でもなかなか自分に合ったスタジオがなくて。

それで、会社の側に「バレエ・フローラ」っていうスタジオを見つけて通い始めたの」

だそうだ。


バレエ・フローラはこの前の合同発表会に参加したスタジオの一つだ。

いずみ先生のバレエクラスと同じく、大人の生徒ばかりのスタジオなのだそうだ。


「フローラのレッスンは、美容のためのバレエって感じでね、先生も大人から始めるんだから、って最初から上達しないって決めちゃってる感じで。

だからポアントも履かせてもらえないし、パ・ドゥ・ドゥなんて夢のまた夢。そもそも単独での発表会なんかもなかったし」

と続ける真由子。

そう言えば、合同発表会の時も、トゥシューズ(ポアント)で踊る真理たちを羨ましそうにしていた。


「合同発表会で、いずみさんにそのことを話したら、うちの教室では大人でもポアントはいて踊ってるし、機会があればパ・ド・ドゥなんかもやらせてみたいのよね、って話してて。

もう、移るしかないぅって思っちゃって。

ちょうど、勤務先の社屋が移転しちゃってフローラからは遠くなったし、絶好のタイミングであと腐れなく移籍出来たわ」

と真由子。

吟味してスタジオを選んだはずなんじゃ、と真理エリゼは思ったがあえてそれには触れずにいた。


その真由子が夢見るトゥシューズ(ポアント)レッスンなのだが、いずみ先生のバレエクラスでは合同発表会の後、まだやっていない。

スタジオの改修が終わってからと言うことになっている。


それを心待ちにしているらしい真由子。

「もうポアント、買っちゃったんだ。

10足以上フィッティングして、これかなって言うのを選んだわ」

と嬉しそうに語る。


「そうなんだ、どれにしたの?」

真理エリゼが聞いた。

トゥシューズには種類がたくさんあり、足の条件により自分に合う者を見つけるのが大変なのだ。


「私、甲が出てるし、指もスクエア型だからお店の人に驚かれちゃって。

ここまでの足で、なんで今までポアント履いてないの?って」

と真由子が続ける。


レッスンで見た真由子の足先。

確かに甲が高く、綺麗なアーチの出る足だ。

しかし、バレエには詳しいだろうバレエショップの店員が驚くほど、ではない。


「舞香ちゃんも良い足してるわよね」

と真由子。

自分の足先に自信を持つ真由子、なんだか上から目線だ。


「もっと踊れそうだったのに辞めちゃって、残念ね」

と。


どこまでも上からな真由子に。

「そうね、いつも褒められてたわ。」

真理エリゼ

エリゼの眼から見ても、舞香の足はバレエ向きだ。


しかし、母娘でありながら、真理の足ときたら。

とエリゼは常日頃から感じていた。


「真理ちゃんには似てないよね。足もだけど背だって舞香ちゃんはすらりと長身だし」

真理エリゼの心中を見抜いたかのように、真由子が言った。


「そうね、あの子はパパに似たのかしらね」

真理エリゼが言った。


「そっか、パパさんには似てるのね。突然変異だったりしたら、バレエ学校の試験に落ちちゃうわよ」

と真由子が言った。


バレエ学校の試験。

パレ・ロワイヤルバレエ学校の入学試験では、親の体型を調べられる。

足の条件、背の高さなど、成長したらどうなるか、その答えが親だからだ。


加えて親が肥満体質の場合はかなりのマイナスだ。太っている場合、その肥満傾向な体質を引受け継いでいるかもしれない。

なにしろ、同じ食生活をしている以上、太ってしまう可能性が大きいのだ。


バレエに肥満は大敵だ。

バレエ学校の生徒たちも、成長期になると人一倍体型維持に気を遣う。

特に女子。


もちろん、普通の学生よりも身体を動かすこともあり、極端な食事制限は好ましくない。

きちんとした栄養を摂る事、ハードな毎日を過ごすためには不可欠だ。


そんなことも授業で習う。

どれくらい食べれば、身体を維持でき、何を食べれば太り、痩せるのか。

上質な筋肉を作るための栄養素は何かまで。


エリゼも14歳くらいから、急に背が伸びて女性らしい体型になって行った。

その頃は、腰回りに肉が付くのではと、本気で悩んでいた。

そんな時、学校の先生から、


「貴方は太る家系ではないから大丈夫よ」

と言われ、安心したのだ。


もちろん、「太る家系」ではなかったとしても肥満から逃げられられない生徒もいる。

年頃になると、バレエの上達具合とは別の理由で、退学を強いられる生徒が毎年何人かはいるのだ。


「ねえ、真理ちゃん」

と真由子に声をかけられて、我に返る真理エリゼ

ついかつての学校生活を思い出していたのだ。


「で、真理ちゃんは次はなにがいい?」

と急に真由子が言う。


どうやら次回の発表会での演目の話題になっていたようだ。

それも聞こえないほど上の空だったエリゼ。


「そうね、じゃあ、真由子さんは?」

とごまかすように言う真理エリゼ


「やっぱり幕物がいいわよね。私たちの出番も多そうだし」

と真由子。

真由子自身は、「くるみ割り人形」そして「ジゼル」が好きなのだと言う。


「パ・ド・ドゥを踊るなら、くるみだと金平糖くらいだから、ジゼルかな、ペザントもあるし」

と真由子が嬉々として言う。


「ジゼル」

エリゼも大好きなバレエ作品だ。


バレエ学校の生徒だったころから、その舞台には何度も出演した。

最初は村の女の子の役。

そして、バレエ団に入団してすぐ、ペザントというグラン・パ・ド・ドゥにも配役された。

異例の抜擢だった。


「ペザント、踊りたいの?」

と聞くと、


「手ごろなパ・ド・ドゥだもん。私ならあの辺りから始めたいかな」

と真由子。


また、この人は何を言っているのだろうか。

ジゼルのペザント、それは主役の代役に慣れる立ち位置の踊り手が配役されるのだ。


それが、手ごろだなんて。

見るのと踊るのとでは雲泥の差があるのを真由子は知らないんだ。

エリゼはそう思った。

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