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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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焦る心

エリゼの焦り

真由子たちがスタジオ・アーツインのレッスンに行った一番の理由、

それは、いずみ先生のバレエクラスのある「あすかバレエスタジオ」が工事のためしばらく使えなくなるからだ。


レッスンスタジオの床を張り替え、更衣室の内装をリフォームする。

このため、半月ほどスタジオは使用できず、レッスンは休止となっていたのだ。


工事の計画自体は、半年ほど前から通知されていたのだが、もちろんエリゼはが知ったのはごく最近だ。

「半月もお稽古がやすみになるなんて」

真理エリゼ


エリゼにとっては全く信じられない。

ただでさえ、この真理の身体、地道に筋肉を鍛えないとお話にならないレベルだ。

それには、やはりレッスンが不可欠なのに。


自分のホームグラウンドである稽古場が、休みだったり稽古の曜日に都合がつかない、などの場合にもレッスンが受けられるのが、オープンバレエのクラス。

誰でも参加することの出来る、スポット的なレッスンだ。

いろいろなバレエスタジオで、オープンクラスを設けている。

それが、エリゼの認識なのだが、いま真理として生活している今の環境ではどうだろうか。


そんな時、真由子からスタジオ・アーツインへの「お誘い」があったのだ。

スタジオ・アーツイン、かつてまだバレエ学校の生徒だったころ、この地で学校公演を行った時に、

招待されて受講したオープンクラスだ。


バレエをやっている者なら、誰でもが知っているハイレベルなバレエのレッスンが受かられる、

老舗のスタジオ。

自分(真理)も参加希望、と手を挙げるも、真由子からやんわり断られてしまった。


「じゃあ、別を探さないと」

真理エリゼ


さりげなく、舞香に聞いてみると、

「そうね、カトレア・クラブのスタジオは?」

と舞香。


カトレア・クラブ、こちらは出来て日は浅いが、バレエ用品店の運営するオープンクラス中心のレッスンスタジオだ。

ここも、様々なレベルのクラスがあり、スタジオ・アーツインに比べると誰でも参加しやすい。


スマホで調べると、普段のレッスンの様子が動画と共に紹介されていた。

平日、昼間のクラスは真理と同年代の人も多いようだ。

それに、ゆっくりと丁寧に稽古が進められているようだ。

真理の身体には、ちょうどいいテンポだ。


「舞台の真ん中で踊る」

そんな真理の夢を叶える。

これがエリゼの目標ミッションだ。


あまり長い時間をかけるわけにはいかない。

天国の門の審査官からは、1年以内にと制限が設けられているからだ。

ここに来て、なぜか時間の流れが速いと感じているエリゼ。

じわじわと、焦り始めていた。


それには、次の発表会でその夢を実現させる、これしかない。

「あすかバレエスタジオ」恒例の発表会。

いずみ先生の妹であるあすか先生の主催するバレエ教室。

毎回、演目も出演者も素晴らしく、評判の発表会。


それが、次回は、中核となる中学生の生徒たちの多くが「受験」と重なってしまい、出演しない可能性が高い。

そのため、いずみ先生の大人クラスの生徒たちにも出番が回ってくる可能性があるのだ。

いままでのいずみ先生の発言で、幾度もそのことが匂わされている。


「アピールしないとね」

とエリゼ。

そのあたりの駆け引きには慣れている。


エリゼ自身は、何もしなくても主役が回ってきていたが、周囲では壮絶な配役を巡る争いが繰り広げられていた。


講師におべっかを使い、取り入ろうとする者もいたが、パレロワイヤルバレエ学校の講師たちは、世界最高峰の王ライドがある、そんな姑息な手に乗りはしない。


まあ、「お気に入り」の生徒を優遇することは多々あったが、これはエリゼの母国の文化だ。

普通の学校でさえ、「先生のお気に入り」と称される贔屓された生徒が存在するくらいだ。


一番の効果的なアピールはもちろん、バレエだ。

ただうまいだけではなく、華があるか、目標に行きつくまで、努力を怠ることなく続けられるか、

そして、何よりも本心から「踊りたい」と熱望しているか、

講師たちは、そういうところを見抜いていた。


エリゼが真理として、舞台の真ん中に立つためにできる事。


バレエの上達はもちろん、

踊る事に対する、やる気と自信、これだ。


エリゼが想定しているのは、舞台の真ん中でソロで踊る事。

それには、観客に見てもらえるだけのバレエテクニックはもちろん、それに真ん中に立つ心の強さが必要だ。


普段のレッスンでも、立ち位置を巡って、もじもじと躊躇したり、並び順で譲り合っている場合ではない。

それがわかっていたのに、この前のレッスンでは、初参加の真由子にセンターレッスンで場所を譲ってしまった。

しかも自分は後ろに下がった。


「次はそんなことしない」

エリゼは強く思うのだった。


「もう、ゆっくりしている時間はないんだもの」

とエリゼ。


エリゼはスマホから、カトレア・クラブのオープンクラスへの参加申し込みをした。

日にち、時間、クラスは「初級」を選んで、最後の「確認」を押す寸前、

一通のメッセージが届いた。


画面に表示されるそのメッセージ、

「今度は一緒にスタジオ・アーツインのレッスンに行きませんか?」

と表示されていた。

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