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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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真理としての日常

エリゼが真理として生活を始め、数日が経った。


「真理」、であるのはその身体だけ。

その中身はエリゼがすべてを「乗っ取っている」

毎日、仕事に行き家の事をこなす。

真理自身、あまり交友関係が広い方ではないのだが、それでも仕事で、ご近所で、そしてバレエのレッスンで、人と関わる機会がそれなりにある。


幸いにも、大きな問題は起きていない。

エリゼのように、年代の違う人の中に入り、遠い異国で、違う時代での生活をするのは稀なケースだ。

そもそも、「希望を叶える」同年代の候補者はいずれも契約には至らなかったのだが。


あまりにもかけ離れた環境での毎日は、何かしらトラブルが起きそうなものだが、

もう後のないエリゼ。

そのあたらりぬかりなく、真理として暮らしている。


家では、料理や家事、どれもあまり得意ではないが、やってみるとなかなか面白と気付いた。

勤務先では、仕事はさておき大西大河とバレエの話をするのが、心癒されるひとときだ。


はたから見れば、若手社員とそれなりの年齢のパート従業員が、物陰でヒソヒソと話をしている。

なんとも怪しげな光景だ。


大河としては周囲の目を気にして、できるだけパソコンでのチャットで話をするようにしているようだ。

真理エリゼはそれに気付かない。

エリゼの実年齢は、大河と同じくらいだ。

それに、バレエの話をここまで話せる相手は、いまのところこの大河しかいない。

ついつい、真理であることを忘れてしまいそうになる。


「真理さん、前世はバレリーナだったんじゃないですか?」

そう言われるくらい、思わず専門的な見解を述べてしまうエリゼ。


エリゼとしても、大河とのチャットの履歴は確認済み、真理として話をしているつもりなのに、

万一、正体を勘ぐられたらもうおしまいだ。

大河との話も気をつけることを肝に銘じるのだった。



「私たち、スタジオ・アーツインのオープンクラスに行こうと思うんだけど」

とある日、いずみ先生のバレエクラスの生徒たちのグループチャットにそう発信があった。

ちょうど、その週はいずみ先生のバレエクラスが、その月5週目となるためお休みなのだ。


発信者は真由子だ。

いずみ先生のバレエクラスのグループチャット。

発表会などの一斉連絡のために作ったものだ。

真由子ももうそのグループに入っている。


「アーツイン?すごくレベルの高いところよね」


「私たちが行っても、ついて行けるかしら、というか行ってもいい場所なのかしら」


素早くそんな反応が返ってきていた。

スタジオ・アーツイン、ここはバレエの殿堂とも言われている、レッスンスタジオだ。

すべてオープンクラスで、誰でも受講可能だ。

しかし、集まってくるのはプロのバレリーナ、将来を嘱望されているように若手、これから留学をするという中学生など。

レッスン内容は、基本から上級まで様々なクラスがあるが、受講生たちのレベルはかなり高い。


「いずみ先生のお友達が講師をされている、基本クラスなら大丈夫じゃないかって」

と真由子。

いつの間にかそんなことまで知っている。


「るみ先生というのだけど、いずみ先生が事前に話しておいてくれるって、だから大丈夫よ」

と真由子は続ける。


「そうなんだ、それなら」

と、晴美と田代あかりが参加を希望した。


「じゃあ、私も」

真理エリゼが発信した。


すると。

「るみ先生の負担になるから、三人くらいでって言われてるのよね」

と真由子。


どうやら、やはりいずみ先生のバレエクラスの生徒たちではスタジオ・アーツインの基礎クラスでも、

「浮いて」しまうだろう。

基礎とはいえ、複雑な足さばきや、左右細かに動くステップなど。

無理に、足を素早く動かせば、ひねったりしそうだ、それに大きな動きは方向を間違えれば、

誰かとぶつかりかねない。


講師としては、レベルの伴わない生徒には、振りを変えたり、立ち位置に配慮したりする必要がある。

いずみ先生に託されている、とはいえあまり大勢だと大変だ。


「そうなんだ、じゃあ私は遠慮するわ。みんな、がんばってきてね」

真理エリゼはあっさりと引き下がった。


「じゃあ、私と、晴美ちゃん、あかりちゃん、で行ってくるわ。いずみ先生にもそうお伝えします」

と真由子の言葉で、スタジオ・アーツインの稽古の話は終わった。


その後、晴美から個人的にメールが来た。

「人数が決まっているなら、みんなのチャットで誘わなくてもいいのにね」

と。


「しのぶちゃんが行きたいと言えば、OKだったのかな」

と返信する真理エリゼ


「しのぶちゃんもお断りするわよ、真由子さんより上手だし、若いし、綺麗だから」

と晴美。


「真理ちゃんも、真由子さんより上手できれいって判断されたのよ」

と晴美が続けた。


「私なんか全然なのにね、でも合同発表会の時から、なんだか目をつかられてるのよね、私。そんなに気になるのかしら、

晴美さんとあかりちゃんなら同行オッケーって人選もわからないわ」

真理エリゼ


「真理ちゃん、上手だもの。特に最近、すごく。なんというか雰囲気?すごく動きがきれい。

イメトレの成果だけじゃないんじゃない?」

と晴美に言われてしまう。


「いやいや、座学もとても大事よ。今はね、毎日バレエの動画見るようにしてるもの」

真理エリゼはあくまでも、イメトレ効果を強調した。


「そう?あのイケメンと同僚なんでしょ?会社で自主練してるのかと思ったわ」

と晴美。


大河の事か。

エリゼにとって大河は、バレエの話ができる数少ない同士ではあるが、自分エリゼのバレエを向上させるほどの存在ではないのだが。


「そう言う捉え方もあるのか」

とエリゼ。

下手に、真理に潜むエリゼの事を疑われるよに、大河の効果、とでも思われている方が安全だ。

エリゼは、思わず、


「大河君、のこと?」

そう聞き返し、


「いい影響をもらっいるわ」

とだけ答えておいた。

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