表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/29

舞台の上から「見えた」もの

いよいよリハーサル

発表会当日。

その日のスケジュールは、だいたい前回と同じだ。

本番、開演は夕方だが、生徒や先生、スタッフなど関係者は朝から会場であるホールに集合している。


3つの教室が出演する今回の発表会。

楽屋は各教室ごとに分かれていた。


「ねえ、差し入れ、ってなんで?」

楽屋に戻るなり、晴美と幸子に聞かれる真理。


「ああ、これはね」

と真理。

小西大河の事を話した。


「会社の同僚さんか、バレエ経験者だなんてすごいね。仕事先に話が合う人がいていいなあ、それに若いイケメンが観に来てくれるんだ、うらやましいなあ」

と晴美と幸子がため息をつきながら言う。


「いや、ほんとうにただの同僚で、そんなプライベートな話する機会もほとんどないんだって、パートのおばちゃんと若手営業だもん。でもさイケメンって、顔知らないじゃない」

と真理。

まあ、大河はそこそこのイケメンなのは確かなのだが。


「私は、今回も誰も来ないわ」

と晴美。


そんなことを話しながら、真理たちはメイクを始めていた。

バレエのメイク。

それは、かなりの派手な舞台用の化粧だ。


まばゆい照明、舞台と客席の距離、それでも顔の表情がわかるようにはっきりと濃くメイクをする。

近くで見ると驚くほどの厚化粧だが、ライトの下ではちゃんとバレリーナに見えるから不思議だ。


下地を塗り、鼻筋にハイライトを入れる。

ここから先は、メイクアップ専門のスタッフがやってくれる。

眼にはくっきりとアイラインを入れ、頬紅とリップも普段は使わない鮮やかな色だ。


メイクの仕上げは、別室で行われた。

他の教室の生徒たちも一緒だ。


そこに、先ほどいずみ先生と何やら話し込んでいた、バレエ・フローラの真由子がいた。

真理たちを見つけると、笑顔で近寄ってきた真由子。

もうメイクを済ませている。


「いずみ先生とはお知り合いなの?」

と幸子が聞いた。

幸子も真由子が話していたのを見ていたのだ。


「いえ、合同のお稽古の時、初めてお目にかかりました。

とても気さくないい先生ですね」

と真由子。


真由子はそのまま何かを言いたげだったのだが、真理たちのメイクの順番がまわってきた。

鏡に向かう真理たちと、楽屋に戻る真由子。

真由子はその時、


「今日の発表会が終わったら、お仲間になりますのでよろしくね」

と言い残した。


真理と幸子と晴美は、咄嗟のその言葉に何も答えることが出来ず、

真由子の後姿を見送った。


「仲間?どういうこと?」

とメイクをしてもらいながら真理は思った。


メイクを済ませると、舞台の上でリハーサルが始まった。

本番同様に照明が入り、本番と同じように踊るのだ。


衣装を着けた生徒たちが舞台袖に集まっていた。

いずみ先生のバレエクラスの出番はプログラム6番目、ちょうど真ん中くらいだ。

まずは舞台の上での立ち位置を確認する。


今までの稽古場よりもかなり広い。

わかってはいたけれど、実際に舞台に立つとイメージしていた以上の広さだ。


客席から観ているいずみ先生が、細かく指示を出す。


6人でのバリエーション、

稽古の時よりも、間隔をあけて並ぶようにと、いずみ先生が言う。


客席のいずみ先生、その隣には康太先生が生徒たちのリハーサルを見ている。

そして、康太先生と並んでいるのは、まぎれもなくあの大河だ。

もうこの場に来ているのだ。


客席に大河の姿をみつけ、少々動揺がはしる真理。

まさか、今この場の姿を見られているなんて。


チュチュから出ている脚を隠したくなる。

丸見えの二の腕も。


しかし、大河の視線にたじろいでいるわけにもいかない。

立ち位置確認が終わり、曲が流れ始めると真理は懸命に踊った。

もう客席は気にしない。


踊りが終わり、舞台前方に一列に並び、お辞儀をする。

パキータは情熱的な作品。

お辞儀もそれっぽく、手を腰に当てて片足を後ろに引き頭を下げる。

バレエらしい優雅なレヴァランスとは少し違うイメージだ。


視線も床に落とすのではなく、遠くを見つめる。

自然と客席を見渡す真理。

大河の姿を探しているかのようだ。


大河は、真剣な眼差しで舞台を観ていた。

オフィスでの姿とはかなり違う印象だ。

目の輝きが、明らかに異なる、今まで見たことのない燃えるような瞳。


真理はお辞儀をしながら遠くを見つめる。

ここから見える世界、


「これが舞台から見る風景なの」

と真理。


リハーサルは進み、パキータのコーダになった。

曲が始まると、真理たち6人がまずは舞台に。

幾つかのステップを踏みそのまま後ろに下がる。


そのまま最後まで、真理のコーダでの立ち位置それは一番後方だ。

最初のステップ以外、踊るところはほぼない。ずっと一番後ろでポーズをとる、それだけだ。


並んでいる真理の前で、他のバリエーションの数名が踊る。

そして、先頭の中央康太先生にエスコートされたしのぶがいる。


一番後ろから見る景色。

舞台は広く、客席が遠い。


真理は自分が舞台から見る景色のほとんどが、こんな光景だということに気付いた。

大勢の「「バレリーナ」の後姿越しに見えている、遠い客席、これが真理の視線が捉える風景だった。

応援していただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ