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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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22/25

グランドフィナーレ

合同での練習も始まりました

合同発表会でのグランドフィナーレ。

出演者全員が舞台で踊る、発表会最後を飾る華やかな演目になるはずだ。


その振り付け。

3つのバレエ教室の生徒たちが初めて一緒に集まって稽古をした日に

このフィナーレの振り付けも行われた。


出演しているのは、大人の生徒ばかり。

バレエの技術はと言えば、抜きんでて上手な生徒がごくわずか、他は大差がない。

それでも、舞台構成は前に出て踊る者、そのわきを固める者、後ろにいる者、に分かれている。


真理たち6人で踊るいずみ先生の生徒とほかの教室の生徒6人が加わった12人。

半数ずつ、舞台の両袖から最初に出てくる。

一列に並んだところで、少しのステップを踏み、客席に一礼をするとそのまま一番後ろへ。

そこで、ずっとポーズのままで他の出演者たちの登場を待つのだ。


一番最後の出てくるのが、それぞれの教室で主役級の役割を踊った生徒たち。

いずみ先生の生徒のなかからは、もちろんしのぶもが、康太先生とともに現れ、康太先生のサポートで、

つま先立ちをして、クルリと一回転をする。

他の二つの教室の主役クラスの生徒も似たような演出だ。


主役たちが登場してひと踊りした後、舞台にいる全員で踊る。

テンポの良い明るい曲で、会場と一体になれるような踊りだ。

この全員での踊りで、発表会の幕は下りる。


「じゃあ、もう一度、始めから」

と声がかかった。

この発表会の主催である、のぞみ先生が稽古場の一番前に立ち、皆の様子を見ながら言った。


生徒たちは素早くスタンバイをする。

稽古場の左右から、最初に登場するのが真理たち6人ともう6人。

本番では舞台袖にあたるところで、前奏曲を聴く。


8小節を聞いたら、舞台への一歩を踏み出す。

これが、なかなかうまくいかない、先頭の幸子。

頭の中で数えているのか、ワンテンポ遅れてしまうのだ。


「出とちらないで」

とのぞみ先生が声をかける。


いずみ先生も幸子の側で、一緒にカウントを取る。

が、また。

テンポがずれた。


幸子のすぐ後にいるのは真理。

真理にとって、このフィナーレの曲は以前、舞香が発表会で踊ったこともあり、

耳には馴染だった。


それを知ったいずみ先生。

「じゃあ、真理ちゃん、先頭で。幸子さんとチェンジしようか」

と言い出した。

それを聞いた幸子の身体が一瞬、びくんとこわばった。


「練習しますから」

と小さな声で言う幸子。


どうやら、真理と入れ替わるのは気に食わないらしい。

先頭の立場を譲りたくはないようだ。


「そう、じゃあ、しっかりお願いね」

といずみ先生。

あっさりと言った。


その後の再挑戦では、なんとかテンポをあわせることのできた幸子。

ひと踊りして、後ろに下がるころには汗だくになっていた。


一番後ろでポーズをとる幸子。

隣りの真理を見ようとはしない。


そう言う振り付けではあるが、いつもより少し、とげとげしい雰囲気を醸し出す幸子。

そんな幸子に真理はただ黙っていた。


「役割を取られたくないんだ」

と真理は思った。


真理にだってその気持ちはよくわかる。

よみがえる子供の頃の記憶。

自分が出来なかった振り、


「じゃあ、代わりましょう」

とほかの子に交代させられた。


自分の代りに自分の出来なかった振りを踊るその子を見る。

目の周りが熱くなり、少しかすんで見えていたのを思い出す。

代わった、その子のことは顔も思い出せないのに。


合同での稽古が終わり、更衣室で着替えをしていると、

幸子がそっと真理の側にやってきた。


「真理ちゃん、さっきなんか意地になっていずみ先生に言ってしまったんだけど、真理ちゃんと代わるのが嫌だったわけじゃなくて」

と幸子が言う。


「いや、嫌だったでしょう」

と心で思う真理。


「あの、だってね、あの位置で振りを覚えたから、代わると分からなくなりそうで」

と幸子が言う。


あのフィナーレでの真理たちの踊り。

場所が何処であろうと、大差なく問題はない。


それでも、幸子は真理と「いさかい」を起こしたくはなさそうだ。

あわてて言い繕う幸子。


「ですよね、私も場所代わったら困りますよ」

と真理が言った。

あえて幸子に同調したのだ。


真理の方も、幸子に嫌味など言うつもりはない。

が、しかし。

いずみ先生にはっきりと、意思表示ができることにはある種の羨ましさを感じていた。


自分だったら、あっさりと引き下がって先生の言う通りにしていただろう。

どれほど、内心悔しい思いをしていたとしても。


そこに、近づいて人影があった。

グランドフィナーレで一緒になった他の教室の生徒だ。


「私、バレエ・フローラの真由子といいます。今回ご一緒できてうれしいです」

と声をかけてきた真由子。


この合同発表会に参加しているもう一つのバレエ教室「バレエ・フローラ」の生徒だ。

真理と同年代のようだ。


「みなさんはポアントでの参加でうらやましいわ」

と真由子が言う。


「バレエ・フローラを主宰されている、私たちの先生は大人にはトゥシューズを履かせてくれないの」

と真由子。

大人の生徒がトゥシューズを履くことに関しては、先生の考えによって大きく左右される。


「うちの先生はそのあたり寛大よ。大人だってポアントで踊りたいわよね、って」

と幸子が言った。


「そうなんだ」

と真由子。

その瞳の奥にきらりと光るものがあった。

真理はその輝きを、不穏な思いで見つめた。

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