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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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20/21

それぞれの居場所

次の舞台、色々と微妙です

真理の会社の同僚、小西大河がバレエに精通している事を知った真理。

しかも、今度の発表会を観に来ると言う。


「これは大変だ」


真理は気恥ずかしさで、すっかり動揺している。

しかし、バレエの事を話していた時の大河の瞳の輝きは何処か真理の脳裏に残っていた。


「あれがキラキラした目っていうんだよね」

と真理。


バレエについて、少し話してみたとも思ったが、

業務中のむやみな私語ははばかられる。

大河と二人きりになるチャンスなどほぼない状況だし。

それに、同僚とはいうものの、真理はパートであり正社員の大河とは立場が違う。


真理と大河が社内で、バレエについて話をする機会など、ほぼないまま日々は過ぎて行った。

発表会の稽古もどんどんと進み、真理たち6人が踊るバリエーションの振り付けも終わり、後はただただ練習していくのみだ。


そして、その日から、全員で出演するコーダの振り付けに入った。

コーダ、最後の総踊りとなる見せ場だ。


いずみ先生が生徒たちの立ち位置を指示する。

まずは、真理たち6人が並び、いくつかのステップを踏む。

すると、その前に他のバリエーションを踊った二人組が出てくる。

最後に、しのぶと康太先生がゆっくりと登場し、中央に入る。

これがコーダの大まかなフォーメーションだ。


真理たちは、複雑なステップなどはなく、ポーズを取り立っている時間の方が長い。

しかも一番後ろ。

つい、気が緩む。


「素に戻らないで、見えてるからね」

といずみ先生からの指摘が入る。


コーダの振り付けが終わると、演目である「パキータ」のすべてを通して練習できるようになった。

自分の出番のためのスタンバイを、どれくらい前から始めておけば良いか、そう言うことを覚えていくのも大切な練習だ。


真理たちのバリエーションが始まるころ、しのぶはいつも真理たちの後ろで振りを確認していた。

そのおかげで、真理たちは6人並んで出を待つことが出来ないでいた。


「少しずれてくれればいいのに」

と一緒に踊る幸子が言う。


真理も内心そう思ったのだが、口には出さなかった。

しのぶの方が、振りの確認は大変だろう。


康太先生とペアで踊るしのぶ。

いわゆる、パド・ドゥのような振りはほぼないが、それでも康太先生がしのぶの手を取りポーズを取ったりする場面はいくつかあった。


ゲストである康太先生は毎回稽古に参加するわけではなかった。

康太先生がいないとき、しのぶは康太先生がいるもののとしながら、一人で踊る。


康太先生がいる稽古で、しのぶの振りの間違いなどで、時間を使うことは避けたい。

いずみ先生の意図が自然としのぶには伝わっていた。


だからこそ、しのぶは真剣だ。

少しの合間でも、振りを確認し、ステップの練習をしている。

真理たちの事を気にする余裕はないのだろう。


晴美とあかり、この二人で踊るバリエーション。

それぞれの動き以上に息を合わせて踊ることが大切だ。

時間を見つけては、二人で鏡の前に立っている姿があった。


もう一方の二人組のバリエーションも同様だ。

自分たちの出番でなくても、熱心に振りをかくにんしている。


そんな中、出番まで所在なさげにしている6人。

多少のステップの練習などは、もちろん欠かさないが、他の出演者に比べるとまるで動き方が少ない。


稽古の合間、スタジオが開いている時、

いち早く、真ん中で振りをさらうしのぶ、何度も何度もステップを合わせる晴美とあかり。


真理も、自分の踊りを頭でイメージしながら自主練をするが、あまりステップもなく、

難しい、バレエのテクニックもない。

鏡を前にして、何をしたらよいかわからなくなるのだ。


立ち尽くしている者が鏡の前を陣取るわけにはいかない。

真理はいつしか、広い稽古場の後ろ側、しかも隅の方を自分の場所にするようになっていた。


「ママ、少し引き締まったんじゃない?」

と声をかける舞香。

真理が密かにダイエットをしているのを知っているのだ。


「でも、まだまだ。」

と真理。


真理が始めたダイエット。

揚げ物など、高カロリーの食事を避け、もちろん間食も止めた。

それと、仕事に行くときに一駅前で降りて歩くことにした。


決して若くはない真理。

無理なダイエットをして体を壊したら元も子もない。


「効果があるんだったらいいじゃない」

と稽古場でダイエットの話をした時に、幸子が言った。


「私くらいになると、ほんとに痩せなくなるのよ」

と幸子。

幸子は真理より少々年上だ。

実年齢は聞いたことがないけれど。


「私も痩せないと。重たいと康太先生に申し訳ないし。」

と言うのはしのぶだ。


「リフトがあるわけでもないのにね」

それをを聞いた6人組の一人がポツリと言った。


ー立ってるだけなのに、痩せる必要ある?ー


真理の心には、しのぶの言葉が湾曲しこう届いた。

それはほかの5人も少なからず同感だったようだ。


また、しのぶに対する黒い気持ちが芽生えようとしていた。

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