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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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2/24

ママの夢は娘の夢~なわけないじゃん

娘の心、親は知らず。

「将来の夢を原稿用紙3枚?めんどくさい宿題」

と吐き捨てるのは大澤舞香、15歳、高校生になったばかりだ。


舞香は自分の部屋のベッドに横になりながら、

学校での事を思い返していた。


舞香が通っているのは幼稚園から大学まである私立の学校だ。

普通の成績を取っていれば、そのまま内部進学で大学にまで行ける。

いわゆるエスカレーター式というやつだ。


「受験などで、色々な事を中断しなくてもいいように」

と両親が高い学費を払って通わせてくれてる。

色々な事、それがバレエを指しているのは明らかだ。



「みんなは楽しかなったのかな」

と部屋で一人つぶやく舞香。


その日の放課後、クラスの数人が駅前のスイーツ専門店に寄って帰ろうと話していた。

舞香も誘われた、しかし。


「ごめん、今日用事があってまっすぐ帰らないとダメなんだ」

と断った。


「そっか、じゃまた今度ね」

とクラスメイト達は舞香を残して、元気よく校門を飛び出して行った。


「今度か」

とその後姿を見ながら舞香は思った。


クラス替えがあったばかり。

高校からは一定数の外部入学者が入ってくる。

新しいクラスの半数は知らない子だ。


まだそこまで打ち解けてはいないクラスの友達。

せっかく仲良くなれるチャンスだったのに。

いつも、いつも、こうなる。


「明日は私だけ、のけ者かな」

と舞香。


その日、舞香が誘いを断った理由、それはバレエのレッスンがあるから、だった。

今では週に4日は稽古場へ通っている。

友達と遊ぶ時間などほぼない生活だ。


「嫌いじゃないんだけどな」

と自分に問いただすように口に出す舞香。


バレエを始めたのは3歳の時。

自分から言い出したのか、誘われたのか、母の薦めだったのか、もう記憶にはない。

最初は週に一度、かわいいレオタードが着られるのが嬉しかった。


それに、音楽に合わせて体を動かすことも好きだった。

先生からも褒めてもらえもらえることが多くて、そのたびにお稽古を見ていたママが満足そうな顔になった、それも嬉しかった。


小学生になると、お稽古の日が増えた。

自分から希望した覚えはなが、先生と母の言うことに従った。


そして高学年になってくると、稽古場にいる同年代の子供同士、差が出てきた。

それが如実に表れるのが、発表会だ。

真ん中にいる子、と隅にいる子と。

一人で踊る子と、その他大勢になる子。

舞香はいつも真ん中にいて、そして早くから一人で踊った。

発表会の演目と配役が決まるたび、母は嬉しそうに舞香に言った。


「がんばろうね」

と。

そして、母の帰宅が少しだけ遅くなった。

パートの時間を増やしたのだ。


同時に「コンクール」にも頻繁に出場するようになった。

これは順位のつく「大会」だ。


予選があり通過すると本選に。

参加しているのは、全国から集まったバレエ少女たち。


いつもは違う教室で違う先生に習っている子が一堂介す。

本番の舞台での基礎レッスン。

そして「場当たり」と呼ばれる位置の確認。


舞香はいつも一瞬たじろぎながら、舞台に上がっていた。

普段のお稽古場の鏡の前では、完璧だ、と思っていたのに、周りにいる自信たっぷりの少女たちに、

圧倒されている。


「楽しくない」

と心の中でこっそりつぶやいた。


それでも、何度かはコンクールで入賞もした。

しかし、上位入賞の常連や、海外のバレエ学校関係者から声がかかるなんてことには、縁がなかった。


「上には上がいる」

と舞香は思っていた。


でも、母の考えは違っていたようだ。

このままがんばればプロのバレリーナになれるかもしれない。


母の夢、

舞香をバレリーナにすることだった。


母の夢は、私の夢?

そんなわけないじゃない。


翌日、登校した舞香を待っていたのは、

昨日、一緒にスイーツ屋さんに行った数名が、固まったお喋りをしている光景だった。


半数は中学からの内部進学、その半数はは高入生だったがすでにそんな境界線は見当たらないほど、

仲の良いクラスメイト、と言った感じだ。


「あら、大澤さん、おはよう。昨日は残念だったけど、また今度行こうよ、すごく美味しかったよ」

と一人のクラスメイトが声をかけた。

彼女も高入生だ。


「でもね、みゆ、舞香は習い事で忙しいから誘ったらかえって悪いかも。それに太れないからスイーツなんか食べられれないんじゃない?」

と小学生からの友人、亜由美が言った。

亜由美は既にこの高入生を「名前」で呼んでいた。


「知ってるんだったら、昨日も誘わなきゃいいのに」

と舞香は心で思った。


それから授業が始めるまでのひと時、女子たちは輪になってお喋りをした。

その中に舞香もいたのだが、会話に入ることもできずひとりポツンと、その場にいただけ、だった。


その日はずっと、休み時間も昼休みもずっと一人の孤独を感じた舞香。

小学校の頃から、バレエのために友達を遊べない事、行事に参加できない事、たくさんあった。

でも、こんな気持ちになるのは初めてだ。


寂しい。

寂しくて、空しくてたまらない。


その日の放課後、みゆ、と呼ばれたクラスメイトが舞香に声をかけてきた。

朝一番で、話しかけてくれた高入生だ。


「ねえ、大澤さん。明後日、うちの親戚がお好み焼き屋さんオープンさせるの。

隣りの駅前なんだけど、一緒に行かない?開店記念でお得なんだって」

とみゆ。


そこに、

「無理無理、舞香はまたお稽古だよね、それに炭水化物、食べないでしょ?」

と亜由美が口を挟んだ。


しかし、その言葉を遮るように

「行きたい、連れて行って」

と言い放つ舞香。


「でも」

と困惑するみゆに、


「お野菜、たくさん食べるから」

と笑って見せた舞香。


明後日はお稽古お休みさせてもらおう。

そう心で誓いながら帰路についた舞香。


自宅に戻り、部屋で制服から部屋着に着替えていた時、何処からか声がした。


「なによ、あんた。その夢、本心じゃないってことね」

と。

子供が大きくなると、習い事に取り組む姿勢にも温度差がでますね。

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