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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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新たなる挑戦

大人のバレエクラスにも少し変化が

大人のバレエクラス、その生徒たちは多少の入れ替わりはあるものの、

いつも熱心に通う者たちが固定されてきた。

まあ、「常連さん」だ。


真理と幸子と晴美、それから美咲。

そして。

発表会の後、教室を去ることになっていた田代あかりの姿もあった。


バレエに夢中になるあかりを夫は良く思わず、もう辞めるように言い放ったのだが、

意外にも、息子たちがあかりの味方をしてくれたのだ。


「だってね、あの子たち、踊ってるママ、綺麗でかわいかったよ。

またあんなママの事が見たい。

おうちの事は僕たちでお手伝いする、って言ってくれたの」

とあかり。


そして更に、息子たちが夫に

「だから、ママにバレエを習わせてあげて。バレエを始めてからのママ、すごくうれしそうなんだもん、たのしそうなんだもん」

と訴える息子たち。


そしてついに

「仕方ない、でもほどほどにしろよ」

と夫は、辞めろ発言を撤回し、あかりがバレエを続けること承諾したのだ。


「息子たちがバレエへの道をつなげてくれたの。だから、精一杯がんばりたい」

と目を輝かせるあかり。


そんなあかりとは対照的に、

発表会のワルツではセンターを務め、普段のレッスンでも他の皆より技術も容姿もワンランク上、

みんなのお手本の存在でもあったのあ。

そんなのあがいずみ先生のクラスを辞めると言い出した。


稽古場の片隅で、のあといずみ先生が真剣に話をする姿が何度か見受けられた。

そして、その日の稽古の後、いずみ先生から話があった。


「このクラスのスタート時から皆さんと一緒にお稽古をしていたのあちゃんが、ここを卒業することになりました」

と。


のあが辞めてしまう。

その場にいた生徒全員が衝撃を受けた。


「バレエをゆっくりまったち楽しみたい」

とこのクラスにはいってきたのあ。


その身体、踊りのセンスを見てもバレエ初心者ではない事は明確だ。

まだ大学生だと言う彼女。

他の「ガチな」レッスンを選ぶことも出来ただろうに。


この前の発表会、大人のクラスの「ワルツ」は全員バレエシューズで踊った。

もちろんセンターののあも例外ではない。


「バレエシューズで踊るのはいつ以来だろう」

とのあが笑っていたのを思い出す。

発表会後に始まったトゥシューズクラスでの彼女を見ていても、すでに踊り慣れた感があった。


それでも、いつも楽しそうに年齢も違う仲間たちとレッスンをしていたのあ。

その、のあがいなくなってしまう。


「寂しくなっちゃうな」

と皆口々に言った。


のあも、

「みなさんと一緒にまたバレエができて本当に楽しかったです」

と短く挨拶をした。


「また、なんだ」

とその言葉を聞いた真理が思った。


この子も、一度辞めたバレエを再開していたんだろう。

と思いを巡らせた真理、脳裏に舞香の事がよぎった。


「バレエ、辞めちゃうの?」


「どこかで続けなよ」


「ここじゃ、おばちゃんばっかりだいし」


見ると、のあの周囲を皆が取り囲んでいる。

皆、異口同音に今後の事を心配しているのだ。


「言っちゃえば?」

そんな様子を見たいずみ先生に促されるように、のあが口を開く。


「私、留学することにしたんです。

ダンスとエンタテインメントを学びに、ニューヨークに行きます」

とのあが言った。


のあは大学を一年休学し、ニューヨーク行きを決意したのだと言う。

ずっと前から憧れていたエンタテインメントの本場。


「私、バレエもだけど、ダンスが大好きで、あとミュージカルも大好き。

どうしても、本場で生活をしてみたかった。

両親には猛反対されたけど、なんとか説き伏せました」

とのあ


生徒たちは、のあの「親」の立場の者の方が多い。

のあの決断にもろ手を挙げて賛成しかねるのも頷ける。


「ここで踊ることの楽しさを再認識させてもらえました」

とのあが言う。


のあは自分の昔の事は話さなかったが、

風の噂で、かつて習っていたバレエ教室でいつも周囲がライバル、そんな環境につかれてしまいバレエから遠ざかったのだ、と聞いていた。


それからしばらくして、いずみ先生の元にのあからニューヨークの夜景の動画と共に、

元気そうなメールが届いた。


「ニューヨークでがんばってるんだって」

とある日の夕食時、真理はのあのことを舞香に話した。


「辞めたバレエを再開した」

を強調しないように気をつけながら話す真理。


舞香はただ淡々を聞いていた。

そして一言、


「その子、何になりたいのかな。ニューヨークの舞台に立ちたいとか、エンタテインメントの世界で働きたいとか、そんな夢をもって留学したの?」

とポツリ言った。


「どうだろうね」

と返す真理。


実のところ、のあの目標、それは真理にもわかりかねていた。

本人が何も話さなかったし、聞くべきでもない。


「私がそんなこと言ったら、どうする?」

と舞香が唐突に聞いた。


「まあ、うちには1年も留学させてあげられる経済力はないから、その時点て論外、かな」

と真理。


「やっぱりね」

と舞香は言い残した。


その後、舞香は自室であの手鏡を持った。

そういえば、あの子、どうしているだろうか、そう思いながら。


もう夢だったのか幻だったのかも定かではない、鏡の中のあの子。

元々は天才的なバレリーナ。


しかし、手鏡に映っていたのは、舞香自身だった。

もうあのバレリーナの姿はない。


「あの子の夢でも叶えてあげればいいのに」

と舞香。


「それとも、もう標的をみつけたかな」

とつぶやいた。


誰かの夢を叶えれば、この世に留まることが出来る、そんな命の瀬戸際にいるという

天才バレリーナ。


「あれも夢だったのかな」

と舞香はそのこと自体、もうおぼろげにしか思い出せなくなっていた。

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